ウクライナからの避難民受け入れ 各地の動きは?

ウクライナからの避難民の受け入れを進めるため、ポーランドを訪問中の林外務大臣は、希望する避難民20人を、帰国時に政府専用機に乗せ日本に受け入れることを表明しました。

避難民の受け入れへの政府の対応、自治体の動き、課題をまとめました。

政府 身元引受人いない避難民も受け入れへ

ウクライナからの避難民への対応をめぐり、政府は、これまで日本国内に親族や知人のいる人を中心に受け入れを進めてきましたが、今後は、親族や知人などの身元引受人のいない避難民も広く受け入れていく方針です。
受け入れにあたっては、出国前と日本への入国時に新型コロナの検査を行い、
▼国内に親族や知人がいる人については親族の自宅などで3日間待機した上で、3日目の検査で陰性が確認されれば、そのまま引き取られることになります。

一方、
▼身元引受人のいない人は、出国前と入国時の検査のあと、検疫所が指定する宿泊施設に3日間滞在し、3日目の検査で陰性が確認されれば、政府が確保したホテルに移ります。

ホテルでの滞在中、政府が委託した公益財団法人「アジア福祉教育財団」と出入国在留管理庁の職員が、食事や通訳・翻訳機の提供といった生活支援を行うとともに、滞在先の希望などを聴き取り、受け入れを申し出ている自治体や企業とのマッチングも行います。

政府は、生活費や医療費の支給のほか、必要に応じて日本語教育や職業訓練、子どもの教育などにかかる費用などを負担する方向で検討を進めています。

支給する生活費は入国後6か月程度を想定し、ウクライナ情勢の推移に応じて柔軟に対応するとしていて、具体的な金額は検討中だということです。

また、当面の費用は、昨年度予算の予備費5億2000万円でまかなうということです。

日本に避難した人たちに対し、政府は、90日間の短期滞在を認める在留資格を付与した上で、希望する人には就労が可能で1年間滞在できる在留資格を認めていく方針です。

千葉 柏 住宅確保や窓口設置で受け入れ準備進める

ウクライナから避難してきた人たちの受け入れを始めている千葉県柏市では、今後、避難者が増えることを想定して住宅の確保などの受け入れの準備を進めています。

柏市では、家族を頼ってウクライナから避難してきている人が、これまでに妊婦や子どもを含む2世帯4人がいて、医療支援や保育所の調整などを行っています。
市では、今後も避難を希望する人が増えることを想定して、住宅の支援として家族でも住める市営住宅の部屋を4部屋確保し、今後も不動産会社とも連携してさらに増やす方針です。
また、市役所に相談窓口を設置し、音声や写真で読み取った言語を翻訳できる機器を20台購入して、避難してきた人たちに貸し出します。

また、衣類など生活用品を整えるための当面の費用として1世帯当たり10万円を支給するほか、4月から生活保護と同じ程度の支援金を毎月、支給するということです。

柏市共生・交流推進センターの仁尾順一所長は、「大変な思いをして日本にやってきた避難者を温かく迎え入れてできるかぎり支援し、今後も国の要請に従って受け入れ態勢を考えていきたい」と話しています

専門家「言葉の問題への対処が課題」

ウクライナからの避難民への対応について、人道支援に詳しい専門家は行政だけでなく、地域ぐるみで受け入れ体制を作って行くことが重要だと指摘しています。

国際NGO「難民を助ける会」の会長で、ウクライナからの国外に避難した人たちの状況に詳しい立教大学大学院の長有紀枝教授は「幼い子どもを連れて十分な身支度も出来ないまま、国外にやっと避難したという人も多く、精神的にも疲弊している。隣国のポーランドなどでは公的機関も民間も一緒になって住居や食事の支援を行っているが、支援のための資金や物資も限界に近づいていて、隣国だけでなく、国際社会全体で避難民を受け入れる必要性が高まっている」と指摘しています。

そのうえで、日本での受け入れについては「住居や教育、医療などさまざまな対応が必要になるが言葉の問題、特に年配の世代など新しい言語を学ぶのが難しい人たちにどう対処していくかが課題となる。日本での生活が長期化する場合は行政だけでなく企業や学校、市民団体などの協力も不可欠で、地域ごとにしっかりとした受け入れのプログラムを作っていく必要がある」と話しています。

群馬 前橋 日本語学び始めたウクライナ人も

前橋市では、避難してきたウクライナ人の女性が市内の日本語学校で学ぶことになり、4日初めて授業を受けました。

ウクライナの首都キーウに住んでいたオレシャ・コハノスカさん(29)は、ロシアの軍事侵攻を受けて3月下旬、前橋市に住むウクライナ人の友人を頼って避難してきました。

こうした中、市内の日本語学校が、避難してきた人たちの生活を支援しようと無償で受け入れることになり、コハノスカさんは、4日初めて日本語の授業に参加しました。

授業は「おはよう」や「よろしくお願いします」などのあいさつから始まり、コハノスカさんはほかの生徒たちと一緒に声を出して練習していました。

日本語学校では、コハノスカさんが当分の間、日本での生活を希望していることから、アルバイト先を探すなどの支援も行うということです。
コハノスカさんは避難のいきさつについて、「家族は軍事侵攻が長く続くとは考えず、ウクライナを離れないと言ったので、1人で日本に来ることを決めました」と話しました。

そのうえで「前橋市に来て山に登り、新鮮な空気がとてもよかったです。もともとグラフィックデザイナーの仕事をしていたので、群馬県のマスコットキャラクターの『ぐんまちゃん』のデザインも好きです。日本語を話せるようになったら、お店に行ったりクラスメートと話したりしたいです」と話していました。

学校の理事長「日本語や文化などを学び就職が必要」

コハノスカさんを受け入れた日本語学校を運営する「NIPPON ACADEMY」の清水澄理事長は「避難してきた人たちにとって、住居のほか日本語や日本の文化・習慣を学んだうえで就職することが必要となる。私たちは支援を行い、コハノスカさんには勉強を頑張ってもらい、その姿を日本人やウクライナ人、それにロシア人に伝えてほしい」と話していました。