ロシアのウクライナ侵攻 フェイク動画にだまされないためには

ウクライナへのロシアの軍事侵攻を巡って現地の緊迫した映像がSNSでも伝えられています。
そうした中には真偽が定かでない動画も含まれています。どう対応すればよいのでしょうか。

何がフェイクなのか見分けがつかない

頭上を高速で通過する戦闘機などが写った動画。大阪の10代の学生がフリーの編集ソフトで作ったCGで、不用意な情報の拡散への注意を呼びかけるために作ったそうです。

制作過程も写っています。

(SNSの投稿)
「手ブレとかがまじでリアルだから信じちゃうよこんなの」
「特殊な事案の動画や画像は簡単にいいねRTしたくなるけど、いったん様子見た方が良さそうね」

(動画を作った学生)
「アマチュアでもそれらしい映像が制作できるため、不用意な情報の拡散には気をつけてほしいと注意喚起の意味も込めて投稿しました」

疑義のある投稿が見られる

私たちがSNSを調べてみると、今回のロシアの軍事侵攻に関係するかのような動画とそっくりな動画が2016年にも投稿されていました。

誰もがフェイク動画を作れてしまう

国立情報学研究所の越前功教授は、誰もが簡単にフェイク動画を投稿できる時代になり、その中で画像処理の技術に詳しい人が増えていることもこうした事態を引き起こしていると強調します。
(国立情報学研究所 越前功教授)
「この2、3年で動画の加工を違和感なく行えるツールが広まりました。その結果、特別な技術がない一般のSNS利用者でも簡単にフェイク動画を投稿できるようになりました。これまでも国や団体がフェイク動画を投稿することは往々にしてありましたが、今回のような状況はこれまでになかったものだと言えます」
「また『ディープフェイク』と呼ばれるAIを使った技術でフェイク動画を作成する利用者までいて、専門家でも動画が加工されたものなのかを判断することが難しくなっています」

偽動画を拡散させないためには

ではSNSでフェイク動画を拡散しないために私たちが注意すべきことは何なのでしょうか。メディアリテラシーやSNSでの情報発信のあり方に詳しい桜美林大学の平和博教授に聞きました。
平教授によりますとフェイク動画の発信者にはさまざまな立場の人がいると指摘します。主なタイプは次のとおりとしています。

【プレーヤー】
国や軍など戦略を考えて、相手方を混乱させたり、国際社会に正当性を訴えたりする目的を持っています。

【便乗組】
プレーヤーの発信に便乗して、おもしろ半分で動画を投稿したり、ほかの利用者からの反応で自己承認欲求を満たそうとしたりします。

そのうえでフェイク動画にだまされないための注意点を3つあげます。
1 一呼吸を置く

偽の動画の発信者は動画を共有してもらうために見た人が「怒り」や「驚き」といった感情を抱くような工夫をしています。一呼吸を置いて、気持ちを落ち着けることが大切です。

2 発信者が誰かを確かめる

動画の真実性を確かめるため、発信者は信頼できるか、プロフィールや過去の投稿を確認します。

3 動画を検索する

時間があれば、過去にその動画がネット上に出回っていないか自分で検索をしてみたり、専門家がファクトチェックを行っていないかを調べたりするのが有効です。偽の動画は繰り返し使われることも多いです。これまでの戦争や紛争でも相手を混乱させたり士気を下げたりする手段として、偽の情報の拡散が行われていました。

平教授はSNSの利用が偽の情報を拡散させるための戦略の1つに加わったと指摘します。

(桜美林大学 平和博教授)
「例えば第2次世界大戦ではラジオやビラなどが標的への情報戦の手段でした。SNSは共有する機能が強いという特徴があるので、ユーザーは動画が信用できるものとわかるまでは安易に共有しないことが大切です。偽の動画を拡散すると、状況をより混乱させることに加担してしまう可能性があります」

情報が錯そうする中、フェイク動画にだまされないことを意識したSNSの利用が求められています。