被爆者男性「悲しく残念 腹立たしい」ウクライナ侵攻 核問題で

ウクライナへの侵攻をめぐってロシアのプーチン大統領が核兵器の保有を誇示するような姿勢を示していることや与野党の一部から非核三原則の見直しなどをめぐる発言が相次いでいることについて、都内に住む被爆者の男性は「二度と被爆者を作るなと世界に訴え続けてきたが、伝わっていなかったことが非常に悲しく、残念で、腹立たしく思う」と話しています。

東京 稲城市に住む濱住治郎さん(76)は広島の原爆で父親を亡くし、自身は母親のおなかの中で被爆した「胎内被爆者」です。

日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会の事務局次長を務めていて、3年前の2019年には、国連本部で開かれたNPT=核拡散防止条約をめぐる会合で、各国の代表を前に演説し、核兵器廃絶を訴えました。

濱住さんは今回のロシアによるウクライナ侵攻について「日々、子どもたちが亡くなったとか、家族で国外へ逃れたという報道を見聞きすると、77年前の日本のことを思います。77年たっても父のことは忘れられません。いったい誰に人の命を奪う権限があるのか。絶対に許せません」と話していました。

そして、ロシアのプーチン大統領が核兵器の保有を誇示するような姿勢を示していることについては「私たちは二度と被爆者を作るなと世界に訴え続けてきましたが、伝わっていなかったことが非常に悲しく、残念で、腹立たしく思います」と話しました。

そして、与野党の一部からアメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策や非核三原則の見直しをめぐって発言が相次いでいることについては「私たち被爆者にとって、核による抑止とか核の傘という考え方は、8月6日と9日のキノコ雲以外の何物でもないのです。とても耐えられない思いです。各国が核を1つずつ持てばいいというような話もよく出てきますが、それは永遠に人間を不安に陥れ、平和な世界をもたらすものではない。戦争被爆国として日本が先頭に立って、核兵器をなくすことを呼びかけていくべきだ」と訴えました。

そのうえで「原爆がもたらした本当の被害を、世界の人、特に政治家や指導者に認識してほしい。戦争が始まったことで原爆に行き着いた私たち被爆者としてはどう平和な社会を築いていくのかということを若い人たちとともに取り組んでいきたい」と話していました。