韓国大統領選 当選のユン・ソギョル氏とは 日韓関係どうなる?

9日投票が行われた韓国大統領選挙は、保守系の最大野党「国民の力」のユン・ソギョル(尹錫悦)氏が得票率で48.56%を獲得し、革新系の与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏を0.73ポイントの僅差で破って当選しました。

5年ぶりに保守政権となる見通しの韓国。
冷え込んだ日韓関係が改善する契機となるのでしょうか。

ユン・ソギョル氏とはどんな人物なのか?また、日韓関係の行方はどうなるのか?解説します。

ユン・ソギョル氏とは?

最大野党「国民の力」のユン・ソギョル氏は、首都ソウル出身の61歳。

両親が大学教授という家庭で育ち、名門のソウル大学で学んだユン氏は、司法試験にたび重なる挑戦の末に合格して検察官となりました。
保守系のパク・クネ前大統領やイ・ミョンバク元大統領をめぐる贈収賄事件などを徹底捜査した手腕が、革新系のムン・ジェイン大統領に評価され、2019年に検事総長に抜てきされました。

するとユン氏は、大統領の側近で法相に起用されたチョ・グク氏の疑惑を追及して辞任に追い込むなどした結果、政権との対立が深まり、去年3月に検事総長を辞任しました。

政権と真っ向から対じした姿が支持されて政界入りへの待望論が高まる中、最大野党に入党し、大統領選挙の公認候補に選出されました。

選挙戦ではムン政権を厳しく批判し「無能な政権を政権交代によって審判する。真の公正な社会をつくる」として、5年ぶりの政権交代の実現を訴えました。

対日政策 “懸案の包括的な解決を目指す”

現在の日韓関係については「ムン・ジェイン政権が国益を優先するのではなく、外交に国内政治を持ち込んだため、国交正常化以降、最悪の状態に陥った」と述べ、ムン政権の対日政策を批判しています。
そのうえで「価値と利益を共有して信頼を構築していく両国関係の新たな50年を描く」として、関係改善に意欲を見せています。

具体的には、首脳が相互に相手国を訪問する「シャトル外交」を再開し、慰安婦や「徴用」をめぐる問題、それに、半導体の原材料などの韓国向けの輸出管理を日本が厳しくした措置など、両国間の懸案の包括的な解決を目指すと強調しています。

一夜明け ユン氏 改めて関係改善進める考え示す

ユン氏は当選を受けて午前11時から記者会見を開き、冷え込んでいる日本との関係は未来志向で進めるとしたうえで「両国が互いに協力関係を築いていく過程で過去の歴史についても真相を究明して、互いが整理して解決する問題にひざをつき合わせて取り組む必要がある」と述べて、関係改善を進める考えを示しました。

日本側は

ユン氏の当選を受けて、日本側の反応です。

岸田首相「新政権と対話をしてみたい」

岸田総理大臣は「ユン次期大統領の選出を歓迎し、心よりお祝いを申し上げたい。国際社会が時代を画するような大きな変化の中に見舞われており、健全な日韓関係は、ルールに基づく国際秩序を実現し、地域や世界の平和と安定、繁栄のため不可欠のものだ。日米韓の連携も重要だ」と述べました。
そのうえで「1965年の日韓の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づいて、日韓関係を発展させていく必要がある。ユン次期大統領のリーダーシップに期待したい。日韓関係改善のために緊密に協力したい」と述べ、冷え込んでいる日韓関係の改善に向けて連携して取り組む考えを示しました。

また、記者団が日韓関係の改善に向けた方策を質問したのに対し「日韓関係は大変厳しい状況にあるが、このまま放置することはできない。国と国との間の約束を守るということは基本であり、日本の一貫した立場に基づいて健全な関係を取り戻すべく、新大統領や新政権と緊密に意思疎通を図っていくことが重要だ。今後、新政権の動きも見ていきたいし、新政権と対話をしてみたい」と述べました。

日韓議員連盟 額賀会長「冷たい日韓関係を元に戻したい」

超党派の国会議員でつくる日韓議員連盟の会長を務める自民党の額賀元財務大臣は、NHKの取材に対し「ユン氏の勝利に心からお祝い申し上げる。韓国側の議員連盟の幹部ともやり取りし、この選挙を契機に、これまでの冷たい日韓関係を元に戻したいということで一致した」と述べました。

また、額賀氏は「このところ『徴用』をめぐる問題や、慰安婦問題といった個別の課題に進展はなかったが、今後は前向きに話し合っていきたい。ウクライナなど国際情勢が極めて不安定な中、日米韓3か国の連携もしっかりしていきたい」と述べました。

公明 山口代表「日韓関係改善に向けて努力したい」

公明党の山口代表は、党の中央幹事会で「韓国国民の選択を尊重し、日韓関係改善に向けてともに歩むことができるよう努力したい。政権の姿が現れるまで、なおしばらく時間がかかるが、日本と韓国、アメリカも含めた結束が、地域の安定に必要不可欠だ。ヨーロッパの状況は国際秩序を揺るがしていて、アジアにも影響が及んでくることは必然だ。地域の安定と対話による物事の解決という道を切り開いていく役割を果たさなければならない」と述べました。

【政治部解説】日本政府 改善へ予断を許さないとの見方が大勢

<日本政府の受け止めについて>

政府内からは、比較的、好意的に受け止める声が聞かれます。

ユン氏は、選挙戦で、北朝鮮の核・ミサイル問題などへの対応で日米韓3か国での連携に意欲を示してきました。

日韓関係は、現在のムン政権の5年間で、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題や、慰安婦問題などをめぐって、国交正常化以降、最悪とも言われるほど、冷え込んでいるだけに、政権のスタンスが変わることへの期待感があるものと見られます。

<今後改善に向かっていくのか>

安全保障環境がいっそう厳しさを増す中、政府としては、韓国との関係は重要だとして、政権交代を機に関係の改善につなげたい考えですが、実際に改善に向かうのかは、予断を許さないという見方が大勢です。

政府内には「ユン氏は、革新系が第1党の国会や、選挙戦で二分した国内世論の影響も受けるため、路線の転換を進めるのは容易ではない」という指摘もあります。

また、ある外務省幹部は「これまで大統領選挙のあとは、互いに特使を派遣するなどして関係の構築を進めてきたが、現段階では、何も決まっていない」と話しており、両国の関係の厳しい現状がうかがえます。

政府としては「徴用」をめぐる問題で韓国側が適切な対応をとるのかなど、新政権の対応を慎重に見極めながら、関係改善を模索することになりそうです。

【国際部解説】関係改善の糸口 見いだすのは容易ではない

<日韓関係はどうなりそうか>

ユン氏は、首脳による「シャトル外交」を再開し、慰安婦問題や太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題、韓国向けの輸出管理を日本が厳しくした措置などを1つのテーブルにのせて包括的に解決することを目指すとしています。
韓国の政権交代は、現状を打開するきっかけになり得えます。

ただ、韓国において「日韓関係は『内政』でもある」と言われます。
「徴用」をめぐる裁判で日本企業の韓国国内の資産の「現金化」に向けた手続きが進む中、悪化した対日世論を説得し関係改善の糸口を見いだすのは容易ではなく、難しい局面が続くことも予想されます。

一方、核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮に対しては、制裁をテコに非核化を迫りながら、同盟国・アメリカや隣国・日本と協力して抑止力の強化を図りたい考えです。

もっとも、安全保障をめぐる日米韓3か国の協力が進む可能性がある半面、北朝鮮が態度を硬化させて南北関係が再び緊張するおそれも否めません。

日韓各地の反応

日本や韓国国内での反応です。

大阪のコリアンタウンでは日韓関係改善に期待の声

大阪 生野区にあるコリアタウンの近くでは、日韓関係の改善を期待する声が聞かれました。
近くに住む83歳の女性は「韓国籍の友達もたくさんいて、日頃から一緒に暮らしています。日本と韓国はお隣どうしなのでできるだけ仲よくやってほしいです」と話していました。

近くに住む在日韓国人3世の66歳の男性は「新しい大統領には日韓関係がよくなるようにしていってほしいです。また、韓国国内でも格差の問題があるので、そういう不満をなくすように努力してほしいです」と話していました。

大阪 和泉市から観光で訪れたという44歳と13歳の女性の親子は「韓国のアイドルやグルメなど韓国文化が好きで遊びに来ました。昔のことを引きずってここまで来てしまっていますが韓国を含め、どこの国とも仲良くしてほしいです」と話していました。

韓国メディア「不支持の国民の声に耳を傾けよ」

韓国の有力紙・中央日報は10日の社説で、大統領選挙で最大野党のユン・ソギョル氏が史上まれに見る僅差で勝利したことについて「自身を支持しなかった半数の国民の声に耳を傾け、国政に反映させなければならない」と指摘しています。

また、通信社の連合ニュースはこのところ10年ごとに起きていた革新・保守の政権交代が5年で起きたとして「それだけ市民の間で『変えてみよう』という機運が高まったと解釈できる」と伝えています。

一方、革新系のハンギョレ新聞は、今の与党「共に民主党」が国会で過半数を占めていることに触れたうえで「少数与党の政局では国政運営の必須条件である議会に対する政治力を見せなければならない」と指摘しています。

ソウル市民反応

首都ソウルでは不動産価格の高騰への対応などに期待する声が聞かれました。
ユン氏に投票したという20代の男子大学生は「結果に満足しています。私たち若い世代が抱える就職や不動産の問題などを解決するよう取り組んでほしい」と話していました。

同じくユン氏に投票した60代の男性は「1ポイントも差がなく非常に僅差の結果でこれが世論だと思いました。アメリカをはじめ、日本や中国など周辺の国とよい関係を築いて、バランスよく外交を進めてほしい」と話していました。

30代の会社員の男性は「不動産の問題はもちろん、ウクライナ情勢を受けて、安全保障政策にしっかり取り組んでもらいたいと考えています」と話していました。

一方、与党のイ氏に投票したという食堂で働く60代の女性は「結果は残念ですが、コロナが早く落ち着いてマスクをせずに生活できる日を取り戻せるようにしてほしい」と話していました。