6割の市町村 コロナ感染確認でも“保育園休園せず“ 神奈川県

新型コロナウイルスによる保育園などの休園が相次ぎ、出勤できない医療従事者が増えているとして神奈川県は先週、県の保健所が管轄する26の市町村に対し、原則として休園しないよう求める通知を出しました。県によりますと、このうち6割に当たる16市町村が今週から休園しない対応に変更したということです。

神奈川県は今月18日、県の保健所が管轄する26の市町村に対して、当面の間、保育園などで感染が確認された場合、検査で陽性になったか、症状がある園児や職員だけを休みとし、原則として園全体を休園にしないよう通知しました。

また保健所の業務がひっ迫し、濃厚接触者の調査ができなかったり、自宅待機の期間中に調査が終わらないケースが多くなっていることから、保育園などについては濃厚接触者の特定も行わないとしています。

県は保育園の休園が相次ぎ、子どもを預ける医療従事者が出勤できなくなるケースが増えていることを重く見て、今回の通知を出したとしています。

最終的に休園を決めるのは市町村で、県のまとめによりますと26市町村のうち、6割に当たる16市町村は今週から、原則として休園しない対応に変更したということです。

残りの10の自治体は休園する対応を続けると回答しました。

一方、濃厚接触者の調査については、半数近い12自治体が独自に行うと回答したということで、対応が分かれています。

また県には「休園しなくなると感染から子どもを守れない」など、不安を訴える意見がこれまでに10数件寄せられたということです。

通知の背景 医療提供体制への影響懸念

県が通知を出した背景には、保育園の休園で子どもを預けている医療従事者が仕事を休むことが増え、医療提供体制に影響が出ているという分析があります。

これまで保育園などで感染者が確認された場合は、原則として、保健所が濃厚接触者を特定していました。

しかし、感染者の急増で保健所の業務がひっ迫し、濃厚接触者の調査ができなかったり、長い時間がかかったりするようになり、やむをえず園全体を休園とするケースが増えていました。

県によりますと先月半ば以降、県内では連日、100か所以上の保育園などが休園する状況が続き、2月11日には550か所に上りました。

また、みずからが濃厚接触者になったり、保育園が休園になったりして仕事を休む医師や看護師などの医療従事者も先月中旬から増え始め、コロナ患者を受け入れている病院では連日、2000人以上が仕事を休んでいると見られるということです。

県は、人手不足のため、病床があるのに患者を受け入れられなくなるなど医療提供体制に影響が出ているとして、今回の通知を出すことを決めました。

黒岩知事 「最終的な対応は市町村の判断」

保育園を原則として休園しないよう求める通知を出したことについて黒岩知事は「現実問題として、保健所が濃厚接触者をしっかり追えている状況ではなく、それによって医療従事者が働けなくなっている中で、苦渋の選択であることは間違いない。オミクロン株は若い人は重症化しにくいという特性もあるので、過剰に恐れることで社会をとめてしまったり、医療崩壊に向かってしまったりするような事態は避けるべきだ」と話しています。

そのうえで、最終的な対応は市町村が決めるとして「県としては医療崩壊を防ぐためにこういう選択もあることを伝えているだけで、強制はしていない。実際にどうするのかは地域の実情に合わせて、市町村の判断に任せているので理解してほしい」と話していました。

平塚市では 県の通知で「休園せず」に変更

県の通知を受けて平塚市では、今週から原則として保育園を休園しないことにしました。

平塚市では感染が拡大した年明け以降、保健所の業務がひっ迫して濃厚接触者の調査ができなくなったため、保育園などで1人でも感染が確認された場合、園全体を7日間休園していました。

市によりますと、ことしに入ってから先週までに休園した施設は延べ64か所に上っています。

しかし県の通知を受けて、原則として休園はしないことを決め、今週は休園した施設はないということです。

一方、濃厚接触者を特定せずに園を続けることで感染が広がるリスクもあるとして、感染者と同じクラスの子どもにはできるだけ登園を控えてもらうよう保育園などに通知しました。

ただ、急な方針の変更で保育園からは問い合わせが相次いでいて、担当者は新たに感染者が確認された保育園からの電話対応に追われていました。

平塚市保育課の関野良真保育担当長は「平塚市としては子どもを守るために、これまで全面休園という対応をとっていましたが、エッセンシャルワーカーの就労継続のために、苦渋の決断で舵を切らざるをえませんでした。今後はこれによって感染拡大が起きていないか、追跡調査もしていきたい」と話していました。
方針変更を受けて保育園の保護者からは歓迎と不安の両方の声が聞かれました。

子どもを迎えに来た母親の1人は「休園は正直、働く母親には負担なので助かります。重症化する可能性があるなら不安もありますが、そうでないならつきあっていくしかないと思います」と話していました。

一方で別の母親は「仕事を休むと給料が減って困るのですが、症状がある子だけが休むとなると本当に大丈夫なのか不安もあるので、休園する方が安心です」と話していました。

「大町保育園」の鈴木和代園長は「感染していても無症状の場合もあるので、感染が広がらないか、とても心配です。休園したうえで、どうしても必要な子だけ受け入れるような進め方もあったのではないかと思います」と話していました。

横浜市では 保育所と市が専用チェックリストで判断

保健所をみずから運営し、対応を決めている横浜市では、保護者などの安心を確保しつつ、できるだけ休園を避けようと、保健所ではなく、保育所と市が専用のチェックリストに基づいて、「感染の可能性がある人」を判断する独自の対策を今月から始めました。

横浜市神奈川区にある保育所「ナーサリー横浜ポートサイド」です。

この保育所では感染が広がった先月以降、園児が陽性となったケースが2度ありました。

1度目は保健所が濃厚接触者の調査に当たりましたが、業務がひっ迫していたため時間がかかり、結局、園は10日間休園したということです。

一方、2度目は今月、対策が導入された後で、市が準備したチェックリストに基づいて、園がマスク着用の有無や陽性者と接触した程度などから「感染の可能性がある人」を特定。

市と相談し、感染者や感染の可能性がある人が集中した1クラスを閉鎖したものの、他の児童は必要に応じて登園してもらったということです。

山口正子園長は「市にリストを送ったところ、1時間もたたずに、誰がいわゆる濃厚接触者に当たるか回答が返ってきたので、本当に助かりました。急に休むことが難しい保護者からも、子どもを休ませる必要があるかどうかすぐに分かるようになって、とても助かったという声が届いています」と話していました。

横浜市では保育園からの相談を受けるため専用電話を設置しています。

1日におよそ70の園から相談を受けていますが、6割以上で休園期間が1日から2日程度で済むようになったということです。

また、「感染の可能性がある人」になった子どもの保護者が職場に提出するための市独自の文書を作成するなど、改良しながら運用を進めています。

横浜市保育・教育運営課の古石正史課長は「感染の心配から仕事を休みたい人もいる一方、休めない人もいるので、双方に配慮しながらこれからも続けていければと思います」と話していました。