ウクライナ 東部などで戦闘激化 ロシア軍の生物兵器使用に警戒

ロシアの軍事侵攻が続くウクライナでは、東部のマリウポリなどで激しい戦闘が続く中、各地でさらなる侵攻に備え、市民を対象とした戦闘訓練が行われています。
一方、今後、ロシア軍が苦戦を強いられた場合、虚偽の主張をもとに生物兵器や化学兵器を使用するおそれもあるとして、アメリカなどは警戒を強めています。

先月24日、ウクライナに侵攻したロシア軍は、東部のマリウポリや南部のミコライフにミサイル攻撃を行い、抵抗するウクライナ軍との間で激しい戦闘が続いています。

マリウポリからは多くの住民が周辺の地域に逃れていて、南東部のザポリージャに避難した人は、「街の外に避難できた人もいたが、多くの車が爆撃を受け、そうした人たちは逃げられなかった。多くの人が路上で亡くなり、遺体が横たわっていた」などと現地の凄惨な状況を語りました。

また、ウクライナの公共放送は南部の都市ミコライフにある軍の施設が18日、ミサイル攻撃を受け少なくとも40人が死亡したと伝えました。

これについてミコライフを管轄する軍の幹部は、「救出活動は続いていて、被害状況を確認している途中だ。ロシア軍は兵士が寝ている時にミサイルで攻撃しており、非道だ」と話しています。

国連人権高等弁務官事務所は、ウクライナで今月18日までに少なくとも64人の子どもを含む847人の市民の死亡が確認されたと発表しました。

ただ、激しい攻撃が続く東部のマリウポリなどは、市民が多数犠牲になったという情報があるものの、詳しい確認が取れておらず、実際の犠牲者数はさらに多いとしています。

一方、ウクライナ各地ではロシア軍のさらなる侵攻に備え、市民の戦闘訓練が行われていて、ロシア軍が制圧に向けた準備を行っているとみられる最大の港湾都市オデッサでは、若者たちが自動小銃の扱い方などを学んでいました。

市民を対象にした戦闘訓練は、比較的情勢が安定している西部の主要都市リビウでも行われていて、参加した女性は「この知識が必要となってほしくないが、リビウにもロシア軍が到達した場合に備える」と話していました。
またリビウでは、旧市街にあるユネスコの世界遺産に登録されているキリスト教の大聖堂を守るための対策が進められていて、大聖堂の神父はNHKの取材に対し、「貴重な文化財を少しでも守るためにできることをしていくしかない」と話していました。

こうした中、ロシアのプーチン大統領は19日、「ウクライナでアメリカが、『軍事的・生物学的な活動』を行い容認できない。ロシアだけでなく、ヨーロッパに大きな危険をもたらしている」と述べ、ウクライナ側が生物兵器を使用する疑いがあると一方的に主張しました。

アメリカなど各国は、今後、ロシア軍が苦戦を強いられた場合、虚偽の主張をもとに生物兵器や化学兵器を使用する恐れもあるとして警戒を強めています。