ノババックスのワクチンが正式承認 早ければ来月末接種開始へ

アメリカの製薬会社ノババックスが開発した新型コロナウイルスワクチンについて、厚生労働省は19日に18歳以上を対象に使用することを正式に承認しました。

国内で4種類目となるこのワクチンは、ファイザーやモデルナとは異なる仕組みで、厚生労働省はこれまでのワクチンでアレルギー反応が出た人なども接種できると想定しています。

希望する人が接種を受けられるよう厚生労働省は都道府県に対し、このワクチンの接種会場を少なくとも1か所は設けるよう求めています。

1回目から3週間空けて2回目を接種し、さらに6か月以上たてば3回目の接種をできるようにする予定です。

武田薬品工業が国内での生産や流通を手がけることになっていて、今後およそ1年間で1億5000万回分が日本政府に供給される契約で、早ければ来月末に接種が始まります。

後藤厚労相「来月下旬から合計10万回分の配送を自治体に示した」

後藤厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で「海外からの輸出規制の可能性に備えてワクチン供給の安定性を確保するとともに、実績がある『組換えたんぱくワクチン』であることも踏まえ、ワクチンの種類の多様性を図るために、1億5000万回分を去年9月に購入した」と説明しました。
そのうえで「『メッセンジャーRNAワクチン』に対するアレルギーがある方に接種してもらうことを念頭に、来月下旬から6月上旬にかけて合計10万回分を配送することを自治体に示した。1億5000万回分のさらなる活用方法については、審議会における今後の議論の内容も踏まえつつしっかりと検討していきたい」と述べました。

官房長官 “国内製造のため安定供給にもつながる”

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「ノババックスのワクチンは、現在、厚生労働省で承認に向けた手続きが進められている。このワクチンは国内で製造が行われることから供給の安定性の確保につながるとともに、従来とは異なる種類であり、ワクチンの多様性を確保できることは望ましいと考えている。引き続き、有効で安全なワクチンが国民に行き渡るよう、しっかりと対応していきたい」と述べました。

ノババックス 接種回数や間隔は

ノババックスが開発したワクチンは、去年12月、2回の接種のほか、3回目の追加接種で使うこともあわせて申請されました。

当時、ノババックスのワクチンの3回目接種については海外での承認事例がなかったことなどから、厚生労働省は審査の手続きを大幅に簡略化する「特例承認」ではなく、通常の手続きで審査を行いました。

専門家部会では、1回目から3週間空けて2回目を接種し、さらに6か月以上たてば3回目の接種を可能とすることが了承されました。

南アフリカで行われた治験では、感染を防ぐ中和抗体の値を2回目接種の180日後と3回目の35日後で比べたところ53倍に上昇したとしています。

どんな人が接種?

ノババックスのワクチンは「組換えたんぱくワクチン」と呼ばれ、ファイザーやモデルナとは異なる仕組みです。

厚生労働省はこれまでのワクチンの成分にアレルギー反応が出た人などが接種することを想定していて、希望する人が接種できるよう都道府県に対して接種会場を少なくとも1か所は設置するよう求めることにしています。

冷蔵庫で長期保管も

保管や輸送を行う際の温度は2度から8度で有効期間は9か月間です。

通常の冷蔵庫で対応できるため、医療機関や自治体の接種会場での保管がしやすいとしています。

「組換えたんぱくワクチン」副反応の割合などは

アメリカの製薬会社、ノババックスが開発した新型コロナウイルスワクチンは、「組換えたんぱくワクチン」という種類です。

遺伝子組み換え技術を使って、ウイルスの表面にある突起で、抗体が攻撃する際の目印となる「スパイクたんぱく質」を人工的に作り出して接種します。
これまで日本国内で使われているファイザーやモデルナの「mRNAワクチン」とアストラゼネカの「ウイルスベクターワクチン」では、遺伝情報を伝達する物質や遺伝子を投与して体内で新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質ができるようにして抗体を作るようにしていましたが、ノババックスのワクチンは人工的に作ったスパイクたんぱく質そのものを投与することで、免疫の反応を引き起こします。

この技術を使ったワクチンはすでに「帯状ほう疹」や「B型肝炎」などのワクチンで実用化されていて、広く接種が行われています。

2021年12月15日にノババックスやアメリカの大学などのグループが医学雑誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表したデータによりますと、アメリカとメキシコで2020年12月から2021年2月までに18歳以上のおよそ3万人を対象に行われた臨床試験で、3週間あけて2回接種を受けたあとでは、発症を予防する効果が90.4%、中等症や重症を防ぐ効果は100%だったということです。

当時は、変異ウイルスのアルファ株やベータ株などが多くみられましたが、こうした変異ウイルスに対する発症予防効果は92.6%だったとしています。

副反応の出た割合については次のとおりです。
【痛みなど接種した部位になんらかの症状が出た人】
1回目の接種後に58.0%、
2回目の接種後には78.9%、
【接種した部位以外に何らかの症状が出た人】
1回目の接種後に47.7%、
2回目の接種後に69.5%、
【けん怠感】
1回目の接種後に25.6%、
2回目の接種後に49.5%、
【頭痛】
1回目の接種後に24.9%、
2回目の接種後に44.5%、
【筋肉痛】
1回目の接種後に22.7%、
2回目の接種後に48.1%、
【発熱】
1回目の接種後に0.4%、
2回目の接種後に5.7%などとなっています。

いずれも1日から2日程度でおさまることが多く、ほかの新型コロナのワクチンで報告される副反応よりも頻度は低く、心筋炎や血栓症の増加は確認されなかったとしています。

また、イギリスで18歳以上のおよそ1万5000人を対象に2020年秋に行われた臨床試験では、発症を防ぐ効果は89.7%で、ノババックスは接種から6か月たった時点でも、全体的な有効性は82.7%だったとしています。

ノババックスによりますと、このワクチンは、欧州委員会やイギリスの規制当局などから条件付きの販売承認を得ているというとです。

一方、アメリカでは、2022年1月31日にFDA=アメリカ食品医薬品局に緊急使用の許可を申請したと発表しましたが、これまでに許可は出されていません。

日本で承認された場合、国内では武田薬品工業が山口県の工場で製造し、流通を担うことになっています。