ロシア 北方領土で地対空ミサイルの訓練 日米をけん制か

ロシア国防省は北方領土に配備された地対空ミサイルシステム「S300」の訓練を行ったと発表し、軍事侵攻後、厳しい制裁をロシアに科したアメリカや日本をけん制するねらいがあると見られます。

ロシア国防省は北方領土に配備された地対空ミサイルシステム「S300」の訓練を行ったと10日、発表しました。

「S300」は半径400キロ以内に接近した戦闘機やミサイルを撃ち落とす能力をもつ対空防衛のための兵器で、訓練では空中にある数十個の目標をすべて撃墜したとしています。

ロシアのプーチン政権は軍事侵攻をきっかけに各国から厳しい制裁を科されたことに反発を強め、今月7日には「非友好的な国と地域」を公表し、日本やアメリカ、イギリス、EU=ヨーロッパ連合の加盟国、それに韓国や台湾などを含めました。

ウクライナへの軍事侵攻のさなかに北方領土で訓練を行った背景には、ロシアに制裁を科し圧力を強めるアメリカや日本をけん制するねらいがあると見られます。

松野官房長官「外交ルート通じて抗議」

松野官房長官は午後の記者会見で「3月11日に外交ルートを通じて、訓練はわが国の立場と相いれず受け入れられない旨、抗議した」と述べました。

そのうえで「北方四島や周辺水域でのロシアによる軍備の強化を含め、わが国周辺で軍の活動を活発化させている状況について、安全保障上の観点から重大な懸念を持って注視していることを申し入れた」と述べました。

林外相「事実関係を確認中 これまでも抗議」

林外務大臣は、記者会見で「現在、事実関係を確認中だ。これまでも北方四島におけるロシアによる軍備の強化については、わが国の立場と相いれず、受け入れられないと抗議してきている。北方領土におけるロシア軍の動向は、日頃から注視し、情報収集を行っているところであり、引き続き、適切に対応していきたい」と述べました。

元島民「領土問題がどんどん遠ざかる」

ロシア国防省が北方領土で軍事訓練を行ったと発表したことについて、北海道根室市の元島民からは「領土問題がどんどん遠ざかるような気持ちだ」という不安の声が聞かれました。

歯舞群島の勇留島出身で、千島歯舞諸島居住者連盟根室支部の角鹿泰司支部長代行(84)は、根室市内でNHKの取材に応じ「金融制裁を行う日本やアメリカへの反発だと思っている。訓練はおそらく威嚇であり、本当に撃つなんてことにはならないだろう」と述べました。

そのうえで角鹿さんは「新型コロナの影響が続く中、ウクライナ問題が起き、北方領土問題が二重三重にどんどん遠ざかるような気持ちだ。ただ、われわれ元島民や後継者はこの問題を手放すことはできない宿命にある。日本政府には力を込めて、動いてもらわなければならない」と述べました。