中国 上海 感染拡大 厳しい外出制限 市民生活や経済に影響懸念

新型コロナウイルスの感染が拡大している中国最大の経済都市・上海では、市内全域で厳しい外出制限を段階的に行っています。
東部の地域では4月1日、外出制限が解除されたものの感染者が出た住宅地などで制限が延長されるところが相次いでいて、市民生活や経済に与える影響への懸念が強まっています。

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、中国政府は4月1日、先月1か月で全国で市中感染した人は10万4000人近くに上り、このうち上海では3万6000人を超える感染が確認されたと明らかにしました。

上海市当局は市内全域を2つの地域に分けて厳しい外出制限を段階的に行っていて、1日からは日本人も多く住む西部の地域で始まっています。

一方、東部の地域では3月28日から行われてきた外出制限が4月1日に解除されたものの、感染者が出た住宅地などさらに一定期間制限が延長されるところが相次いでいます。

上海市当局は全市民を対象にした臨時のPCR検査で感染が確認された人などを隔離する施設を市内に少なくとも9か所設置し、合わせて2万人を超える感染者が収容可能とみられています。

今回の上海の措置はほかの都市と比べて短期間で、市当局は最大の経済都市・上海の経済活動への影響も考慮したとみられますが、外出制限が長期化することで市民生活や経済に与える影響への懸念が強まっています。

日本企業への影響も続く

上海でとられている厳しい外出制限で日本企業への影響も続いています。

「ダイハツ工業」は、取り引き先からの部品供給が不足するため、大分県中津市にある完成車の工場の一部について、1日夜に続いて、4日も操業を停止するとしています。

このほか、国際便が多く就航する浦東空港がある東部の地域の制限は3月31日に解除されたものの、入れ代わりで外出制限が始まった西部に住む従業員が出勤できないことなどから、日本と結ぶ貨物便に欠航が出ています。

このうち全日空は、2日は6便が欠航し、3日以降の運航は感染状況などを見て判断するとしているほか、日本航空は2日はすべての便が欠航し、3日から5日までの一部の便の欠航を決めています。

上海と日本との間では、電子部品や半導体などを多く輸送していることから、欠航が長期化すれば企業の生産に影響が広がる可能性が指摘されています。

このほか、同じ東部にある上海港では、貨物を配送するドライバーへの感染対策が厳格化されていることなどから、中国メディアは貨物の荷降ろしや荷積みの作業に大幅な遅れが出て、沖合は入港を待つ船で混雑していると伝えています。

上海港は世界最大のコンテナ取り扱い量があることから、作業の遅れが長期化した場合、国際的な物流網の混乱につながるおそれも指摘されています。

日中経済協会 上海事務所長「輸送網の8割ほどがまひ」

日本と中国の経済交流を支援している日中経済協会上海事務所の笹原信所長は、上海の外出制限がビジネスに与える影響について、多くの情報が寄せられていると話しています。

笹原所長は「現地の日系運送会社によると、陸上や海上、それに航空の輸送網が8割ほどまひしていると聞いている。製造業などの会社では物品の調達や完成品の搬出が非常に困難になっている。大手自動車メーカーに関連する部品メーカーの工場も停止している状態だ」と話していました。

一方、今回の措置が上海市内全域を2つの地域に分け、外出制限の期間もほかの都市に比べて短期間である点については「中国国内や海外を含めて、生産や物流、人の往来の拠点である上海全体で外出制限をすると、国内外への影響が非常に大きいため経済へのダメージを少しでも減らそうという苦肉の策ではないか」と指摘しました。

そのうえで、制限が解除されても感染者が出た地域などでは一定の条件下で外出制限が続く可能性もあるとして、影響の長期化を懸念していました。

外出制限で街が静まり返る

外出制限前の3月31日夜8時すぎに撮影された上海西部の動画では、ふだんは散歩や買い物など多くの人でにぎわう町なかが閑散としてほとんど人通りがないことがわかります。

また、コンビニエンスストアなど小規模な店舗もふだんより早い時間に閉店し、店のまわりには人が近づけないようにするためかロープが張られている様子も確認できます。
このほか、スーパーでは牛乳や清涼飲料水の棚が空になっているほか、ほとんどの野菜も売り切れています。

外出制限が始まった4月1日の朝に撮影された動画では、ふだんは通勤の自転車や歩行者が行き交う場所はほとんど人の姿が見られず街も静まり返っていました。

「上海ファッションウイーク」も延期に

上海を拠点に、日本のファッションブランドの衣料品のオンライン販売やブランディングなどを手がける兒玉キミトさんは、今回の外出制限の影響について「従業員が出社できなくなったほか、物流が滞っているため商品を中国のほかの都市に届けられず、商品を購入してくれたお客さんには最低4日間は発送停止だと伝えている。ただ、待ってくれるお客さんもいれば『事情はわかるが困る』と苦情をいうお客さんもいる」と話していました。

また、衣料品などを販売する実店舗の売り上げについては「3月は例年の同時期に比べ、5分の1くらいに減っている。オンラインでの売り上げは物流が止まっているためほぼゼロで、4月はこれ以上悪化する可能性もある」として、長期化によるビジネスへの影響を懸念していました。

兒玉さんは、3月25日から予定されていた最新ファッションの展示会「上海ファッションウイーク」に参加する予定でしたが、感染拡大の影響で延期となりました。

兒玉さんは「中国市場は大きく、ここでたくさん注文をとるのは重要なので、延期後の日程が未定なのは正直つらい」と話していました。