ウクライナとロシア “市民殺害”で対立激化 停戦交渉に影響も

ウクライナの首都近郊で多くの市民の遺体が見つかったことについて、ウクライナ政府は戦争犯罪だとして国際社会の協力も得ながら捜査を行うとしています。
これに対し、ロシアはねつ造だと一方的に主張し、両国の対立の激化が停戦交渉に影響する可能性も出ています。

ロシアの国防省は5日、ウクライナ西部や南東部など各地にあるウクライナ軍の燃料施設をミサイルで破壊したなどと発表しました。
またロシア軍は、東部の要衝マリウポリの掌握に向け攻勢を強めていて、首都キーウ、ロシア語でキエフ周辺に展開していた部隊の東部への投入を進めていくものとみられています。

ただ、戦況を分析しているイギリス国防省は5日「北部から撤退する多くのロシア軍の部隊は、東部の作戦に再配置される前に装備の大幅な改修を必要とする可能性が高い」と指摘し、東部への全面的な展開には時間がかかる可能性もあるとの見方を示しました。

一方、キーウの北西の町ブチャで多くの市民の遺体が見つかったことに衝撃が広がる中、現地を訪問したキーウのクリチコ市長が5日、NHKのインタビューに応じ「これはウクライナの国民に対するジェノサイドだ。とてもショックで一生忘れられない光景だ」と述べてロシアを強く非難しました。
ウクライナ政府は、ロシア軍の行為は戦争犯罪だとして、国際社会の協力も得ながら犯罪の証拠を集めるための捜査を行う方針を示しています。

これに対しロシア国防省は5日、キーウ北西にあるモシュンや、北東部スムイやコノトプなどで、ウクライナ側が「ロシア軍によって市民が殺害された」とする自作自演のねつ造行為を行っていると一方的に主張しました。
また5日、動画で声明を発表したラブロフ外相は「フェイクの情報を広めるとすぐに、ウクライナ側の交渉担当者は交渉を打ち切ろうとした」などと主張していて、両国の対立の激化が停戦交渉に影響する可能性も出ています。

一方、ブチャでの市民の殺害を受けて欧米側からも、ロシアの責任を追及する声が強まっていて、ドイツやフランス、イタリア、スペインなど、ヨーロッパ各国が、駐在するロシアの外交官を追放する措置を相次いで発表しました。

これに対しロシア大統領府のペスコフ報道官は5日「前例のない危機的状況の中で、外交の窓口を狭めることは近視眼的な動きだ。必然的に、われわれは対抗手段に乗り出すだろう」と非難し、報復措置をとると警告しました。