【詳細】ロシア ウクライナに軍事侵攻(30日の動き)

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

マリウポリ市議会「致命的な伝染病 流行のおそれ」SNSに投稿

ロシアが掌握したと主張するウクライナの東部、マリウポリの市議会は28日「市内で衛生環境が悪化し、遺体の放置などによって伝染病が広がりやすい事態となっており、市民の命がさらに危険にさらされている」とSNSのテレグラムに投稿しました。

市議会によりますとマリウポリにはおよそ10万人の市民がとどまっていて、市内では気温が20度に達する中、食料や飲料水が不足しているほか、がれきの下に置き去りにされている遺体が腐乱していて、コレラや赤痢、大腸菌などの致命的な伝染病が流行するおそれがあるとしています。

マリウポリのボイチェンコ市長は「占領軍は市民に食料や水、医薬品を提供していない。住民の避難の試みもすべて妨げていて、このままだと人々は死ぬだろう。破壊されたマリウポリは今や中世の時代と同じ生活環境となっている。一日も早い迅速な避難が必要だ」と訴えています。

ウクライナ ロシア側任命の州知事と市長を反逆罪で起訴

ロシアが掌握したと主張するウクライナ南部ヘルソン州で、26日にロシア側が一方的に任命した州知事とヘルソン市長の2人について、ウクライナ保安庁は、国を裏切ったとして、反逆罪で起訴したことを明らかにしました。

その上で「ヘルソンの住民は占領軍がいることを違法だと理解しているため、ロシアは代理人を連れてきたが彼らは住民に尊敬されていない。彼らは以前、ヘルソン市とヘルソン州の行政機関で働いた経験があり、このうち知事に指名された人物は占領を支持し、ロシアを支持するデモを開催していた」としています。

ウクライナ側としては、ロシア側がこの地域の支配の既成事実化を強めようとする動きを認めない姿勢を示す狙いがあるとみられます。

イギリス国防省 “ロシア 戦力集中で課題修正図る”

イギリス国防省は、30日に公表したウクライナの戦況分析で「ロシアは戦力を地理的に集中させて補給経路を短くし、統制しやすくすることで、これまでの課題を修正しようとしている」と指摘しています。

その一方で、依然として多くの課題に直面しているとした上で「北東部での前進に失敗したことで、部隊の再配置を強いられ、士気の低下に苦しんでいる。上空からの援護も一貫性を欠くなど、戦術的な調整がうまくできていないため、戦力を最大限に生かせていない」と分析しています。

ゼレンスキー大統領「命をかけた闘いとなっている」

ウクライナのゼレンスキー大統領は東部の戦況について、29日に公開した動画で「ハルキウ州では厳しい状況の中、わが軍は戦術的な成功を収めることができている。ドンバス地域では、ロシア軍がインフラや住宅地への攻撃を続け、一帯からあらゆる命を消し去ろうとしている。私たちの防衛は文字どおり、命をかけた闘いとなっている」と述べました。

また、ポーランドメディアの取材に応じた際の動画も公開され、この中でロシアとの交渉について「捕虜の交換など、約束したことがその後何度も覆されるため、信じることができない。ロシアで権限を持っているのは1人だけで、その人物と直接交渉し、合意することでしか、約束は果たされないと理解するに至った」と述べた上で「ロシアが交渉を完全に打ち切るリスクは非常に高い」と述べ、停戦交渉の行方が厳しいという見方を明らかにしました。

冷静で知られる米カービー報道官 ことばを詰まらせる場面も

アメリカ国防総省のカービー報道官は29日の記者会見で、記者から「ロシアのプーチン大統領は理性的な人物だと思うか」と問われたのに対し「彼や彼の軍隊がウクライナでやっていることについて、倫理的な人間が正当だと見なすのは難しい」と述べたあと、ことばを詰まらせました。

そして10秒間ほど沈黙したあと「いくつかの映像を見て、そんなことを真剣な、分別のある指導者がすると想像するのは難しい」と述べた上で、ロシア軍の侵攻を「プーチン大統領の悪行」と強いことばで表現し、非難しました。

カービー報道官は、オバマ政権時代にも国防総省と国務省の報道官を務め、ふだんは冷静な説明ぶりで知られています。

ロシア デフォルト回避へ“国債の利払いをドルで実施”

ロシアの財務省は今月4日に期限を迎えたドル建て国債の利払いと償還あわせて6億4920万ドル、日本円でおよそ840億円の支払いについて、ドルで実施したと29日、発表しました。

支払い代理人であるアメリカのシティバンクのロンドン支店に送金したとしていて「義務は果たした」と主張しています。

ロシア財務省は今月4日が期限の利払いや償還を自国通貨ルーブルで実施したとしていましたが、その後、世界の主要な金融機関の代表などでつくる委員会が潜在的なデフォルト=債務不履行にあたるという判断を示していました。

市場からは今回の対応でデフォルトが避けられるかは投資家への支払いが確認できるまで不透明だという指摘が出ています。

ロシア外相 “停戦交渉 ウクライナが合意内容から要求を変えた”

ロシアのラブロフ外相は29日、中東の衛星テレビ局アルアラビヤとのインタビューで、ウクライナとの停戦交渉について言及しました。

この中でラブロフ外相は、ウクライナが、NATO=北大西洋条約機構への加盟を断念する代わりとなる新たな安全保障の枠組みをめぐり、ウクライナ側が、先月の合意内容から要求を変えたと主張し「もし、ウクライナが誠実で善意の交渉者であれば、われわれは交渉を進展させ、ウクライナは国連の安全保障理事会のメンバーなど多くの国から安全保障を与えられるだろう。われわれはこれに反対していない」と述べました。

そして「われわれの交渉が行き詰まっているのは、ウクライナ側が支離滅裂で、毎回、適当にあしらおうとしているからだ。そして、アメリカやイギリスなどが、交渉プロセスを加速させないように指示しているせいだ」と述べ、背後でアメリカなどが停戦交渉を意図的に遅らせていると一方的に主張しました。

米国防総省 高官 “ロシア軍 予定より作戦が遅れ”

アメリカ国防総省の高官は29日、ウクライナ東部2州の完全掌握を目指していると見られるロシア軍について、ウクライナ側の抵抗などを受け当初の予定より作戦が遅れているという見方を示しました。

この高官によりますと、ロシア軍は東部ハルキウ州のイジュームから南に向け徐々に前進していて、地上部隊の展開に先立って、ウクライナ側に対し、砲撃や空爆を行っているということです。

ただ、こうした攻撃はロシア側のねらいよりも効果をあげられておらず、ロシア軍はウクライナ側の激しい抵抗に直面しているうえ、前線部隊への物資の補給ルートを維持するため、慎重に進んでいると指摘しました。

そして「ロシア軍の前進は遅く、場所によって差があるため、彼らの東部での計画は当初の予定より遅れていると考えられる」と述べ、計画に比べて少なくとも数日間は遅れているという認識を示しました。
一方、この高官はロシア側が東部地域のウクライナ軍に対し北と東と南の3方向から圧力をかけるため、要衝マリウポリに展開していた部隊を北へ移動させているのが確認できるとしました。

そのうえで、ウクライナ東部での戦闘について、ロシア側とウクライナ側がともに地形に精通していることや、長距離からの攻撃を仕掛けていることなどから、長期化する可能性があるという認識を重ねて示しました。

また、この高官はロシアが核兵器を使う可能性について「われわれは彼らの核戦力を毎日監視し続けているが、核兵器の使用やNATO=北大西洋条約機構への脅威があるとは見ていない」と述べました。

ロシア“巡航ミサイルで変電所を破壊”

ウクライナへの侵攻を続けるロシアの国防省は29日、巡航ミサイル「カリブル」を発射し、キーウ州や南部オデーサ州などにある鉄道関係の変電所3か所を破壊したと発表しました。

国防省は黒海から潜水艦が、「カリブル」を発射したとも説明していて、ロシアのメディアは、潜水艦からウクライナへの攻撃は、初めてとみられると伝えています。

ポーランド “ウクライナに多くの戦車を供与”

ウクライナの隣国、ポーランドのテレビ局は29日、安全保障政策を担当する政府高官がインタビューで、ウクライナに多くの戦車を供与したことを明らかにしたと伝えました。

それによりますと、ウクライナに供与したのは「Tー72」と呼ばれる旧ソビエトで開発された戦車で、すでに供与した正確な数は明らかにせず、今後も供与を続ける方針を示したということです。

ポーランドの複数の地元メディアはこの内容を伝えるとともに、政府がこの戦車を200両以上、供与する可能性があるとも伝えています。

ポーランドは、歴史的にロシアへの警戒感が強く、ウクライナを支援する姿勢を鮮明にしていて、これまでも戦闘機を供与する方針を示したこともあります。

ポーランドからウクライナへの戦車の供与をめぐっては、イギリスのジョンソン首相が、今月22日、ポーランドに代わりの戦車を送ることも検討すると述べるなど、軍事支援を側面から支える姿勢を示していました。

ゼレンスキー大統領 軍幹部や戦死した軍人の遺族を激励

ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、首都キーウの宮殿で軍の幹部や戦死した軍人の遺族に勲章などを授与して、激励しました。

そのうえで、ゼレンスキー大統領は「ロシアとの大規模な戦争が始まってからきょうで65日目だ。ロシアはわれわれが5日も耐えられないことを望んでいただろうが、ここにいる英雄たちとわれわれの『自由に生きたい』という思いのおかげで闘い続けている」と述べ、引き続き、抗戦を続ける姿勢を示しました。

ウクライナから国外に避難した人 542万人余りに

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、28日の時点で542万人余りとなっています。

主な避難先は、ポーランドがおよそ299万人、ルーマニアがおよそ81万人、ハンガリーがおよそ51万人、モルドバがおよそ44万人などとなっています。

また、ロシアに避難した人は、およそ65万人となっています。

ロシア中央銀行 政策金利を14%へ引き下げへ

ロシア中央銀行は29日、政策金利を今の17%から14%へ引き下げると発表しました。

金利の引き下げは、今月に入り2度目となります。

ロシア中央銀行は、ウクライナへの軍事侵攻後のことし2月末、通貨ルーブルの急落に対応するため政策金利を9.5%からほぼ2倍に当たる20%へと大幅に引き上げたあと、今月11日から17%に引き下げていました。

利下げの背景について、ロシア中央銀行は、通貨ルーブルが持ち直しインフレが鈍化しているとしたうえで「ロシア経済の外部環境は依然として厳しく、経済活動にかなりの制約があるものの、物価と金融の安定におけるリスクはもはや高まっていないと判断した」と説明しています。

ロシア中央銀行は、年内に金利をさらに引き下げる可能性があるとしています。

英政府 NATOなどの軍事演習に “冷戦終結後で最大の派遣”

イギリス政府は、ヨーロッパ各地でことし夏にかけて行われているNATO=北大西洋条約機構や、北欧などの軍事演習に8000人規模のイギリス軍部隊のほか、戦車や装甲車などを派遣すると発表しました。

このうち、今週からフィンランドで始まった演習には、アメリカやラトビア、エストニアも参加していて、北欧やバルト3国に対するロシアの脅威に対抗するための能力を向上させるねらいがあります。

また、ポーランドでは、デンマークやアメリカなどとともに、演習を続けているほか、来月には、フランスやデンマークを含む1万8000人のNATOの部隊とともに、エストニアとラトビアの国境付近で大規模な演習を行うことにしています。

イギリスのウォレス国防相は、ヨーロッパの安全保障がこれほど重要になったことはなかったとしたうえで「一連の軍事演習は、連帯と強さを示すもので、冷戦終結後では、最大の派遣の1つだ」とコメントしています。

ロシア 戦勝記念日の行事に各国首脳を招かず

ロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、来月9日に予定されているナチス・ドイツに対する戦勝記念日の行事について、ことしは77周年で節目の年ではないとしたうえで「ロシアとロシア人にとって最も重要な日だが、各国の首脳を招待しなかった」と述べ、赤の広場での軍事パレードをはじめ、祝賀行事には各国の首脳を招いていないことを明らかにしました。

戦勝記念日はロシアでは国民の愛国心が最も高まる日で、これまで中央アジアのカザフスタンなど旧ソビエト諸国の大統領のほか、70周年の節目の2015年には中国の習近平国家主席も出席していました。