エッセンシャルワーカーの濃厚接触者 待機短縮見送る事業者も

「エッセンシャルワーカー」が新型コロナウイルスの濃厚接触者になった場合の待機期間が、一般の人より短く設定されてまもなく2か月です。
短縮するには事業者がみずから検査して管理することが条件となりますが、キットの配布や検査結果の確認が難しいとして、短縮を見送る事業者も少なくありません。

新型コロナに感染した人の濃厚接触者は自宅などでの待機が求められますが、国は1月14日、検査で2回陰性が確認されることを条件に、エッセンシャルワーカーの待機期間を一般の人に比べて短くできることにしました。

現在は一般の人の7日に対し、エッセンシャルワーカーは5日とされていて、医療機関などで活用が進む一方、対応が難しいという声も出ています。

NHKが先月、首都圏の主な鉄道・バス会社、それに新型コロナの影響で減便などが出た各地の会社の合わせて28社に取材したところ、待機期間を5日にする対応をとったのは3社でした。

短縮しない理由として、検査キットの不足のほか、自宅待機している社員に検査キットをすぐに配布することや会社が検査に立ち会って結果を確認することの難しさなどが挙げられ、態勢の整備が課題として浮かんでいます。

検査キットの生産と輸入は増加していて、厚生労働省は「検査キットの不足は解消されてきている。検査キットを事前に郵送したり、ビデオ通話で結果を確認するなど、態勢づくりを検討してほしい」としています。

検査キットの配布や結果の確認がハードルに

東京や神奈川で営業する小田急バスは、武蔵野市の営業所で新型コロナの感染者と濃厚接触者が合わせて10人出たため運転手が不足し、今月1日からこの営業所の平日のバスを一日98便運休しています。

運休が出ている路線の利用者からは「朝利用した際、本数が減ったために車内が混雑して“密”になってしまっていたので困ります」という声が上がる一方「感染者が多い状況が続いているので、バスの運転手さんも大変だと思います。多少の不便はしかたがないです」という声も聞かれました。

小田急バスでは濃厚接触者となった社員の待機期間を5日にできないか検討しましたが、1300人以上の社員がいて濃厚接触者全員に検査を行える態勢を整えるのは難しく、検査キットの精度に不安もあったため、見送ったということです。

担当者は「検査キットを配る方法や会社として誰がどのように検査結果を確認するかがハードルとなった。別の営業所から応援を出すことは難しく、しばらくは減便せざるをえない」としています。

濃厚接触者の社員 マイカーで検査も

エッセンシャルワーカーが働く事業者が、みずから検査を実施するためにはさまざまな工夫が必要になっています。
熊本市に本社がある「熊本都市バス」は、新型コロナの感染者や濃厚接触者が相次いだため、1月下旬以降、一部の路線で減便を行っています。

国がエッセンシャルワーカーの待機期間の短縮を決めたあと、これ以上の減便を防ぐためすぐに卸売りメーカーと直接交渉し、当時品薄だった検査キットを確保しました。

熊本都市バスの坂元泰輔管理課長は「人づての紹介で卸会社にたどりつき、『現状残っている分は最後です』と言われる中で、手に入れました」と話していました。

実際に検査を行う際には、濃厚接触者となった社員にマイカーで本社の駐車場に来てもらう対応をとっています。

検査キットを配る手間が省け、マイカーの中であれば接触を避けることができるのが利点で、管理職が車の外から検査の様子を確認します。

濃厚接触者となった社員がマイカーを持ち、駐車する広いスペースがあるため可能だったということで、坂元課長は「感染対策を徹底するためにこの方法にした。濃厚接触者が早く戻るとそれだけダイヤが回る。現場は人が少なく大変なので、1人でも早く復帰できるのは運行を管理するうえで違う」と話していました。