フランス大統領選挙 マクロン氏とルペン氏が24日の決選投票へ

フランスの大統領選挙は
▽中道で現職のマクロン大統領が首位で、
▽極右政党のルペン前党首がこれに続き、今月24日に行われる決選投票に臨むことになりました。

選挙では、緊張が続くウクライナ情勢への対応が大きな争点となっていて、安全保障政策や経済対策をめぐって、2人の候補の間で激しい論戦が予想されます。

フランス内務省によりますと、10日に投票が行われたフランス大統領選挙は開票率97%の時点で
▽中道で現職のマクロン大統領が27.6%で首位、
▽次いで極右政党のルペン前党首が23.41%を得票し、今月24日にこの2人による決選投票が行われることになりました。

マクロン大統領とルペン候補がそろって決選投票に臨むのは、前回・5年前(2017年)の選挙に続いて2回目です。

今回の選挙では、ウクライナ情勢への対応が大きな争点になっていて、マクロン大統領は外交的な解決に力を注ぎながら、EU=ヨーロッパ連合の議長国としてロシアに対する制裁の議論も主導し、支持を集めてきました。
これに対しルペン候補は、燃料価格をはじめとする物価が高騰していることなどへの政府の対応を批判し、経済対策や生活水準の向上を掲げ終盤、急速に支持を伸ばしました。

開票の結果を受け、マクロン大統領は「強いヨーロッパの中にあるフランス、偉大な民主主義国家とともに歩むフランスを目指す」と述べ、決選投票に向けた支持を呼びかけました。

これに対してルペン候補は「フランスの主権とフランス人がみずから決定する自由を取り戻す」と述べ、EUなどとは一定の距離をとる姿勢を改めて示しました。

一方、敗退した共和党のペクレス氏などが早々とマクロン大統領への支持を表明したのに対し、もうひとりの極右の候補だったゼムール氏はルペン候補への投票を呼びかけました。

2週間後の決選投票に向けても、ウクライナ情勢を受けた安全保障のあり方や経済政策などをめぐって、2人の候補の間で激しい論戦が交わされるものと見られ、有権者の判断が注目されます。

マクロン大統領「強い欧州のなかのフランスを」

決選投票へ進むことが確実になったという報道を受け、マクロン大統領は日本時間の午前5時前から支持者を前に演説しました。

この中でマクロン大統領は「私を支持してくれたすべての有権者に感謝する。あなたたちが私を信頼してくれたおかげだ」と支持者に感謝しました。

また決選投票で極右のルペン候補と再び争う見通しとなったことについて「必ずしも私の公約に賛成していなくても、極右の台頭を阻むために私に投票する人々にも敬意を表したい」と述べ、幅広い有権者に支持を呼びかけました。

さらにマクロン大統領は「強いヨーロッパの中にあるフランス、偉大な民主主義国家とともに歩むフランスを目指す」と述べ、引き続きEU=ヨーロッパ連合の中で指導力を発揮していくという考えを示しました。

ルペン候補「すべてのフランス人の大統領になる」

決選投票へ進むことが確実になったという報道を受け、ルペン候補は日本時間の11日未明、支持者を前に演説しました。

この中でルペン候補は「今回の結果に、国民が1つになって立ち上がろうとする希望を感じている。私はすべてのフランス人の大統領になる」と述べました。そのうえで「民主主義と経済、そして社会を正しい方向へ導く」として、物価対策を含めた生活重視の政策を推し進める考えを強調しました。

また、「フランスの主権とフランス人がみずから決定する自由を取り戻す」と述べ、EU=ヨーロッパ連合などとは一定の距離をとっていく姿勢を改めて示しました。そして24日の決選投票に向けて「左派も右派も、それ以外もすべてのフランス人に訴える。この連合に参加しよう。皆さんの情熱と信念で、勝利できる」と述べ、党派を超えた幅広い支持を呼びかけました。

マクロン大統領 前回史上最年少39歳で当選

現職の中道、エマニュエル・マクロン氏はフランス北部の町、アミアン出身の44歳。多くの大統領を輩出したフランス国立行政学院を卒業し、政府機関から投資銀行に転身しました。

社会党のオランド前政権で2年間、経済相を務め、2015年には経済活性化のため、「マクロン法」とも呼ばれる法律を可決させ、商業施設の日曜や夜間営業の拡大や長距離バス路線の自由化など、大規模な規制緩和を行いました。

前回2017年の選挙では「左派でも右派でもない政治を目指す」として立候補。決選投票で極右政党のルペン氏をやぶって、史上最年少の39歳で当選しました。

それまで政権を担当してきた右派の共和党と左派の社会党の2大政党の候補者は、決選投票にも進むことができず、さらに2か月後に行われた国民議会選挙でもマクロン大統領の政党「共和国前進」が圧勝し、フランス政治の伝統的な構図に大きな変革をもたらしました。

ルペン前党首 「脱悪魔化」で支持拡大図る

極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン前党首はパリ近郊のヌイイシュルセーヌ出身の53歳。2002年の大統領選挙の決選投票でシラク大統領と争った父親のジャンマリ―・ルペン氏から極右政党を引き継ぎ、前々回2012年、前回2017年と立候補し、前回は決選投票に進んでマクロン大統領と争いました。

かつては「反移民」「反イスラム」を掲げていましたが、前回、決選投票でマクロン大統領に敗北したことを教訓に、過激な言動を控え「脱悪魔化」とも言われる穏健化路線を進めて、支持の拡大を図ってきました。

ルペン候補は「私たちが愛するフランス」を選挙戦のスローガンに据え、不法移民の国外追放やこれまで両親の国籍を問わず、国内で生まれた子どもに自動的に国籍を与えてきた従来の制度の廃止などを公約に掲げています。

また、ウクライナ情勢を受けて燃料価格が高騰し、各地で運送業者による抗議行動も起きるなか、ガスや電気、ガソリンなどの付加価値税を現在の20%から5.5%に下げると主張し、不安を抱く有権者の受け皿となり支持を集めています。

メランション氏「ルペン候補に投票してはいけない」

今回の投票で3位となる見通しの急進左派のメランション下院議員は、パリ市内で演説し「残念な結果になったが、ここまで成し遂げられたことを誇りに思う」と支持者に謝意を示しました。

そのうえで決選投票に向けて「国のために何をすべきなのか、皆さんは分かっているはずだ。私たちは民主主義への信頼を決して失わない。そのためにルペン候補には1票たりとも投票してはいけない」と強い調子で述べ、ルペン候補を支持しないよう呼びかけました。

極右 ゼムール氏「ルペン候補への投票を」

反移民を訴えて支持を集めた極右の評論家、ゼムール氏はパリ市内で支持者を前に演説し、「今回の選挙運動と力と経験を勝ち取った」と支援に感謝しました。

そのうえで「マクロン大統領は多くの移民を受け入れてきたが、選挙期間中、移民や治安対策についてひと言も語らなかった。彼が再選されれば状況はより悪化するだろう。だからこそ私はルペン候補への投票を呼びかける」と述べ、決選投票でルペン候補に投票するよう呼びかけました。

最大野党 共和党ペクレス氏「私はマクロン大統領に投票」

今回の投票で敗退した最大野党の右派、共和党のペクレス氏は、パリ市内で支持者を前に演説し、支援に感謝したうえで決選投票への対応について「ルペン候補が大統領に選ばれることは、ヨーロッパや国際社会からフランスが消え去ることを意味する。ルペン候補の政権獲得とそれに伴う混乱を防ぐために、私はマクロン大統領に投票する。私と違う選択をする場合、わが国に悲惨な結果をもたらす可能性があることを真剣に考えてほしい」と述べ、マクロン大統領への投票を呼びかけました。

マクロン大統領の支持者「経験があり政策に一貫性」

マクロン大統領の支持者が集まったパリの会場では、大統領がルペン候補に差をつけてトップで決選投票に進むという見通しが伝えられると、支持者から大きな歓声があがりました。

30代の女性は「大統領には経験があり、政策の一貫性がある。新型コロナウイルス対策でその力を示し、ウクライナの有事でもその力を発揮している」と、この5年間の実績を評価したいと話していました。

また30代の男性は「マクロン大統領はウクライナの問題でも正しい役割を果たしている。好戦的なロシアからヨーロッパの価値を守り、強いヨーロッパのために力を尽くしている」と、決選投票での勝利に強い期待を示していました。

ルペン氏の支持者「ウクライナは関係ない フランス第1で」

これまで何度もルペン氏に投票してきたという53歳の女性は、「ルペン氏が決選投票に進んで喜んでいます。私たちは悲惨な経済危機の瀬戸際にいて、ロシアへの経済制裁は何の役にも立たないし、ウクライナの戦争も私たちには関係がない。フランスの国益を第一に考えないといけない」と話し、フランスの利益のためにロシアへの強硬な姿勢は避けるべきだと訴えていました。

また31歳の公務員の男性は、前回の大統領選挙で白票を投じたものの、今回はルペン氏に投票したとしたうえで「マクロン候補は富裕層の大統領というだけでなく、とてもグローバル志向が強い。フランスは国内の産業を十分保護できておらず、かつてのような産業力を取り戻したいです。私はEUを支持していますが、国家の自立性は保つべきだと思います」と話し、過度なグローバル化には歯止めをかけるべきだと訴えていました。

また、73歳の女性は「欧米はウクライナに武器や資金を支援し、それがウクライナの抵抗につながっていますが、もしこうした支援をしていなければ、ウクライナの『中立化』に向けた交渉ももっと進んでいたはずで、ルペン氏ならそうしたと思います」と話し、フランスは他国への介入を避けるべきだという考えを示していました。