次はあなたの番です!PTA役員決め 任意?強制?どっち?

次はあなたの番です!PTA役員決め 任意?強制?どっち?
私、友澤はこの春、上の子が小学校に入学します。

学校からのお知らせに混ざっていたのが「PTA役員募集の案内」
あれ、そういえばPTAってなんだろう?
ネットでPTAを検索すると「役員の断り方」みたいなものばかり。

せっかくなので同僚と一緒に詳しく調べてみたら、PTAもコロナ禍で様変わりしてました。

今のPTAについて、皆さんどれくらい知っていますか?

(大阪放送局 友澤聡・ネットワーク報道部 清水阿喜子・芋野達郎)

突然ですが、クイズです

選択肢をタップまたはクリックしてください。

「だまされた!」と思いました

「こんなに大変とは聞いてなかった!」

そう話すのは、大阪府内の小学校でPTA役員を務める40代の女性です。

先代のPTAから役員になるよう打診され、学校やほかの保護者とつながりをつくるきっかけになればと思い、引き受けました。

しかし、その負担の大きさに驚きました。

役員会に始まり、委員会、校長らを交えた学校運営協議会といった会議への出席、運動会など学校行事の手伝い。

想定外だったのは、川の清掃活動や夏祭り、餅つきなど、地域行事の手伝いや会合への参加でした。
PTA役員の女性
「私の学校では、PTAの役員になると、自動的に地域の青少年健全育成の協議会など団体のメンバーに登録され、さまざまな地域活動に出席する仕組みになっていたんです。役員なって初めて知ったことで『だまされた!』と思いました」
さらに、行事のたびに必要なのが保護者に配るプリントです。
資料は家に持ち帰って作成し、学校で数百枚を印刷。
拘束時間はどんどん増えてきます。

役員に選ばれるのは「専業主婦」に偏っているのが現実だといいます。

年度末が近づくと極秘の「指名委員会」が開かれ、次の役員を引き受けてくれそうな保護者をリストアップし、役員が一人一人電話をかけて説得しますが、次々と断られて電話代が1万円を超える人も…
PTA役員の女性
「PTAの役員になれば校長先生や、ほかの先生とコミュニケーションがとれて学校とよい関係がつくれるなど利点はありますが、今のままでは負担の方が重すぎです」

PTAを解散します

去年、開校したばかりの前橋市の中学校では、ことし1月、こんなお知らせが保護者に届きました。

タイトルは「令和4年度以降のPTAの発展的な解散について」

「PTA役員は、立候補する人がほとんどいないなかで、選出に大変な労力があり、また、しかたなく引き受けてもらっている現状がある」

「PTAセミナーや講演会などの行事を企画しても、役員以外の参加者はほとんどいない」

「コロナ禍でPTA活動がほぼできない状況だが、学校運営上特に支障がない」

PTA役員たちのシビアな現状が書かれていました。

解散について問う議案がはかられた3月のPTA総会。
結果は、解散に賛成が192、無効が2。
反対は0でした。
わずか1年で、PTAの解散が決まりました。

ただ、PTAを解散したからといって保護者と学校とのつながりがなくなるわけではありません。

今後は、マラソン大会といった学校行事で保護者の手伝いを必要とする場合にはボランティアを募ったり、学校支援協議会の保護者の代表から意見を聞いたりしながら、そのつど考えていくといいます。
教頭
「時代の流れに合わせて変えていく必要がある。PTAを解散するのに反対意見がなく、保護者のニーズがないのに続けていくメリットがない。その代わりに、新しく、学校と保護者との関わり方を模索し確立していきたい」

「母代」って何?やめちゃいます

とはいえ、代々続くPTAをなくすというのは、ハードルが高いのが現実です。

PTA役員の負担を少しでも減らせないか。各地で見直しも始まっています。

例えば、愛知県。
「母代(ははだい)」と呼ばれる役職の廃止を検討しています。
この「母代」、「母親代表」の略です。

愛知県小中学校PTA連絡協議会には、2、3年前から「性別を限定した役職は時代に合わないのではないか」という意見が寄せられたため、見直すことにしました。

男性だけの役職はないのに、女性に限る役職を置くのは、やめようというねらいです。

私が会長です。私も、私も、私も会長です

負担が大きいといえば、やはりPTA会長。
なり手不足で、卒業生の親が継続して引き受けるなんていうことも…

そこで、PTA会長を複数人で役割分担している学校もあります。

都内のある公立中学校はPTA会長の規約を「共同で運営することも可能」と変更。今年度は4人が共同会長を務めています。
行事に参加し、あいさつなども担当する会長、学校と連絡調整する会長などの担当を決め、情報はLINEで共有しているということです。
共同会長を務める男性
「会長は他の役職に比べてやることが非常に多く、家族の理解を得るのも大変です。もし今後やる人がいなくなると困るので、複数人が代表でもかまわないという規約に変えました。4人での会長は、意思決定に時間はかかりますが、その分負担は減っていますし、やっていて楽しいです。PTAは本来、強制されてやることではないので、できる人ができることをやるのが大前提だと思います」

会議も予約もプリントも全部デジタル化

PTAの仕事の進め方を変えようと「デジタル化」に注力する人もいます。

川崎市立古川小学校のPTA副会長の田中さんです。

きっかけは、何をするにも学校に足を運ばなければならない非効率なルールでした。
田中さん
「会議室を予約するのも、備品のデジタルカメラを借りるのも、すべて平日の日中に学校に来て行うのが慣例でした。共働きの家庭が多い中で、こうした一つ一つが拘束時間を長くし、PTAに参加しづらくしていると感じました」
「とにかく学校に行く回数を減らしたい」

田中さんはもともとパソコンに詳しいわけではありませんでしたが、詳しい保護者を探して「デジタル担当」になってもらい、アドバイスを受けて勉強しました。

ネットの無料ツールを使い、PTAの会議はリモートに、意見集約はWEBアンケートに、備品の台帳や会議室の予約もネットで行えるようにしました。
いちばん効果が大きかったのは保護者へのプリント配布をデジタル化したこと。これまで、毎回800部以上を印刷してホチキスで留めて準備してきましたが、PTAのホームページへの資料を掲載する形に変えました。

保護者に紙のプリント配布か、それとも資料のネット掲載か、選んでもらったところ、99%がネット掲載を選んだということです。

デジタル化の結果、学校に行く回数はこれまでの3分の1ほどに減ったといいます。
田中さん
「時間と場所を選ばず、誰でも参加できるPTA活動を意識しています。むだを減らせば、学校に防災備蓄品の充実を働きかけるなど、本当に子どものためになる活動に取り組むこともできます」
コロナ禍で学校現場でもオンライン授業の導入も進み、デジタル化を進めるPTAは各地で増えています。

子どものためにできること

ここまで、保護者とPTAの関わりについて見てきましたが、いちばん大事なことを忘れていました。

子どもたちのために何をしてあげられるかです。

そんな中、PTAだからこそできる心温まる取り組みの現場に居合わせました。

3月24日。

スカイツリー近くの小学校に、ことしの卒業生やその保護者が集まってきました。
小学校最後の2年間のほとんどをコロナ禍のなかで過ごし、修学旅行や運動会などの規模が縮小されるなど、さまざまな制約を受けてきました。

子どもたちのために何か思い出を残してあげたい。
「墨田区立小学校PTA協議会」が一肌脱ぎました。

コロナで中止になったイベントの費用などを回し、卒業式の日の夜、スカイツリーにメッセージを点灯させることにしたのです。

地域の人の要望で、スカイツリーにメッセージが表示されるのは初めてのことです。
「私にも6年生の娘がいますが、特にかわいそうに感じたのは、楽しい給食の時間が、すべて黙食になったということです。大人の中には飲み会に行く人も多く、理不尽さを感じながら生活をしていたと思います。今回のイベントで少しでもわくわくする気持ちになってもらい、これから中学生になるにあたって前向きに進んでいってもらえるとうれしいです」
午後6時45分。

カウントダウンの掛け声が終わるとともに、スカイツリーに順番に文字が表示されていきます。

「卒」「業」「お」「め」「で」「と」「う」
「おー!」という大きな歓声とともに自然と拍手がわき起こり、忘れられない小学校生活のフィナーレになりました。
参加した男の子
「『卒業おめでとう』というメッセージを見て、卒業するんだという寂しい気持ちと、中学校に行くんだというわくわくする気持ちになりました。墨田区に住んでいてよかったです。大人になっても忘れない思い出になりました」
高木基裕会長
「PTAなんていらないという人がいるのは知っていますし、なくなると楽になるという側面はあるかもしれません。しかし、制限の多い学校にはできないことをPTAが担うことで、子どもたちに豊かな体験をさせてあげられると思っています。PTAを通して子どもたちを喜ばせたいという輪を広げていき、その輪が学校をよりよくすると考えています」

変わる運営方法 変わらない子どもへの思い

時代に合わせて、PTAのあり方も大きく変わってきています。

でも、子どもたちに楽しい学校生活を送ってほしいという思いは、いつの時代も変わらないと思います。

古いしきたりや非効率なルールは改めながらも、子どもたちの学校生活のいい思い出ができるように。

PTAのためにではなく、子どもたちのために何ができるか。

わが家に届いたPTA役員募集の案内に書かれた「できる人ができることを」の文字を見ながら考えました。