ゼレンスキー大統領 国会演説 日本国内の反応は

ウクライナのゼレンスキー大統領は、23日午後6時から日本の国会でオンライン形式で演説し、ウクライナの惨状を訴えたうえで「日本はアジアで初めてロシアに圧力をかけた」と述べ、日本の対応を評価したうえで、ロシアに対する制裁の継続を呼びかけました。
演説を聴いた、国内の反応です。

ICAN 川崎国際運営委員「国内でも議論発展させていくこと必要」

ウクライナのゼレンスキー大統領の演説について、ICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンの川崎哲国際運営委員は、「化学兵器や核兵器といったこれまでとは次元の違う兵器の脅威にさらされ、非人道的な事態になることへの強い危機感が伝わってきた。直接的な言及はなかったが、広島と長崎の原爆の被害や福島のことも言外にはあったように受け止めた」と述べました。

そのうえで「大変な危機のもとにある指導者が、国際秩序を立て直す必要性を訴えるなど、戦争が終わったあとのことをメッセージとして発信したことは驚きであり、非常に感銘を受けた。ゼレンスキー大統領は日本が果たすべき役割の方向性を示してくれたと思うので、国際社会の不公正をどう立て直していくか、国内でも議論を発展させていくことが必要だ」と話していました。

日本被団協 中重代表委員「私たち被爆者も最後のふんばりを」

日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の代表委員で被爆者の田中重光さん(81)は23日、長崎市内の自宅のテレビで、ウクライナのゼレンスキー大統領の演説を聴きました。

田中さんは演説を聞きながら時折、その内容をメモに書き留めていました。

演説を聞き終えて田中さんは「大統領は、戦場の中にいるのに落ち着いて語っていたと思う」と話しました。

また、演説でウクライナ国内の原発に対するロシア軍の攻撃に触れたことを受けて、「原発を攻撃して、万が一原子炉に命中するようなことになれば、核物質が世界中に飛散することはチェルノブイリや福島での事故で明らかだ。原発への攻撃は、核兵器を使うことと同じだ」と述べ、ロシア側を改めて非難しました。

そのうえで、「『長崎を最後の被爆地に』という思いで、核兵器禁止を呼びかけてきた。それは世界中の願いでもある。私たち被爆者も最後のふんばりをしないといけないと思っている」と話していました。

広島県被団協 箕牧理事長「本当に核兵器使用するのではと心配」

広島県被団協=広島県原爆被害者団体協議会の理事長で、被爆者の箕牧智之さんは、自宅のテレビでゼレンスキー大統領の演説を聴きました。

ゼレンスキー大統領がロシアによる核兵器の使用の可能性に懸念を示したことについて、箕牧理事長は、「プーチン大統領が威嚇ではなく、本当に核兵器を使うんじゃないかと心配している。核を使われたら人類はおしまいですよということが、なかなか世界の政治家に伝わっていないのではと思う」と述べました。

そして、核兵器を使えば地球全体の危機になるという考えを示したうえで、引き続き核兵器の廃絶を訴えるとともに、日本の多くの人たちがウクライナへの支援を広げるべきだとしました。

広島県被団協 佐久間理事長「平和な暮らしに戻ること祈る」

また、もう1つの県被団協の佐久間邦彦理事長は、広島市の事務所でゼレンスキー大統領の演説を聴きました。

佐久間理事長は、「大統領の演説を聴いて、核の脅威でウクライナを威嚇するロシアに対して憤りを感じるとともに、国際的に非難されるべきだと改めて感じました。自分たちは被爆者として、停戦を訴えるとともに、国際機関を通じてウクライナへの人道的な支援を続けていきたいと思います。この戦争がいち早く終わり、市民の人たちが避難することなく平和な暮らしに戻ることを祈るのみです」と話していました。

ウクライナ出身の大阪の女性「応援し続けてほしい」

ゼレンスキー大統領の国会演説を聴いた、ウクライナ出身の大阪の女性は「冷静な気持ちでは聴けませんでした。日本の皆さんにはウクライナを応援し続けてほしいです」と語りました。

大阪に住むウクライナ出身の須田エフゲーニヤさんは、キエフ国立大学で日本語や日本文学を学び、およそ20年前から日本国内で通訳や翻訳などの仕事をしています。

エフゲーニヤさんは午後6時から、ゼレンスキー大統領がオンライン形式で行った国会演説をテレビで聴きました。

時折涙を浮かべて、メモを取りながらおよそ12分間の演説を聴き終えると、静かに拍手していました。

エフゲーニヤさんは「戦争の話を聴くのは楽なことではないので、冷静な気持ちでは聴けませんでした。日本の皆さんには、ことばでも思いやりでも経済でも、ウクライナを応援し続けてほしいです」と語りました。

ウクライナに残る妹など家族や友人の安否を毎日気遣っているということで、23日もキエフからウクライナ西部の町に3人の子どもとともに避難した友人にテレビ電話をつなぎ、現地の様子や体調を尋ねていました。

エフゲーニヤさんは「毎日ニュースを見ると泣きたくなるような話ばかりで、涙が出てしまうこともあります」と話します。

そのうえで「安全な海外にいるウクライナ人の1人として自分に何ができるのか考えていますが、私は翻訳などでウクライナの情報を発信していきたいです。これからもウクライナが独立国家として発展するように、どうか世界が力を合わせてほしいし、私にできることをしていきたいと思います」と語りました。

SNS上の声は

ウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説の内容について、SNS上では肯定的に捉える声が多く見られました。

「抑制的で品格がある演説。キーワードを良く絞っていると思います」
「放射能やサリン被害といった痛みの共感に力を入れてて、何したら日本人の琴線に触れるかちゃんと考えてる」
という声がありました。

また、
「かなり日本向けに研究された内容だったと思う」
「情緒的訴え方がとても日本向けっぽかった」など、日本向けに考えられた演説だったという評価も目立ちました。

このほか、
「戦後日本が平和外交に徹しているからこそ武器提供など難しい要求ではなく、さらなる経済的圧力への協力などライトなものになってると思う」
「日本にできることは限られるので、あまり期待していないことの裏返しかも」など、各国での演説に比べて抑制的な内容だったという意見も見られました。