給付金や補助金 政府 物価上昇の緊急対策決定 中身は?

政府は、26日夕方、総理大臣官邸で関係閣僚会議を開き、物価の上昇を踏まえた緊急対策を決定しました。

ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を受け、石油元売り会社に対する補助金の拡充や、低所得の子育て世帯への給付金の支給などを盛り込んだ内容となっています。

これを受けて岸田総理大臣は、今年度の補正予算案を編成し、今の国会での成立に向けて早期に作業を進めるよう指示しました。

緊急対策と補正予算案、詳しく見ていきます。

緊急対策 ポイントは?

緊急対策の総額 6兆2000億円程度に

政府は今年度の当初予算などに計上している事業も加えた今回の物価高騰の緊急対策を総額で6兆2000億円程度とする方針です。

内訳は、
▽原油価格の高騰対策として1兆5000億円程度
▽原材料や食料などの安定供給対策として5000億円程度
▽中小企業対策として1兆3000億円程度
▽生活が苦しくなった人への支援策として1兆3000億円程度
▽今後への備えとして今年度予算の予備費の積み増しに1兆5000億円程度
を充てることにしています。
さらに民間の資金など加えた緊急対策の事業規模は13兆2000億円程度と見込んでいます。政府は、緊急対策の裏付けとして今年度予算の予備費から1兆5000億円程度を支出することにしていて28日の閣議で正式に決定する予定です。また、来月中には2兆7000億円規模の今年度の補正予算案を編成する方針です。
会議で岸田総理大臣は「新たな財源措置を伴うものに対しては、週内にも今年度予算の予備費の使用を決定し、直ちに実行に移して、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしていく」と述べ関係閣僚に対し、影響を受けている人たちに必要な支援を速やかに届けるとともに、国民に分かりやすく情報発信を行うよう求めました。

そのうえで原油価格高騰への対策を継続するため、鈴木財務大臣に対し、今年度の補正予算案を編成し、今の国会での成立に向けて早期に作業を進めるよう指示しました。
政府が決定した物価高騰の緊急対策。
盛り込まれた主な項目を詳しく見ていきます。

1.生活困窮者支援

コロナ禍で物価高騰に直面し、生活に困っている人への支援として、1兆3000億円程度を充てることにしています。

▽住民税が非課税の子育て世帯や児童扶養手当が支給されているひとり親世帯に対し、新たに子ども1人当たり5万円を給付するほか、▽住民税の非課税世帯を対象とした1世帯当たり10万円の給付金を確実に受け取れるよう、今年度、新たに非課税となった世帯も給付を受けられることを通知します。

さらに、▽収入が減少した人が生活費を借りることができる「緊急小口資金」などの申請期限を現在の6月末から8月末まで延長します。

このほか、▽生活に困っていながらも「緊急小口資金」などの貸付制度を利用できない世帯を対象に、1世帯当たり最大30万円を給付する「生活困窮者自立支援金」も申請期限を8月末まで延長したうえで、ハローワークで月2回の相談を受けるなどの求職活動の給付要件を緩和するとしています。

2.原油価格高騰対策

原油価格の高騰対策では、1兆5000億円程度を充てることにしています。

▽ガソリンなど燃料価格の上昇を抑えるため、石油元売り会社への補助金について、現在の1リットル当たり25円から35円に引き上げます。

また、支給の基準価格について、いまはレギュラーガソリンの小売価格の全国平均が1リットル当たり172円程度を超えた時点から適用されていますが、168円に引き下げます。

こうした対策によって消費者物価指数の上昇を0.5ポイント程度抑える効果が見込まれるとしています。

▽また、LPガスを使うタクシー事業者に対しても燃料価格の上昇を抑えるための支援を行います。

3.エネルギー・原材料・食料安定供給対策

原材料や食料の安定供給対策には5000億円程度を充てます。

▽小麦価格の高騰対策として、メーカーなどが原材料を輸入小麦から、国産の小麦やコメ、米粉へ切り替えることを支援するほか、国産小麦の生産拡大を支援します。

また、▽需要が高まっている国産の木材を増産するためにかかる輸送費などを支援することにしています。

さらに、▽ロシアなどからの化学肥料の原料の輸入が滞る懸念があるため肥料メーカーが輸入元を切り替えることに伴う費用の一部を補助するほか、▽家畜の餌となる穀物の価格が高騰していることから、価格が一定の水準を上回った場合に畜産農家に補填(ほてん)金を支給するための基金を積み増します。

▽半導体の製造に欠かせないクリプトンなどのガスはロシアやウクライナからも輸入しています。

こうしたガスの供給が滞らないよう国内で生産するための設備費用を支援します。

4.中小企業対策

また、原材料価格上昇の影響を受ける中小企業への支援策として、1兆3000億円程度を充てます。

政府系金融機関の▽日本政策金融公庫などがウクライナ情勢や原油価格の上昇の影響を受けている企業に行う「セーフティネット貸付」の金利を引き下げるほか、▽日本政策金融公庫と商工中金などが新型コロナで影響を受けた企業に行う実質無利子・無担保の融資や危機対応融資の申し込みの期限を、これまでのことし6月末から9月末までに延長します。