3回目ワクチン未接種 症状悪化の若者も

ワクチンの3回目接種で、国に申請された職域接種の計画数は確保したワクチンの半分程度にとどまっていることがわかりました。3回目の接種率が低い傾向の若い世代では感染後、症状を悪化させるケースが相次いでいます。

往診依頼相次ぐ 患者の多くは若い世代 (東京 渋谷)

東京・渋谷区で自宅療養者の往診を行うクリニックでは今月に入って保健所からの往診の依頼が一時、途絶えていましたが、先週後半から再び相次いでいるということです。

クリニックの医師によりますと患者の多くは10代から30代の若い世代で、いずれも3回目のワクチンを接種していなかったということです。

患者は声をそろえて、「のどが焼けるようにいたい」「つばが飲み込めない」などとのどの症状を訴えているといいます。

今月16日に往診した14歳の男子中学生も「これまでに経験したことがないほどのどが痛い」とのどに強い痛みを訴え、食事も固形物は食べられないということでした。

この患者も2回目のワクチン接種からおよそ5か月が経過し、3回目は未接種でした。

クリニックではことし1月から往診した65人の患者のほとんどが3回目の接種を受けていないか、一度も接種していないかだったということです。

関谷幸世医師「大型連休前にワクチン接種を」

「Green Forest代官山クリニック」の関谷幸世医師は「再び往診の件数が少しずつ増えていて、のどに激烈な症状を訴えて生活に支障が出ているケースが多い。人の動きが増える大型連休の前に早めにワクチン接種を検討してほしい」と話していました。

3回目接種 全人口の半数近くも20代、30代は3割下回る

国内で新型コロナウイルスのワクチンを3回接種した人は全人口の半数近い48.2%となりました。

政府が18日公表した最新の状況によりますと、国内で新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を受けた人は6106万1041人で全人口の48.2%となりました。

3回目の接種率を年代別でみると70代以上では80%を超え、60代では70%を超えました。

一方、20代は26.9%、30代では29.5%と3割を下回っています。

また、40代は38.3%、50代では56.8%でした。

また、ワクチンを1回接種した人は合わせて1億292万8875人で全人口の81.3%、2回目の接種を終えた人は1億112万8009人で全人口の79.9%です。

このうち、5歳から11歳の子どもを対象にした接種で1回目を受けた人は76万492人で全体の10.3%、2回目の接種を受けた人は34万2832人で全体の4.6%です。

実際はこれ以上に接種が進んでいる可能性があり、今後、増加することがあります。

全人口にはワクチン接種の対象年齢に満たない子どもも含みます。

職域接種 予定数は確保の半分程度

若い世代に対する新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種を促そうと厚生労働省は企業や大学などが行う職域接種の活用を進めていますが現在予定されている職域接種での接種数は確保したワクチンの半分程度にとどまっていることがわかりました。

3回目ワクチンの接種率は20代と30代は30%弱と若い世代で低い傾向が続いていて厚生労働省は職域接種で2回目までより多い1200万回分のワクチンを確保していわゆる現役世代への接種を促しています。

しかし、開始からおよそ2か月がたった18日時点で、厚生労働省に申請された職域接種の計画は全国でおよそ585万回と確保量の半分程度にとどまっていることがわかりました。
また、▼会場の数も2976か所と2回目までの74%で、▼今月10日までに実際に接種した人の数はおよそ262万回と2回目までの27%となっています。

接種を行う企業や大学によりますと副反応などへの懸念から接種に慎重な人がいることや先に始まった自治体による接種に希望者が移ったことなどが原因とみられるとしています。

企業などの中には接種の対象を職員の家族や取引先、地域住民にまで広げて接種を進めているところもありますが、希望者が想定より少なく、計画の縮小を余儀なくされるケースが相次いでいます。

職域接種はことし9月まで予定されていて、厚生労働省は▼会場の接種人数の要件をこれまでの半分の500人にまで引き下げ、▼外部機関に接種を委託する場合の補助額を引き上げるなどしていますが、どこまで若い世代の接種拡大につなげられるかが課題となっています。

試職域接種の現場は試行錯誤の対応(北九州商工会議所)

若い世代に対する新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種をどう進めるかが課題となる中、職域接種の現場では計画の見直しや接種の呼びかけなど試行錯誤の対応が続いています。

福岡県北九州市の北九州商工会議所では地元企業に勤めるいわゆる現役世代の接種を進めようと職域接種に取り組んでいます。

2回目までの接種では関連する企業の従業員を中心におよそ1万人が訪れ、このうち大学生や会社員など20代から40代のいわゆる現役世代が全体の73%を占めました。

今回の3回目接種は前回までの実績から当初、1万人の接種計画を検討し、会場やスタッフを確保しましたが想定より希望者が少なく、計画を半分の5000人に変更して今月12日から接種を始めました。

さらに接種の対象を関連の企業で働く人だけでなく居住地を問わず18歳以上で前回の接種から6か月経過した人は誰でも、接種券が手元になくても受けられるよう条件を広げました。

しかし、18日までの予約者は3292人と見直した計画の66%にとどまっているということです。

18日も午後からすべての時間帯で接種できる予定で準備していましたが、予約が埋まらなかったため時間を短縮して対応していました。

接種呼びかけるチラシ 急きょ作成

この会場の最終日は今月23日に迫っていて、商工会議所では接種を呼びかけるチラシを急きょ作成し、通勤や通学の時間帯に駅前で配布することにしました。

また、コールセンターを設置して企業や大学などを通じて新入社員や入学生など若者を中心に電話をかけ、直接、接種を呼びかけています。

担当者は「10回に1回ぐらいしかつながらないが、友人、知人に広がって1人でも受けてもらいたい」と話していました。

接種に訪れた40代の飲食業の男性は「感染防止になると思い来ました。職域接種は場所も分かりやすく受けやすいです」と話しました。

30代の小売業の男性は「お客様や自分を守るために打ちました。かかりつけ医もないため、予約がとりやすいところで受けました」と話していました。

北九州商工会議所 上坂元部長「地域経済を守りたい」

北九州商工会議所中小企業部の上坂元隆志部長は「若い現役世代は生産や消費活動の中心で、感染防止と経済をまわすバランスのためにも非常に重要だ。接種率を向上させ地域経済を守りたい。コロナ禍で中小企業はコスト削減でギリギリの経営だ。社内でクラスターがおこると大変なことになるので職域接種を利用してほしい」と呼びかけていました。

専門家「ニーズに合わせて計画を」

職域接種について国際医療福祉大学の松本哲哉教授は若い世代にとって身近な場所で行われる非常に良い接種機会だとしたうえで、「3回目の職域接種は会場数が少なく、準備なども遅れがちになったことから、打ちたい人は自治体の集団接種に流れてしまい希望者が少なくなっている。第6波はピークを越え、若い人は重症化しないのではないかという認識が広がってしまい、消極的になっている。去年と比べると職域接種が全体の接種率を高める勢いはみられない」と分析しています。

そのうえで「若い世代でも確認されている重症化や後遺症の影響を減らすためにも、接種できる機会を多く設けることが大切だ。自治体と企業、大学が連携して、若い人がなぜ打たないのか、どういう啓発が必要なのか考え希望者のニーズに合わせて効率的に接種できるように今後のスケジュールを計画してほしい」と話していました。