【詳しく】ロシア ウクライナに軍事侵攻 戦況は(2/28)

ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻。
子どもを含む300人以上が死亡したとも伝えられています。

ロシア軍は、どこまで侵攻しているのか。
各地で続くウクライナ軍の抵抗はどうなっているのか。

詳しく解説します。

ロシア軍はどこまで侵攻しているのか?

アメリカのシンクタンクが公開した地図です。赤い部分はロシア軍が掌握したとされる地域です。

ロシア国防省は27日、ウクライナ軍のミサイルなど、これまでに1067の標的を破壊したと発表しています。
また、アメリカの衛星会社「マクサー・テクノロジーズ」が27日午前に撮影した写真には、首都キエフに向かうロシア軍の車列が写っています。

撮影された場所は、キエフから北におよそ60キロの地点で、戦車など数百台が5キロ以上連なり、ロシア軍が圧力を強めていることがうかがえます。

どこで戦闘が行われているのか?

東部ドネツク州では広い地域で激しい攻撃が続いていて、26日にはロシア軍の砲撃で市民19人が死亡したと州の知事が明らかにしました。

第2の都市で北東部にあるハリコフ州と隣接するスムイ州でも、複数の地域でロシア軍との戦闘が起きていると州政府が伝えています。

州政府によると、州の南部では25日、幼稚園などがロシア軍の攻撃を受けて、子ども1人を含む、民間人6人が死亡したということです。

ロシア軍は侵攻した先でどんなことをしているのか?

ロシア軍は、ウクライナの南部、北部、東部にある地方都市で攻撃を行ったり、一部の施設の占拠を続けたりしています。

このうち、クリミア半島に近い南部の都市ノバ・カホフカでは、ロシア軍が水力発電所を占拠しています。

ノバ・カホフカの市長によると、ロシア軍はウクライナへの侵攻を開始した24日に発電所に侵入し、占拠を始めたということです。

ロシア軍は、水力発電所のほか、クリミア半島につながる水路に関わる建物も押さえるなど、ロシアが一方的に併合しているクリミア半島への管理を強める一環とみられます。

ウクライナ軍の抵抗は?

ハリコフ州では、ロシア軍とウクライナ軍との激しい戦闘が伝えられていて、州知事は27日、自身のフェイスブックに「完全に私たちがコントロールしている」などと投稿し、ロシア軍を退けたと主張しています。

現地で撮影されたとみられる映像には、ロシア軍の軍用車両などが放置されている様子が映っています。

首都キエフはどんな状況なのか?

首都キエフの状況についてクリチコ市長は、AP通信のインタビューで、市民を街の外に避難させる計画があるかという質問に対し「すべての道がふさがれているため、できない。今はロシア軍に包囲されている状態だ」と明らかにしました。

ただ、このあとクリチコ市長はSNSへの投稿でこうした内容を否定しています。
一方、キエフ市内で27日、ワインの空き瓶などを使って火炎瓶を作る市民の姿が見られたほか、ウクライナ議会の議員もNHKに対し、侵攻を受けた直後にすべての議員に銃が配られたことを明らかにした上で「これまで一度も銃を使ったことはないが、ロシア軍に私たちの街は渡さない」と話しました。

戦況についてアメリカはどう分析しているのか?

アメリカ国防総省の高官は27日、記者団に対し、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の状況について、これまでのところロシア軍は主要な都市を制圧できていないとの認識を示しました。

高官はその理由について、ウクライナ側から激しい抵抗を受けていることに加え、燃料などの不足に直面していると指摘しました。

また、ウクライナ側は現在も防空システムや航空機を使用できており、ウクライナの制空権をめぐる攻防は続いているとしました。

また、首都キエフについては、ロシア軍が市街地からおよそ30キロの位置にいるとした上で、偵察部隊の一部が市内に入り、小規模な戦闘が起きているということです。

ウクライナ側にはどのくらいの被害が出ているのか?

ロイター通信はウクライナ保健省の情報として、これまでに14人の子どもを含む352人が死亡したと伝えています。

また、国連の機関によりますと、数百の民間住宅が被害を受けたほか、砲撃によって複数の橋や道路が破壊され、一部の地域では停電や断水が起きているということです。

ロシア軍砲撃で6歳女児死亡 ウクライナ東部 AP通信

AP通信が配信した映像によりますと、ウクライナ東部ドネツク州のマリウポリでは27日、ロシア軍の砲撃で重傷を負った6歳の女の子が病院に緊急搬送されました。

救急車の中では、医療従事者が懸命に女の子に心臓マッサージを行い、母親はその様子を泣きながら見守っています。

その後、女の子は、ストレッチャーに乗せられて病院内に運び込まれ、蘇生措置が行われましたが、亡くなりました。

蘇生措置を行っていた医師の1人は「この状況をプーチンに見せろ!」とカメラに向かって叫び、強い憤りを表していました。

また、女の子が亡くなったのを受けて、医療従事者の中には、涙をこらえきれずに泣きだす人もいました。

この病院では、女の子の父親も集中治療室に運ばれ、治療を受けているということです。

どれくらいの人たちが避難しているのか?

国連の機関は27日、ウクライナから国外に避難した人の数が、少なくとも36万8000人に上ると明らかにしました。

実際、ポーランドとの国境に近い、ウクライナ西部の都市リビウを取材すると、国内のほかの地域から列車などで逃れてきた人たちが集まっていました。

「25日に空爆があり、3時間シェルターで過ごしました。いつ攻撃されるか分からないストレスに耐えられず避難してきました。列車はすし詰め状態の混雑でした」(キエフからリビウに到着したカップル)「こんなことになるとは思いませんでした。プーチンは恐ろしい男で、私たちが帰る町が占領されてなくなってしまうのではと心配しています」(家族と一緒に隣国ポーランドを目指すという33歳の母親)

ロシアとウクライナの交渉は?

ウクライナのゼレンスキー大統領は27日、ウクライナの代表団がロシアの代表団と会談することで合意したと明らかにしました。

双方による会談は、軍事侵攻後、初めてです。

会談についてロシア国営のタス通信は、関係者の話として、現地時間の28日午前、ベラルーシ東南部にあり、ウクライナと国境を接するゴメリ州で行われる見通しだと伝えました。

ウクライナ側は、前提条件なしで行われると主張しているのに対し、ロシア側はウクライナの非軍事化・中立化を条件としていて、双方の主張が対立する中、会談が停戦につながるかは不透明な情勢です。

ロシアの軍事侵攻に世界は?

軍事侵攻をめぐって、アメリカなどがすべての国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合の開催を提案し、27日午後に行われた採決では、常任理事国は拒否権を行使できず、理事国15か国のうち11か国が賛成し、緊急特別会合が開催されることになりました。

ロシアは反対し、中国、インド、UAE=アラブ首長国連邦は棄権しました。
国連総会の緊急特別会合は28日から始まり、アメリカとしては、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の場でロシアを非難する決議案の採決を目指していて、ロシアの国際的な孤立をいっそう際立たせ、圧力を強めたい考えです。