ロシアとウクライナ トルコで対面形式の停戦交渉

ウクライナで双方の激しい戦闘が続く中、ロシアとウクライナによる対面形式の停戦交渉が29日、トルコのイスタンブールで行われています。
ロシアが求めるウクライナの「中立化」などで妥協点を見いだし、事態の打開につなげられるかが焦点です。

ウクライナに軍事侵攻しているロシア軍は、29日も東部の要衝マリウポリの完全掌握を目指すなど攻勢を強めています。

一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は28日、首都キエフの北西に隣接するイルピンについて「私たちの軍は、キエフ周辺で前進していて、イルピンはロシア軍から解放された」とするなどウクライナ軍も反撃を続けています。

ロシアとウクライナが戦況の優位性を強調する中、双方の代表団による対面形式の停戦交渉がトルコのイスタンブールで、日本時間の29日夕方から行われています。

仲介役をつとめるトルコのエルドアン大統領は、代表団を前にあいさつし「紛争を長引かせることは誰の利益にもならない。交渉は具体的な成果をあげるべき時に入った」と述べて、交渉の進展に期待を示しました。

そのうえで「交渉が進展すれば、双方の首脳会談も可能になる。トルコとして支援を惜しまない」と述べ、積極的に仲介を進める姿勢を示しました。

また、ロシア代表団のトップ、メジンスキー大統領補佐官は、協議の合間にメディアに対して「数時間後に結果について声明を発表したい」と述べました。

一方、ウクライナのポドリャク大統領府顧問も「集中的な協議が行われている。重要なのは、ウクライナの国際的な安全保障に関する条約であり、これがあってはじめて、戦争を終わらせることができる」と述べ、安全保障の問題で一致点を見いだしたいという考えを示しました。

これまでの交渉でウクライナ側は、NATO=北大西洋条約機構への加盟に代わる新たな安全保障の枠組みについて議論する考えを示していて、ロシアが求めるウクライナの「中立化」をめぐり、譲歩する姿勢もみせています。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は28日「直接対話で交渉を進めることは重要だ」と述べ、事態の打開に期待を示しました。

一方、ウクライナのクレバ外相は28日、テレビ局のインタビューで「最大の計画は停戦合意に達することだ。国民や領土、主権に関して取り引きはしない」と強調しました。

双方の間では、ロシアが8年前に一方的に併合した南部クリミアの承認や、親ロシア派の武装勢力が事実上、支配している東部地域の独立承認などは、ウクライナが拒否するなど、主張の隔たりは埋まっていません。

対面形式の交渉は、ベラルーシで今月7日に実施されて以来、4回目となり、ロシアが求めるウクライナの「中立化」などで妥協点を見いだし、事態の打開につなげられるかが焦点です。

ウクライナ側の主張

これまでの交渉でウクライナ側は、戦闘の停止やロシア軍の即時撤退、などを強く求めています。

一方、ロシアがウクライナを「中立化」させるとしてNATO=北大西洋条約機構に加盟しないことなどを求めていることについては「今は現実的でない」などと、必ずしも加盟にこだわらない姿勢を示しています。

そのうえで、NATO加盟に代わり、アメリカやイギリスなど主要国や、近隣のトルコと新たに協定を結び、集団的な安全保障の枠組みを新たに作ることを要求しているとみられます。

また、主権と領土の一体性についても主張しています。

ゼレンスキー大統領は「中立化」などの実現に向けてはウクライナの憲法を改正するため民意を問う必要があるとしていて、国民投票を実施できる環境を整えるためにもロシア軍が撤退すべきだとしています。

ロシア側の主張

ロシア側は、NATOに加盟しないことをウクライナが法的に保証する「中立化」を求めています。

ただ、NATOに加盟しない代わりに、ウクライナが要求する安全保障の枠組みを作ることには前向きな姿勢を示すとともに、ウクライナが自国の軍を持つことも認めるとする考えを示しています。

一方、ロシアの脅威となる兵器を撤去させる「非軍事化」、それに「非ナチ化」を進めるとして、強硬な民族主義を排除することや、ロシア語教育やロシア文化などに関する制限を撤廃することを求めています。

また、8年前に一方的に併合した南部クリミアの承認や親ロシア派の武装勢力が事実上、支配している東部地域の独立承認などを要求しています。

ロシアとウクライナ双方は「中立化」などの争点となっている安全保障の枠組みをめぐり、譲歩する動きも見られますが、原則的な立場の隔たりは埋まっていないとされています。