ロシアとウクライナの会談 交渉継続合意も停戦実現楽観できず

ロシア軍がウクライナに侵攻してから初めてとなる、ロシアとウクライナの代表団による会談が行われ、双方は交渉を継続していくことで合意しました。
しかし、双方の主張の隔たりは大きく停戦が実現するかは楽観できない情勢です。

ウクライナでは、ロシアによる軍事侵攻が各地で続き、民間人も含めて犠牲者が増えています。

こうしたなか、ロシアとウクライナの代表団が28日、ロシア軍の侵攻が始まってから初めてウクライナと国境を接するベラルーシ南東部でおよそ5時間にわたって交渉にあたりました。

ウクライナ側は即時停戦と軍の撤退を求めているのに対し、ロシア側はウクライナの非軍事化と中立化を要求していて、双方が歩み寄りを見せるかが焦点になっています。

交渉のあとロシア代表団のトップのメジンスキー大統領補佐官は「あらゆる議題が詳細に話し合われ、いくつかの点では共通の土台を見いだせる」と述べ、双方がいったん帰国し、数日以内に再びベラルーシとポーランドの国境地帯で交渉する見通しを明らかにしました。

一方、ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問もツイッターで、「ロシアから突きつけられていた最後通ちょうは無くなった」として一定の進展があったことを示唆しました。

ただ、「交渉は難しい。ロシア側は自分たちが始めた破壊的なプロセスにこだわっている」として、ロシアが強硬な姿勢を崩さず双方の主張の隔たりが大きいことをうかがわせていて、今後の交渉が停戦につながるのかなお楽観できない情勢です。

プーチン大統領 停戦条件はウクライナの非軍事化と中立化と強調

ロシアのプーチン大統領はフランスのマクロン大統領と電話会談を行い、ウクライナでの停戦について、あくまでもウクライナの非軍事化と中立化が条件であることを強調しました。

これに対してマクロン大統領は、攻撃をやめて即時停戦を実現することの必要性を訴えたということです。

ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領は28日、電話会談を行い、ロシアが軍事侵攻を続けているウクライナの情勢について意見を交わしました。

ロシア大統領府によりますと会談でプーチン大統領は停戦の条件について「ウクライナ国家の非軍事化と、中立的地位の確保など、ロシアの安全保障上の利益が無条件に考慮された時にのみ可能だと強調した」として、あくまでもウクライナの非軍事化と、NATO=北大西洋条約機構の加盟阻止につながる中立化を求めていく姿勢を示しました。

またウクライナでロシア軍が民間人を脅かしたり民間の建物を攻撃したりしてはいないと主張しました。

一方、フランス大統領府によりますと、マクロン大統領は、ウクライナへの攻撃をやめて即時停戦を実現することの必要性を訴えたということです。

両首脳は今後も連絡を取り続けることで一致したということですが、プーチン大統領の強硬な姿勢が変わらない中で停戦が実現するかは依然、不透明です。

米国防総省の高官 “ロシア軍 数日のうちにキエフの包囲ねらう”

アメリカ国防総省の高官は28日、記者団に対し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について最新の分析を明らかにしました。

それによりますとロシア軍はウクライナの国境周辺に展開していた戦闘部隊のうち、これまでに75%近くの戦力をウクライナ国内に投入したほか、380発以上のミサイルを発射したということです。

そしてロシア軍は首都キエフに向けてこの1日で5キロ前進し、キエフから北におよそ25キロの地点にいるということです。

この高官はキエフへの侵攻は依然としてロシア軍の主要な作戦だとして、今後、さらに前進を続け、数日のうちにキエフを包囲しようとしていると指摘しました。

このほかの都市ではロシア軍がウクライナ第2の都市のハリコフを狙って激しい戦闘となっているほか、東部ドネツク州のマリウポリへの侵攻も試みていますが、いずれも制圧できていないということです。

さらにウクライナの空域でも攻防が続いていて、ロシア軍はウクライナ全土の制空権を奪えておらず、ウクライナ軍の航空機やミサイル防衛システムは維持されているとしました。

一方、一部のメディアがアメリカ政府関係者の話としてウクライナと国境を接するベラルーシがロシア軍を支援するためウクライナへの部隊の派遣を準備していると報じたことについて、「ベラルーシ軍が準備を整えたりウクライナに向かっていたりする兆候はない」と述べました。

またロシアのプーチン大統領が27日、国防相などに対して、核戦力を念頭に、抑止力を特別警戒態勢に引き上げるよう命じたことについて「われわれは監視を続けているが、プーチン大統領の命令を受けた具体的な動きはまだない」と指摘しました。

松野官房長官「高い関心持って注視」

松野官房長官は、閣議のあとの記者会見で「わが国としても、ロシアとウクライナ両国の交渉の行方を高い関心を持って注視している。今回のロシアによるウクライナへの侵略は力による一方的な現状変更の試みで、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反だ。断じて許容できず厳しく非難する」と述べました。

その上で「困難に直面するウクライナの人々に対する支援として、すでに供与する用意があると表明した、少なくとも1億ドル規模の借款に加え、1億ドルの緊急人道支援を行っていく考えだ。これらはきのうの日ウクライナ首脳電話会談で、岸田総理大臣からゼレンスキー大統領に伝達され、高い評価と深い感謝の意が表された」と述べました。