ロシア “東部マリウポリの避難ルート設置”も住民避難に懸念

ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、軍事作戦の重点を移すとした東部での攻勢を強める一方、国連などの関係機関を参加させる形で東部マリウポリの住民の避難ルートを設けると発表しました。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア軍が住民の避難を妨害していると批判していて、避難が実現するかどうか注目されます。

ロシア国防省は31日、ウクライナ東部にあるウクライナ軍の複数の燃料基地を巡航ミサイルで破壊したと発表するなど、軍事作戦の重点を移すとした東部での攻勢を強めています。

東部ルハンシク州のガイダイ知事は、NHKのインタビューに対し、「砲弾が民家や幼稚園などを直撃し、戦闘が行われている場所では遺体を収容することさえできない」と述べ、ロシア軍が市民を巻き添えにする無差別攻撃を続けていると非難しました。

こうした中、西部リビウではロシア軍との戦闘で死亡した地元出身の兵士などの葬儀が行われ、遺族や市民たちがひつぎに花を手向けて兵士たちの死を悼んでいました。

一方、戦闘が続く東部の要衝マリウポリでの住民の避難についてロシア国防省は31日、フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相からの要請に基づき、「人道回廊」と呼ばれる避難ルートを日本時間4月1日の午後4時から設置すると発表しました。

ロシア側は、避難ルートの設置には国連難民高等弁務官事務所と、ICRC=赤十字国際委員会も参加する予定だとしています。

赤十字国際委員会は、すでに支援物資や医療品を準備して現地に向かっていると明らかにしたうえで、避難が円滑に行われることが重要だと訴えています。
しかしゼレンスキー大統領は3月31日、ベルギーの議会で行ったオンライン形式の演説で、「マリウポリは3週間にわたり完全に包囲されていて、ロシア軍は街への入り口をすべて閉じている。食料も水も医療品もない。生命を維持するためのものは何もない」と述べ、ロシア軍が住民の避難を妨害していると批判していて、避難が実現するかどうか注目されています。

激戦地イルピンの様子

ウクライナの首都キーウ(キエフ)の北西に隣接し、首都をめぐる攻防で激しい戦闘が行われたイルピンには、ウクライナが奪還したと発表してから、複数の海外メディアが取材に入っています。

ロイター通信が配信した現地の映像からは多くの建物が激しく壊れ、焼けて崩れているほか、戦車などが路上に放置されている様子が確認できます。

また、ウクライナの警察が不審な人物がいないか警戒にあたる様子や放置された車に爆発物などが仕掛けられていないか調べる様子なども捉えられています。

イルピンの住民は「攻撃が続いていたので、怖くて避難できなかった。3月初めには水、電気、ガスが寸断され、これまで人道支援を受けることができなかった。近所では、12歳の子どもを含む家族が攻撃によって亡くなった。ウクライナ軍を見たときはうれしかった」と話していました。