日本人医師 ウクライナ国内で医療支援 国境なき医師団が初派遣

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、国際NGO「国境なき医師団」は、日本からも救命救急の医師を現地の病院に派遣し、多数のけが人が搬送された場合の対処法を指導するなどの医療支援を行っています。

ウクライナに派遣されたのは、救命救急医の門馬秀介さん(48)です。

世界各地で医療支援を行う「国境なき医師団」は、首都・キーウ(ロシア語でキエフ)やウクライナ東部の病院などに、不足している医療物資の提供などを行っていて、3月19日には日本からも医師を現地に派遣しました。
門馬医師は南東部のザポリージャや東部のドニプロなどの病院で、医療従事者を対象に多数のけが人が一斉に搬送された場合の対処法「マス・カジュアリティ・プラン」の研修を行っています。
また、戦闘の激しい地域から避難してきた市民の治療も行っています。

ロシアによる軍事侵攻が始まってから日本からウクライナに医師が派遣されるのは初めてで、門馬医師の派遣期間は3月19日から4月15日までの4週間の予定です。

門馬医師は「ウクライナの状況を見て、いてもたってもいられず、救命救急医の技術を生かして少しでも役に立ちたいと思い派遣を志願しました。戦闘が行われている地域に最も近い場所にいるので出来るだけのことをしてウクライナの人たちの役に立ちたいです」と話しています。

国境なき医師団 ウクライナでの活動は

世界各地で医療支援を行う国際NGO「国境なき医師団」は、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナに対して、2月下旬から医療従事者の派遣や医療物資を送るなど緊急医療援助を行っています。

ウクライナ国内では、首都・キーウ(ロシア語でキエフ)や東部の病院などを中心に、多くの負傷者に対応できるよう医薬品や医療物資などの提供を行っています。
また、キーウや東部のドニプロなどの病院では、紛争地での活動経験のある医師などが多数のけが人が一斉に搬送された場合の対処法「マス・カジュアリティ・プラン」の研修を行っています。

研修ではけがの程度によって優先順位をつけて治療するトリアージのやり方や、病床の確保の方法などについて現地の医療従事者に指導しているということです。

一方、ロシア軍の激しい攻撃が続く東部マリウポリでは、2014年に紛争が起きて以降、医療支援を続けてきました。

しかし、今月12日に現地のスタッフから「1週間以上、水も薬もない状態が続いています。薬が無くて亡くなる人がたくさんいます。殺された人や、けがをした人が地面に横たわっています」と報告がありましたが、その後、現地に取り残された複数のスタッフと連絡が取れなくなっているということです。

3月18日時点で、ウクライナ国内で活動する「国境なき医師団」のスタッフはおよそ70人で、今後は、空襲などで医療施設が使えなくなった場合に備えて、地下に臨時の手術室を設置することを検討するなど現地の状況を見ながら必要な医療支援を続けることにしています。

派遣された救命救急医 門馬秀介さん

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから国境なき医師団が日本から現地に医師を派遣するのは、門馬さんが初めてです。

門馬医師はふだんは救命救急の医師として働いていて、妻の杏奈さん(34)と長男で生後5か月の優くんの家族3人で暮らしています。

東日本大震災や熊本地震など災害現場での経験が豊富で、2019年に国境なき医師団に参加し、海外に派遣されるのは、パレスチナのガザ地区に続き今回が2回目です。

出発日には杏奈さんと優くんに見送られて羽田空港から現地に向けて出発しました。
妻の杏奈さんは「私と主人の家族とは『一丸となって帰りを待とうね』と話しています。毎日連絡を取り合いながら帰りを待ちたいと思います」と話しています。

出発する際、門馬医師は「現地で病院が攻撃され、妊婦や赤ちゃんが亡くなったことにショックを受けました。困っている人がたくさんいると思うので、ウクライナの人の役に立てればとおもいます」と話していました。