林外相 UAE外相と会談 ウクライナへの軍事侵攻めぐり協調対応

ロシアのウクライナへの軍事侵攻をめぐり、林外務大臣は訪問先のUAE=アラブ首長国連邦でアブドラ外相と会談し、国際秩序の根幹を守るため、さまざまな外交交渉の場で協調して対応していくことを確認しました。

会談は日本時間の21日未明に行われ、ウクライナ情勢などをめぐって意見を交わしました。

この中で林大臣は、ロシアの軍事侵攻はウクライナの主権と領土の一体性を侵害するもので、国際法の重大な違反だという認識を伝え、両外相は、国際秩序の根幹を守るため、今後もさまざまな外交交渉の場で協調して対応していくことを確認しました。

また両外相は、ロシアによる核兵器の威嚇、使用もあってはならないという認識で完全に一致しました。

一方、林大臣は、原油価格の高騰への懸念を伝えるとともに、主要な産油国として国際原油市場の安定化にいっそう貢献するよう求めたのに対し、アブドラ外相は戦略的パートナーの日本との関係は揺るぎないとして、連携していく意向を示しました。

会談後、林大臣はトルコとUAEの2か国の訪問日程を終え、帰国の途につきました。

これに先だって、林大臣は現地で記者団に対し「喫緊の課題のウクライナ問題について意見交換し、日本として、問題解決に向けて外交努力をさらに強めていける一環になった」と成果を強調しました。

UAE 単独での原油追加増産に否定的な姿勢

UAE=アラブ首長国連邦は日本が輸入する原油のおよそ3割を供給していて、日本の企業も現地で原油生産を行っています。

UAEが加盟するOPEC=石油輸出国機構と、ロシアなどの主な産油国は「OPECプラス」と呼ばれる枠組みのもと、原油需要に応じて生産量を調整しています。

OPECプラスの参加国は原油価格が低迷したおととし、世界の原油生産の1割にあたる日量970万バレルの大幅減産に踏み切りましたが、その後は生産量を回復させ、去年8月からは日量40万バレルの小幅増産を続けています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を背景に原油価格が高騰しているのを受け、消費国は産油国にさらなる増産を求めていますが、産油国は慎重な姿勢を崩していません。

OPECは15日に公表した報告書で、原油需要の見通しについて「まだ評価の途中で、地政学的な混乱による広範な影響が明らかになった場合は見直すことになる」と述べるにとどめています。

UAEのマズルーイエネルギー相は、OPECプラスの枠組みを尊重する考えを表明していて、単独での追加増産についても否定的な姿勢を示しています。

UAE 石油政策めぐりロシアとも関係深める

UAE=アラブ首長国連邦はアメリカと同盟関係にあり「中東の親米国家」として知られていますが、石油政策をめぐってロシアとも関係を深めています。

主な産油国が協調して原油の生産量を調整する「OPECプラス」に参加するUAEは、ロシアがウクライナへの軍事侵攻で国際的に孤立する中でもOPECプラスの一角のロシアに配慮する姿勢を示してきました。

UAEの事実上の指導者、アブダビ首長国のムハンマド皇太子は今月1日、プーチン大統領と電話で会談し、OPECプラスにもとづく協力関係を確認しています。

ムハンマド皇太子の弟、アブドラ外相も今月17日ロシアを訪問し、ラブロフ外相とエネルギー市場の安定について意見を交わし、友好関係をアピールしました。

UAEは再生可能エネルギーの導入や石油以外の産業育成など、石油への依存を減らす取り組みを進めるため、重要な収入源である原油の価格を少しでも高く維持したい思惑があります。

そのため、世界有数の産油国ロシアとOPECプラスの枠組みで協力することで、国際的な原油価格への影響力を保ちたい狙いがあるものとみられます。