ロシア軍 各地で攻勢強める 生物兵器などの使用を米など警戒

ロシア軍は20日、ウクライナ各地へ大規模なミサイル攻撃を行ったと発表するなど攻勢を一層強めています。
またロシアのプーチン大統領は「ウクライナが生物兵器を開発している」などと主張し、アメリカなどは、ロシア軍が虚偽の主張をもとに生物兵器や化学兵器を使用するおそれがあるとして警戒を強めています。

ロシア国防省は20日、一方的に併合したウクライナ南部のクリミアの空域から極超音速ミサイル「キンジャール」を発射するとともに、黒海やカスピ海からも巡航ミサイル「カリブル」を発射して、南部ミコライフ州などのウクライナ軍の施設を破壊したと発表しました。

ウクライナの公共放送は18日、南部の都市ミコライフにある軍の施設がミサイル攻撃を受け少なくとも40人が死亡したと伝えていて、ロシア軍は黒海にも面している南部で攻勢を強めています。

またロシア軍は、ベラルーシとの国境に近い北西部ジトーミル州のウクライナ軍の訓練施設をミサイルで攻撃し、「ウクライナの特殊部隊や外国人のよう兵など100人以上を殺害した」と発表し、欧米などからの軍事的な支援をけん制するねらいもあるとみられます。

一方、激しい攻撃が続く東部のマリウポリでは20日、マリウポリ市議会がSNSへの投稿で、「ロシア軍がきのう(19日)、女性や子ども、高齢者などおよそ400人の市民が避難する芸術学校を爆撃した。建物は破壊され、市民ががれきの下に取り残されている」と明らかにしました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、ビデオメッセージを公開し、「マリウポリの封鎖は戦争犯罪として歴史に刻まれるだろう。ロシア軍が平和な都市に行ったことは、今後何世紀にもわたって記憶されるテロ行為だ」として、都市を封鎖して攻撃を続けるロシアを強く非難しました。

こうした中、ロシア国防省は19日、ミコライフ州の村や北東部のスムイで「ウクライナ側がロシア軍の攻撃に備えて、地域の住民に化学兵器を使うおそれがある」などと一方的に主張しました。

また、プーチン大統領も16日に行った会議で、「ウクライナの研究所で、アメリカ国防総省の支援によりコロナウイルスや炭そ菌、コレラなどの実験が行われている。生物兵器が作成されたと信じる理由が十分にある」などと主張したほか、19日もルクセンブルクの首脳との電話会談で、「生物兵器がロシアやヨーロッパの脅威となっている」と、同様の主張を繰り返しています。 

ロシア軍の部隊は、ウクライナ軍の激しい抵抗にあって予想以上に苦戦しているという分析が伝えられています。

こうした中、ロシア軍が戦況を変えるためにも、ウクライナ軍の攻撃に見せかけるなど虚偽の主張をもとに、生物兵器や化学兵器を使用するおそれがあるとして、アメリカなどは警戒を強めています。

ミコライフとは

ウクライナ南部のミコライフは、黒海に近く重工業が盛んな都市で、ロシアによる軍事侵攻の前の人口はおよそ47万でした。

ミコライフには、旧ソビエト時代にウクライナで最大だった造船所があり、ソビエト崩壊後の1998年にウクライナから中国へ売却された空母「遼寧」もここで建造されたことで知られています。

ミコライフの西には、最大の港湾都市オデッサが、また東には、ロシアが8年前に一方的に併合したクリミア半島に隣接している都市ヘルソンがあり、ミコライフはこれら2つの都市と幹線道路でつながっています。

ロシアとしては、東部マリウポリから南部オデッサに向かう際の通過地点であるだけでなく、クリミア半島から首都キエフへ北上するルートに位置するミコライフの攻略を重視しているとみられます。

ウクライナの公共放送は18日、ミコライフにある軍の施設がロシア軍によるミサイル攻撃を受けて少なくとも40人が死亡したと伝えました。

ミコライフから北西に100キロ余り離れた場所には南ウクライナ原子力発電所もあり、ロシア軍がこれまでに南東部のザポリージャ原発などを掌握していることから、現地では警戒感が強まっています。