外交青書まとまる 北方領土「ロシアに不法占拠」19年ぶり明記

外務省はことしの外交青書をまとめ、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を重ねて非難し、制裁措置を通じ高い代償が伴うことを示していくとしています。また北方領土について19年ぶりに「ロシアに不法占拠されている」と明記し厳しい姿勢を鮮明にしています。

外交青書は昭和32年から毎年発行されている日本外交の方針などをまとめた文書で22日の閣議で報告しました。

国際情勢

この中では国際情勢についてアメリカが圧倒的な政治力や軍事力などで世界の安定と繁栄を支える時代から「米中競争・国家間競争」の時代に本格的に突入したと指摘しています。

ロシアによる軍事侵攻

そしてロシアによる軍事侵攻について、人類が過去1世紀で築きあげてきた国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だと非難し、力による一方的な現状変更をいかなる地域でも許してはならないとしたうえで、各国と協調した制裁措置を通じ一連の行動には高い代償が伴うことを示していくとしています。

北方領土

また日ロ両国の平和条約交渉は「展望を語れる状況にはない」とし、北方領土について「日本固有の領土であるが現在はロシアに不法占拠されている」と明記しました。

こうした表現は両国の平和条約交渉を進める中で外交青書では長く用いられておらず「不法占拠」と明記するのは2003年以来、「日本固有の領土」と明記するのは2011年以来で、ロシアへの厳しい姿勢を鮮明にした形です。

中国

一方、ことし国交正常化50年となる中国についてはロシアと緊密な関係を維持している点を指摘しつつ、日本周辺で軍事活動を拡大・活発化させているとしたうえで安全保障上の強い懸念だとしています。

そして北朝鮮が極めて高い頻度で新たな態様でのミサイル発射を繰り返していることは断じて容認できないとして、国際社会と協力して関連する国連安全保障理事会決議の完全な履行を求めていくとしています。

林外相「日本の姿 内外に広く発信 期待」

林外務大臣は記者会見で「重要な外交課題に関し日本の取り組みを発信する内容としている。この青書を通じ国際社会でリーダーシップを発揮し、世界の平和と繁栄に寄与する日本の姿を内外に広く発信するとともに、国民の日本外交への理解を深める一助となることを期待している」と述べました。

一方、北方領土について19年ぶりに「ロシアに不法占拠されている」と明記したねらいを記者団に問われたのに対し「記載内容はその年々に起こったさまざまな外交に関わる事象を総合的に考慮したうえで決定している」と述べました。

ロシア大統領府報道官「交渉の継続は極めて難しい」

北方領土について外務省が「ロシアに不法占拠されている」と明記したことを受けて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は22日「明らかに日本が非友好的な国となりロシアに対する一連の敵対行為に加わった今、交渉の継続について話をするのは極めて難しい」と述べました。そのうえで「4つの島はすべてロシアの固有の領土である」と強硬な姿勢を示しました。

ロシア外務省は先月、日本との平和条約交渉を中断する意向を一方的に表明していて、プーチン政権として平和条約交渉の継続に重ねて否定的な立場を強調した形です。

韓国外務省 日本大使館の公使呼び抗議

韓国外務省は22日、日本の外交青書に対して報道官の論評を発表しました。

外交青書は韓国が「トクト(独島)」と呼んで領有権を主張している島根県の竹島について「日本固有の領土」と明記していて、論評はこれに強く抗議するとしたうえで撤回を要求しています。

また外交青書では慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意に触れていて、論評ではこれに関連して「合意は被害者の名誉と尊厳の回復、心の傷の治癒が核心であり、日本政府は合意の精神に合う行動を示さなければならない」としています。

韓国外務省はソウルにある日本大使館の熊谷総括公使を呼んでこの論評の内容を伝えて抗議しました。

これに対して熊谷総括公使は「日本の一貫した立場に基づき抗議は受け入れられない」と反論したということです。

官房長官「韓国側の抗議は受け入れられないと反論した」

松野官房長官は午後の記者会見で、島根県の竹島をめぐる記述について韓国側から抗議があったと明らかにしたうえで「日本の一貫した立場に基づき韓国側の抗議は受け入れられないと反論した。竹島は歴史的にも国際法上も明らかにわが国固有の領土であり、竹島の領有権に関するわが国の立場に照らし抗議は受け入れられないと申し上げた」と述べました。

また北方領土について19年ぶりに「ロシアに不法占拠されている」と明記したことについて「記載内容はその年に起こったさまざまな外交に関わる事象について総合的に考慮したうえで決定している」と述べました。