岸田首相 ロシアの特定銀行締め出す措置で国内への影響抑制を

ウクライナ情勢をめぐり、岸田総理大臣は、参議院予算委員会で、SWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークから、ロシアの特定の銀行を締め出す措置によって、国内の金融機関や中小企業が受ける影響について、実態を確認したうえで民間への影響をできるかぎり抑えていく考えを示しました。

参議院予算委員会で岸田総理大臣は、SWIFTと呼ばれる国際的な決済ネットワークからロシアの特定の銀行を締め出す措置によって、国内の金融機関や中小企業が受ける影響について「資金決済の代替ルートの確保など、具体的な案件について一つ一つ丁寧に実態を確認していく。そのうえで、必要となる対応を丁寧に考え、民間における影響をできるだけ抑えるべく政府としても協力していきたい」と述べました。

また、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ウクライナの代表団がロシアの代表団と会談することで合意したと明らかにしたことについて、岸田総理大臣は「話し合いの動きがあることは承知しており、注目していきたい」と述べました。

そのうえで「会談と並行して侵略が進み、武力行使が行われ、多くの方々の命が奪われている事態を深刻に受け止めて、日本としてはこうした行為は決して許すことができないという強い意思を行動として示すことが重要だ」と述べました。

北方領土元島民らの墓参や「ビザなし交流」

さらに、岸田総理大臣は2年連続で中止となっている、北方領土の元島民らによる墓参や「ビザなし交流」などの北方四島との交流事業の実施の見通しを問われたのに対し「人道的な見地からの取り組みは大切にしなければいけないが、いまの状況を考えるとなかなか展望を申し上げることは難しいのが現実だ。冷静に考えられるような状況に変わっていくことを期待したい」と述べました。

新たな国家安保戦略を策定へ

また、ウクライナ情勢に関連して岸防衛大臣は、政府が年末までに改定する方針を示している国家安全保障戦略をめぐり「ロシアによるウクライナ侵略は、わが国の安全保障の観点からも、決して看過できる問題ではない。力による一方的な現状変更をとりわけ東アジアで許すことはならない。今回のウクライナ侵略事案を踏まえて、新たな国家安保戦略を策定していく」と述べました。

安倍元首相の考えは

一方、岸田総理大臣は、自民党の安倍元総理大臣がアメリカの核兵器を同盟国で共有して運用する政策をタブー視せずに議論すべきだという考えを示したことについて「平素から自国の領土にアメリカなどの核兵器を置き、有事には自国の戦闘機などに核兵器を搭載、運用可能な体制を保持することで、アメリカの抑止力を共有する枠組みを想定しているならば、非核三原則を堅持するわが国の立場から考えて認められない」と述べました。

旧優生保護法の不妊手術の判決については

また、旧優生保護法のもとで不妊手術を強制された人たちが国を訴えた裁判で、2審の大阪高等裁判所が国に賠償を命じる初めての判決を言い渡したことをめぐり、岸田総理大臣は「政府として真摯(しんし)に反省し、心から深くお詫びを申し上げる」と陳謝したうえで、裁判への対応については「関係省庁で判決内容の精査の結果を踏まえて適切に対応していきたい」と述べました。

5人の総理大臣経験者の書簡は

さらに、岸田総理大臣は5人の総理大臣経験者が、東京電力・福島第一原発の事故で多くの子どもが甲状腺がんに苦しんでいるなどとした書簡をEU=ヨーロッパ連合に送ったことをめぐり「今月15日にEUのフォンデアライエン委員長との電話会談の中で、書簡は科学的事実に基づかない誤った内容が含まれることを説明した。いわれのない差別や偏見を助長することが懸念されることから適切ではない」と述べました。