ウクライナとロシア “複数地域で住民避難 進めることで合意”

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を続ける中、ロシアとウクライナは9日、北東部のスムイや東部のマリウポリなど複数の地域で住民の避難を進めることで合意したとしています。
一方、ロシアとウクライナは、トルコ政府の仲介で侵攻が始まってから初めてとなる外相会談を10日に行う予定ですが、事態の打開につながるかは不透明です。

ロシア軍はウクライナ各地で攻撃を行い、アメリカ国防総省は、首都キエフを包囲するため主に3方向から部隊を前進させていると指摘するなど、攻勢を続けています。

ロイター通信によりますと、これに対しウクライナ内務省の高官は、ロシアは交渉の前に少なくとも何らかの勝利をあげようと必死で、標的になる可能性が最も高いのは、首都キエフと東部の要衝マリウポリだと分析しました。

そのうえで「ウクライナは今後7日から10日間、攻撃に耐える必要がある」としています。

ロシア国防省は、9日も首都キエフを含む5つの都市などで避難ルートを設置したとし、ウクライナのベレシチュク副首相は、このうち、ウクライナ北東部のスムイからウクライナ中部ポルタワのルートや東部要衝のマリウポリからウクライナ南東部のザポリージャのルートなど複数の地域でロシア側と避難を進めることで合意したと明らかにしました。

ウクライナ側は、前日の8日に北東部のスムイからおよそ5000人が避難したとしていますが、これ以外のルートは、安全上の懸念などから避難は実現しませんでした。

一方、ロシアとウクライナは10日に、トルコ政府の仲介で、軍事侵攻が始まってから初めてとなる対面での外相会談を行う予定です。
また8日には、ロシアのプーチン大統領がイスラエルのベネット首相と3回目となる電話会談を行い、交渉の現状などについて意見を交わしていて、停戦に向けた仲介の動きも出始めています。

こうした中、ウクライナのゼレンスキー大統領の与党は8日、声明を出し、NATO=北大西洋条約機構はウクライナの加盟を当面は受け入れる準備ができていないと指摘し、アメリカや近隣のトルコに政治や軍事面での安全の保証を求めるとともに、ロシアも脅威をもたらさないことを保証すべきだとしています。

ウクライナがこれまで目指してきたNATO加盟には、当面は必ずしもこだわらない考えを示したものと見られます。

ただ、ロシアのプーチン大統領はこれまで、停戦の条件として、ウクライナの「中立化」と「非軍事化」などを強く要求していることから、交渉の見通しは厳しいとみられ、事態の打開につながるかは依然、不透明です。

米のロシア産原油輸入禁止 中国 ロシアとの貿易続ける考え

アメリカが8日、ウクライナに軍事侵攻を続けるロシアへの追加の経済制裁としてロシア産の原油などの輸入禁止を発表したことについて、中国外務省の趙立堅報道官は9日の記者会見で「中国は国際法に基づかない一方的な制裁に断固反対する」と述べて批判しました。

そのうえで「中国とロシアは良好なエネルギー分野の協力関係を維持しており、原油や天然ガスを含む正常な貿易協力を進める」と述べ、ロシアとの貿易をこれまでどおり続ける考えを重ねて示しました。

中国は国別ではロシア産原油の最大の輸出先で、先月4日に行われた両国の首脳会談では、ロシアから中国向けに新たな天然ガスの供給でも合意しています。

ウクライナ ライ麦などの輸出禁止を発表 小麦は含まれず

ウクライナの農業担当相は、ライ麦やきびなどの穀物や、砂糖、塩、牛肉の輸出を禁止したと発表しました。

この中に小麦は含まれていません。

ウクライナの人たちはライ麦を使ったパンを主に食べているため、自国の食料を確保するねらいがあるものとみられます。

ウクライナは穀物の生産が盛んな農業国で、世界の穀物価格への影響も懸念されます。

隣国ルーマニアの一時避難所 子どもたちの心を和ませる

ウクライナの隣国、ルーマニアの一時避難所では、地元のボランティアが、逃れてきた子どもたちのためにおもちゃを用意したり一緒に遊んだりして、心を和ませています。

ウクライナとの国境からおよそ40キロ離れた、ルーマニア北部にあるホテルでは、逃れてきた人たちのために宴会場を一時避難所として開放しています。

この避難所には8日、およそ200人が訪れ、このうちおよそ15%を子どもが占めています。

避難所を運営するボランティアたちは、避難した子どもたちに、次の目的地に向かうまでの間の短い間でも楽しく時間を過ごしてもらおうと、避難所の一角に地元の人たちが寄付したおもちゃを置いて自由に遊べるようにしました。

またボランティアたちは、子どもたちと一緒に歌を歌ったり、専用の絵の具を使って顔に絵を描いたりして、子どもたちを喜ばせていました。

頬にハートと花の絵を描いてもらった女の子は「楽しいです。ここは楽しくて気に入りました」と話していました。

避難所を担当するナタリー・マセチュコさんは「親たちが笑顔になることができない中、子どもたちは何が起こっているのか分かっていないので、私たちが子どもたちに笑いを提供したい」と話しています。

ウクライナからは男性の出国が制限されているため、避難する人の多くは女性や子どもで、中でも子どもたちの心のケアが課題となっています。