ロシア ウクライナ軍事侵攻 日本でも影響避けられない事態に

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、遠く離れた日本でも避けられないものとなりつつあります。各地の幅広い分野に影響が出始めています。

ウニ価格2倍に さらなる高騰懸念 茨城 ひたちなか

ひたちなか市の「那珂湊おさかな市場」にある水産会社では、ロシア産のバフンウニを仕入れて販売しています。

水産会社によりますと、ロシア産のバフンウニの現在の価格は、およそ200グラムで7800円と、例年のおよそ2倍になっているということです。

ウクライナへの軍事侵攻でロシアへの経済制裁が強まる中、水産会社では入荷がとどこおり、品薄の状況が続いているということです。

このため水産会社では、今後価格がさらに高騰するのではないかと懸念しています。

水産会社の西野幸男専務は「ロシア産のウニは、いつ市場からなくなってもおかしくない状況で、それに伴って北海道産やカナダ産のウニも価格がさらに跳ね上がる可能性がある。今後はロシア産の紅サケやイクラなどにも影響が出るのではないか」と話していました。

ガス価格高騰 銭湯の経営圧迫 奈良

ウクライナへの軍事侵攻で、エネルギー輸出国であるロシアから原油や天然ガスの供給が滞ることへの懸念から、世界的に価格が高騰しています。

こうした事態を受けて、奈良市京終にある銭湯では、湯を沸かすための燃料費のさらなる上昇を懸念しています。

この銭湯では、ガスで湯を沸かしていますが、2月のガス代はおよそ50万円と、営業日数がほぼ変わらない前の年の同じ月と比べて、6割以上、増加しました。
新型コロナの感染拡大で利用客数が減少傾向にあることに加えて、入浴料金は奈良県が決めているため、事業者の判断では値上げができないことから、経営の圧迫要因になっているということです。

このため、県内14の事業者でつくる組合は今後、県に対して料金の値上げを求めていくことを検討しているということです。

組合の理事長で店主の山崎美隆さんは、「今の国際情勢をみていると、燃料費の上昇は止まりそうになく、値上げするしか手はないのではないかと考えています。われわれの日常にも大きな影響が出ているので、早く収まってほしい」と話していました。

重油価格上昇で農業経営も圧迫 奈良 平群町

奈良県平群町の「平群温室バラ組合」では、4戸の農家が農業用ハウスで切り花用のバラを年間およそ250万本、大阪などに出荷していて、学校の卒業式や入学式などの行事が相次ぐ今月から来月にかけてが出荷の最盛期となっています。

このうち、組合員の中筋里美さんは、出荷を控えた、白やピンクのバラの手入れに追われています。
バラの栽培には最低で18度、苗の育成には24度以上を保つことが必要で、例年10月から翌年の5月までは暖房用の重油が欠かせません。

ただ、原油価格上昇のため今月の時点で暖房で使う重油の価格が去年よりも3割ほど高くなっているということです。

ウクライナ情勢の悪化に伴う原油の先物価格の高騰を受け、組合員の間では重油の価格がさらに上がれば今後、経営が圧迫されるという懸念が出てきているといいます。

中筋さんは「重油の値段が上がったとしても、顧客のことを考えると、出荷量を減らしたり、品質を落としたりすることはできず、今後の経営が不安だ。ウクライナへの侵攻が早く解決して欲しい」と話していました。

エサ代高騰 動物園も苦境 愛媛 砥部町

愛媛県砥部町にある愛媛県立とべ動物園は、およそ150種類、650頭の動物を飼育していて、えさの中でもっとも消費が多い干し草は年間およそ120トンに上ります。

この動物園では5種類の干し草すべてをアメリカからの輸入に頼っていますが、原油高に伴う輸送費の高騰などで干し草1キロあたりの価格はことし1月に10%から17%値上がりしました。

このところの急激な原油価格の高騰が反映されれば、4月以降の価格改定でさらに値上がりすることを懸念しています。

ほかにも野菜や果物などの調達コストも上昇していて、年間のえさ代はおよそ5000万円と、コロナ前と比べて500万円以上増える見通しだということです。

飼育している動物の健康を保つためには量を減らすことは難しく、近隣の農家からみかんや野菜を寄付してもらうなどしてしのいでいます。

コストはかさむ一方、来場者数は、コロナの感染拡大以降、3割減少して厳しい運営が続いています。

愛媛県立とべ動物園飼料担当の池田敬明さんは「エサを減らすことはできないので、買える物やあるもので何とか頑張っています。新型コロナで客が減っていますが感染対策は十分にしているので安心して来て欲しいです」と話していました。

中古車部品の輸出会社 休業を検討 大阪 北区

大阪・北区にあるロシアに中古車の部品を輸出する会社は、現地との送金が出来なくなり始めていて、先行きの不透明さから休業を検討しています。

大阪・北区で貿易会社を営む岩佐毅さんは、中古車の部品を月に100トンほど輸出するなどソ連時代から50年近くにわたりロシアとの貿易を専門にビジネスを続けています。

しかし、経済制裁で国際的な決済ネットワーク「SWIFT」からロシアが締め出されるなどの影響で、岩佐さんの会社では、現地の銀行を通じての代金の回収が困難になり始めています。

さらにロシアの通貨、ルーブルが急激に下落してルーブル安となっている影響でロシア国内での輸入品の価格が上がり、日本から輸出しても買い手がつかなくなるリスクも出てきているということです。

このため岩佐さんは、今後の先行きが見通せないとして事態が落ち着くまでの間、休業することも検討しているということです。

8日も、取引先のロシアの輸入販売会社に電話して送金の時期などについて尋ねましたが、先方からの回答は「レートが大きく動いているので落ち着いたら送金する」というものにとどまり、情勢の混乱がうかがえました。

岩佐さんは「ソ連崩壊を経験しているので、ロシアとビジネスをするとこういうことがあるというのは覚悟していたが、ロシアとウクライナはなんとか穏便に話をして平和的な解決をしてほしい」と話していました。