“ロシア軍 キエフ包囲へ 主に3方向から前進” 米国防総省高官

ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア軍について、アメリカ国防総省の高官は、首都キエフを包囲しようと、主に3方向から部隊を前進させていると明らかにしました。ロシア軍はキエフの包囲に加わる軍の増強を進めることなどで、ウクライナ側の戦意をそぐねらいがあるものとみられ、さらなる戦闘の激化も予想されます。

アメリカ国防総省の高官は11日、ロシア軍がウクライナの首都キエフを包囲しようと、主に3方向から部隊を前進させていると明らかにしました。

キエフ中心部に最も近い部隊が引き続き北西方向におよそ15キロの位置にいるほか、北東方向から進む部隊も中心部からおよそ20キロから30キロの位置にまで近づいたとしています。
また、この高官は、ロシア軍がこれまであまり攻撃してこなかったとされるウクライナ西部で、ルツクとイワノフランキフスクにある飛行場の爆撃が確認されたとしていますが、さらなる攻撃に向けた兆候なのかは分からないとしています。

ロシア軍による攻撃が続く中、国連人権高等弁務官事務所は、ウクライナ国内で10日までに41人の子どもを含む少なくとも564人の民間人の死亡が確認されたと明らかにしました。

多くは砲撃やミサイル、空爆などによって命を落としたということです。

一方で、ウクライナのクレバ外相は11日、ツイッターに、産科や小児科が入る病院が空爆で破壊されるなど被害が拡大している東部のマリウポリだけで1582人の民間人が死亡したと投稿しました。
市民を安全に避難させることが課題となる中、ウクライナのゼレンスキー大統領は12日、「人道回廊」と呼ばれる避難ルートについて、11日に避難できた人がおよそ7000人にとどまったと明らかにしました。

ウクライナ政府は9日におよそ3万5000人、10日にはおよそ4万人が避難していたとしていて、ゼレンスキー大統領は「ロシア軍が住民の避難を妨害している」と主張しました。

ロシア軍はキエフの包囲に加わる軍の増強を進めるとともに各都市への攻撃を強めることで、ウクライナ側の戦意をそぐねらいがあるものとみられ、さらなる戦闘の激化も予想されます。

キエフ “人々が支え合って生活”

ウクライナの首都キエフに住む男性は、ロシアによる軍事侵攻が長期化しつつある中で、ボランティアが生活に困窮した人に食料を届けるなど、人々が支え合って生活している現状を明らかにしました。

ボグダン・パルホメンコさん(35)はロシアによる軍事侵攻のあともキエフ市内にとどまり、現地の状況を動画投稿サイトで発信し続けています。

NHKの取材に対してボグダンさんは11日、キエフの状況について「電気や水道、銀行などは動いていて、テレビ塔は破壊されたがテレビはインターネットでの同時放送で見ることができる」と話し、インフラには大きな影響は出ていないと説明しました。

一方、スーパーなどでは日用品などが次第に無くなっているほか、郵便局が閉まって年金を引き出せなくなるお年寄りもいて、中には、畑に咲いているチューリップを売って生活費を得ようとする人もいるとしています。

こうした中で、キエフではボランティアが生活に困窮した人に食料を届けるなど人々が支え合って生活しているといいます。

ボグダンさんは「疲れがたまってきました。ベッドに入っても1時間や2時間で起きてしまう」と精神的な疲れもたまってきていると話していました。

そして「今の戦争が終わっても、このままでは次の戦争が起きる。国連にせよ何にせよ、戦争を防ぐシステムをリセットする必要がある」と話し、国際社会は戦争を防ぐため一層努力すべきだと訴えました。

ハリコフから避難した男性「本当に地獄のようで恐ろしい」

ロシア軍の激しい攻撃が続くウクライナ第2の都市ハリコフから東部の都市ドニプロに避難した男性が日本時間の12日未明、NHKのインタビューに応じました。

日本語教師のボリス・モロズさん(36)は今月5日、両親とともにハリコフからドニプロに避難しました。

モロズさんは「家から300メートル先にあるビルが爆撃されて、毎日被害が大きくなり亡くなる人も増えていたのでボランティアの車で避難した」と当時の状況を話しました。

またドニプロの生活については「ハリコフに比べて普通の生活に近い。店にも食べ物がたくさんあり床屋や歯医者も営業している」と述べたうえで「今はアパートを無料で借りることができたり母親が歯医者に行ったときに無料になったりして、ウクライナ人どうしで助け合っています」と説明しました。

一方、現在のハリコフや東部のマリウポリの状況について「毎日ニュースを見たり友達から聞いたりしているがマリウポリとハリコフがいちばん破壊されていると思う。本当に地獄のような状況で恐ろしい」と話していました。

今後については「ドニプロに残る予定だ。ただ、もしロシア軍がドニプロに攻めてきたら、ウクライナ西部の街にはすでに多くの人が避難して住む場所がないので避難が難しくなるかもしれない」と話していました。