「マリウポリ市民避難“国連関与”で合意」国連事務総長発表

ロシア軍がウクライナ東部や南部で攻勢を強める中、国連のグテーレス事務総長が、モスクワでプーチン大統領と会談し、東部の要衝マリウポリで取り残されているとみられる市民を避難させるため、国連が関与することで合意したと発表しました。ただプーチン大統領はウクライナ側に対する強硬な姿勢を崩しておらず、事態の打開につながるのかなお不透明な情勢です。

ロシア軍は26日に東部ドネツク州のスラビャンスクやその近郊で、武器庫や地対空ミサイルシステムを破壊するなど、ウクライナ東部や南部で攻勢を強めています。

ロシア国防省は声明で、これまでの軍事作戦の成果として
▼東部のドネツク州とルハンシク州の大部分を掌握したとしたほか、
▼南部ヘルソン州の全域を掌握し、
▼東部ハルキウ州、南東部ザポリージャ州、南部ミコライウ州の一部を掌握したとも主張し、支配地域の拡大を正当化しています。

このうち南部のヘルソンでは、武装した人物が市議会の建物に侵入し、警備員をロシア側の人物に入れ替えたと、市長が25日にSNSで明らかにしました。

市長は26日、自身のフェイスブックで「きょう、ヘルソン市の新しい行政府の長だとする人物を紹介された。ロシア軍の司令官からはヘルソン市長の権限は移ると説明された」として、ロシア側から強制的に解任されたことを明らかにしました。

ウクライナ政府などはロシアが占領を正当化するためにヘルソンで住民投票を実施する動きがあるとしていて、警戒を強めています。
こうした中、アメリカのオースティン国防長官は、26日に記者会見でウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍の戦力について「地上部隊には相当な死傷者が出ている。多くの装備を失ったほか、精密誘導弾を大量に使い、主要な艦艇も失った。軍事力という点では侵攻開始当初より弱体化している」と指摘しました。
一方、軍事侵攻を続けるロシアとウクライナとの仲介に乗り出した国連のグテーレス事務総長が、26日、ロシアによる軍事侵攻が始まってから初めてロシアの首都モスクワを訪れプーチン大統領と会談しました。

会談のあと国連はウクライナ東部の要衝マリウポリで取り残されているとみられる市民を避難させるため「国連と赤十字国際委員会が関与することで原則的に合意した」と発表し、今後の具体的な協議は、国連の人道問題調整事務所とロシア国防省の間で行われるとしています。

グテーレス事務総長はこのあとウクライナへ移り、28日にはゼレンスキー大統領と会談する予定ですが、プーチン大統領はウクライナ側に対する強硬な姿勢を崩しておらず、国連トップによる仲介が事態の打開につながるのかなお不透明な情勢です。