ウクライナへの志願兵 米で約6000人が応募 退役軍人など相次ぐ

ウクライナ政府が外国からも志願兵を募っていることを受け、アメリカでは退役した軍人などの間でウクライナの部隊に加わることを希望する人が相次いでいます。

これまでに約6000人が応募

アメリカにあるウクライナの大使館や領事館では志願者を受け付け順次面接などを行っています。
アメリカのメディアは大使館関係者の話としてこれまでにおよそ6000人の応募があったと伝えています。

志願した元軍人「正しいことをするのがアメリカの理念」

アメリカ海兵隊に所属していた、東部コネティカット州に住むデニス・ディアスさん(39)も志願している1人です。
大使館での面接を終え、現在は出国に向けたウクライナ政府からの連絡を待っています。
武器は現地でウクライナ政府から供与されるということですが、それ以外の装備品はすべて自費で用意しました。
4人の子どもがいるディアスさんですが、ロシア軍による攻撃で子どもを含む大勢のウクライナ市民が命を落としていることを見過ごすことはできないと考え決断したといいます。

バイデン政権は当初から、ウクライナ国内にアメリカ軍の部隊は送らないとしています。
また、ウクライナの部隊に加わることを希望するアメリカ人に対しても、危険だとして渡航しないよう呼びかけています。

これについてディアスさんは「ロシアとの戦争を望まないからという理由は理解しているが、正しいことをする、自由を守るというのがアメリカの理念だ。ウクライナの人々は文字どおり自由のために戦っているのだから、現地に行って助けるべきだ」と話しています。

ディアスさんは2003年にイラクとアフガニスタンに派遣され、戦闘や人道支援任務に携わりました。
そのアフガニスタンで去年夏、アメリカ軍が撤退するなか、イスラム主義勢力タリバンが再び権力を握ったことはディアスさんにとって大きなショックだったといいます。
そのことも今回の決断を後押ししたといい「このような結果のために自分たちは命をかけて戦ってきたのかと思った。今度はイラクやアフガニスタンでできなかったことを成し遂げられるだろうということが大きな動機になっている。自由を求めているウクライナの人々を助けて、この戦いに勝ってみせる」と話しています。

手続き経ずにウクライナに向かう人も

ウクライナ大使館による面接などの審査を待っていては時間がかかりすぎるとして、こうした手続きを経ずにウクライナに向かう人たちも出てきています。

アメリカ南部ミシシッピ州の農場で働いていたウェスリー・ラウリーさん(23)は、ロシアによる軍事侵攻に対しては経済制裁だけでは不十分だと考えています。
ラウリーさんはウクライナの人たちを直接、助けることが必要だと考え、軍事侵攻の数日後、SNSに志願兵として現地に向かうことを希望する人たちが情報交換できるグループを立ち上げました。
立ち上げから1週間でおよそ800人から問い合わせなどの書き込みがあり、およそ3週間たった今では、アメリカをはじめ各国の2000人を超える人がこのSNSのグループでやり取りをしているということです。
その多くが軍隊での経験がある人で、現地への渡航情報や資金面での相談などについて、情報交換をしているということです。

ラウリーさん自身は軍隊での経験はなく大使館での手続きは経ていないということですが、ウクライナの外国人部隊の担当者に直接連絡を取ったところウクライナ西部のリビウに向かうよう指示を受けたとして3月14日、アメリカを出発し現地に向かいました。
出発前の空港でラウリーさんは「ライフルを持って前線に行けと言われればそうするし、後方支援としてトラックを運転しろと言われればそうする。行けと言われたらどこにでも行く。怖い気持ちもあるが、とにかく現地に行って、何かの役に立ちたい」と話していました。

専門家 “志願兵の加入で事態の悪化するおそれ” 指摘

一方、外国からの志願兵が戦闘に加わることで事態が悪化するおそれがあるという指摘もあります。

外国人戦闘員について研究を行っているアメリカン大学のデイビッド・マレット准教授は、「外国人戦闘員が加わることで結果として勝利することもあるが、歴史上、外国人戦闘員が加わった戦争はより高いレベルでの暴力がみられ、民間人に対する暴力も増える」と指摘しました。
そのうえで現在のウクライナの状況について「50か国以上から外国人戦闘員が集まっている」という見方を示したうえで、「紛争の対象が世界数十か国に広がっているように見える。紛争がより激しくなり、より多くの国が巻き込まれるおそれがある」と述べ、懸念を示しました。
さらにマレット准教授は「アメリカ人の戦闘員が殺されたり、捕虜になったりしたら、世論が変わり、以前はなかった戦争への衝動が生まれる可能性もある」と述べ、戦闘の状況によってはアメリカの世論に影響を与える可能性もあるという考えを示しました。