プーチン大統領 “ウクライナ 核兵器を取得しようとしている”

ロシアのプーチン大統領はウクライナ側との交渉をめぐり、ウクライナが核兵器を取得しようとしていると一方的に主張したうえで、「非軍事化」などが不可欠だと強調しました。
双方は停戦に向けた3回目の協議を7日にも行う見通しを示しましたが、プーチン大統領は強硬な姿勢を崩さず、依然、厳しい交渉が続くとみられます。

ロシア軍はウクライナ各地で攻撃を続けていて、国連人権高等弁務官事務所は5日、民間人の犠牲者は351人に上ると発表し、市民の犠牲が広がっています。

そして、ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部マリウポリでは、前日の5日は、一時停戦が実現できませんでしたが、6日、地元の当局は、避難ルートを設置して市民の避難を開始すると発表しました。

一方、プーチン大統領は今月8日の国際女性デーを前に5日、女性たちとの会合に参加し、今回の軍事作戦について、「間違いなく厳しい決断だった」と述べたうえで、ウクライナが欧米側から軍事支援を受け、ロシアの脅威となってきたからだとして理解を求めました。

そして、「ウクライナは今、核兵器を取得して、核保有国の地位を得ようとしている。見過ごすわけにはいかない」と主張したうえで、ウクライナ側との交渉では「非軍事化」などが不可欠だと強調しました。

ロシアの複数の国営メディアは6日、情報筋の話として、ロシア軍が掌握した北部のチェルノブイリ原子力発電所で、放射性物質をまき散らすいわゆる「汚い爆弾」を製造しようとしていたなどと一斉に報じています。

ロシアとしては国際社会で批判の声が高まる原発への攻撃や掌握したことを正当化するとともに、核兵器疑惑を持ち出してウクライナの「非軍事化」などの要求を強める可能性があるとみられます。

双方の代表団は停戦に向けた3回目の協議について、7日にも行う見通しを示しましたが、プーチン大統領は強硬姿勢を崩さず、依然、厳しい交渉が続くとみられます。

ロシア軍 海上輸送路制圧がねらいか

ロシア軍によって掌握されたとも伝えられているウクライナ南部のヘルソンは、黒海にそそぐドニエプル川の河口付近にある、人口およそ30万人の都市です。

黒海に面したウクライナ最大の港湾都市オデッサと、ロシア軍の拠点となっているクリミア半島の中間に位置していることから、ロシア軍がヘルソンからオデッサに進軍し、黒海の貿易拠点の制圧を目指しているのではないかと指摘されています。

ロシア軍が同様に攻勢を強めている東部のマリウポリもアゾフ海に面した貿易拠点で、ウクライナの貿易の要衝を制圧して海上輸送路を絶つことで、さらに圧力をかけるのではないかという見方が出ています。

プーチン大統領 イスラエル首相とモスクワで会談

ロシア大統領府は5日、プーチン大統領が、イスラエルのベネット首相とモスクワで会談したと明らかにしました。

両政府は、会談の詳細を明らかにしていませんが、イスラエルのメディアは会談は3時間におよんだと伝えていてベネット首相はその後、ウクライナのゼレンスキー大統領とも電話会談を行うなど、ロシアとウクライナの仲介に向けて動いたとみられています。

また、ロシア大統領府はプーチン大統領がトルコのエルドアン大統領と6日に電話会談する予定だとしています。

これについてトルコの大統領首席顧問は地元メディアに対して「エルドアン大統領は関係各国と活発に外交を展開している。あらゆる攻撃を停止し、交渉に参加するよう、すべての当事者、特にロシア側に呼びかけ続ける」として、ロシアとウクライナの仲介に意欲を示しています。

WHO「医療提供に重大な影響生じている」

WHO=世界保健機関はウクライナでは、戦闘の激化を背景に物資が不足するなどして、病気やけがの治療を十分に受けられない事態が起きていると指摘しています。

WHOが、5日公開した報告書によりますと、ウクライナでは、民間人を含む多数のけが人が出ている一方、戦闘の激化に伴う物流の停滞やインフラの破壊などにより、医療の提供に重大な影響が生じているとしています。

医療用の物資やスタッフの不足も深刻で、今後は戦争によるけがだけでなく、がんや糖尿病といった病気の治療が中断したり、子どもの急な病気に対応できなかったりして、患者が死亡する事態も懸念されるということです。

また国外に避難する人がことし7月までに400万人にのぼる可能性もあるとしていて、大規模な移動によって新型コロナをはじめとする感染症にかかるリスクや、避難先での医療の受け入れ態勢も課題になるとしています。

さらに、戦争によるストレスでPTSD=心的外傷後ストレス障害などのリスクも高まっているとしていて、心理的なケアも喫緊の課題だと指摘しています。