「ロシア軍が悲しみをもたらした…」ブチャで住民が遺体を埋葬

ロシア軍が撤退したあと多くの市民が殺害されているのが見つかったウクライナの首都キーウ北西の町、ブチャでは発見された遺体の埋葬が住民たちによって行われました。

ブチャでは5日、ロシア軍の撤退前に母親に食料を届けに行って行方がわからなくなり数日前に遺体で見つかった男性の埋葬が行われました。埋葬は男性の友人たちによって行われ、友人たちは遺体にことばをかけながら涙を流していました。

住民の証言によりますと、男性の遺体には至近距離から頭を撃たれた痕や殴られた痕もあったということです。

友人の1人は「恐ろしいです。私たちはみな仕事を持ちすべてが順調でしたが、ロシア軍がやって来てこの悲しみをもたらしました。とても同じ人間とは思えません」と話していました。

ブチャの路上には6日現在、破壊されたロシア軍の戦車が多く残されていて、その中を住民が水などを手に持って歩いていました。

住民の1人は「私は陸軍にいましたがこのような光景は見たことがありません。なぜ市民を殺す必要があるのか私にはわかりません」と話していました。

ブチャに住む女性「年配の兵士が来て虐殺が始まった」

ブチャに住む女性がAFPのインタビューに応じ、ロシア軍が侵攻した際の状況について証言しました。

ブチャで生まれ育ったオレナさん(43)はウクライナ軍が奪還するまでの間、7歳と9歳の子どもたちとともに地下シェルターに身を潜めていました。

オレナさんは「ブチャを守っていたウクライナの領土防衛部隊はロシア軍がやって来るとすぐに逃げ去った。当初ロシア軍の部隊のほとんどが若い兵士だったが、2週間後には40歳より上とみられる年配の兵士たちが加わるようになった」と述べました。

さらに「年配の兵士たちは黒色や濃い緑色の軍服を着ていて通常よりも性能のよい装備を身につけていた。彼らは残忍で市民をひどく扱った。虐殺が始まったのは年配の兵士が来てからだ。食料を買いに出かけた男性が撃たれるのを見た」と述べ、市民の殺害の状況について証言しました。

ブチャに住む男性「この地獄を表現することばはありません」

ブチャに住む男性が6日、NHKの電話インタビューに応じロシア軍が撤退したあとの現地の惨状を語りました。

インタビューに応じたボロディミル・アブラモフさん(39)はブチャで生まれ育ち、妻と娘、それに父親や妹夫婦など7人で暮らしていましたが、ロシア軍の侵攻が始まった翌日、2月25日に妻と娘とともに避難し今月3日にブチャに戻ったということです。

ロシア軍が撤退したあとのブチャの様子について「多くの人が殺されていました。拷問を受けた人もいて多くの遺体が放置されています。何と言えばいいのかわかりません。混乱なのか恐怖なのか、この地獄を表現することばはありません」と現地の惨状を語りました。

アブラモフさんの父親や妹夫婦はロシア軍の侵攻後もブチャに残っていましたが、妹の夫が殺害されたということです。

妹の夫が殺された時の状況について「妹の夫を連れ出し服を脱がせてひざまずかせ、顔と頭を撃ったそうです。殺害したあと彼らは何でもない仕事を終えたような感じで路上で水を飲んでいたそうです」と話していました。

そのうえで「これは戦争ではなくジェノサイドだと思います。ロシアから侵略者が来て民間人を殺したのです。彼らはプロパガンダに従った恐ろしい生き物です。人間ではありません」と厳しく非難していました。