ウクライナ情勢 各国がロシアへの制裁措置発表 反発強める

ロシアがウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配する地域の独立を一方的に承認し軍を送る準備を整えていることに対して、アメリカをはじめとする各国は相次いで制裁措置を発表し反発を強めています。

ロシアはウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配する地域の独立を一方的に承認し、「平和維持」の名目で軍の部隊を送る準備を整えています。

これに対してアメリカは22日、バイデン大統領が「ウクライナへの侵攻の始まりだ」と強く非難してロシアの金融機関などに制裁を科すと発表するとともに、ホワイトハウスのサキ報道官が米ロ双方で原則合意していた首脳会談は実施できないという考えを示しました。

またEU=ヨーロッパ連合やイギリス、オーストラリア、それにカナダなども相次いで制裁措置を発表したほか、ドイツはロシア産の天然ガスをドイツに送る新たなパイプライン「ノルドストリーム2」の稼働に向けた手続きを停止する考えを示すなど反発を強めています。

こうした中、ロシアのプーチン大統領は23日、国民向けの動画メッセージのなかで「NATO=北大西洋条約機構などによる軍事活動が危険をもたらしている」と述べ、ロシアによるNATOの不拡大の要求を拒否するアメリカなどへの不満を改めて示しました。

アメリカは外交による解決の余地が残されていることも強調していますが、米ロの首脳会談の実施にはロシアが軍の部隊をウクライナ周辺から撤退させるなど緊張緩和を進めることが必要だと主張していて、事態の打開は依然として見通せない状況が続いています。

中国報道官 ロシアへの制裁措置に反対の意向示す

ウクライナ情勢をめぐって、アメリカをはじめ各国がロシアへの制裁措置を相次いで発表したことについて、中国外務省の華春瑩報道官は23日の記者会見で「制裁は、問題解決のための根本的で有効な方法ではない。中国は、いかなる不法な一方的制裁にも一貫して反対している」と述べ、中国として制裁措置に反対する意向を示しました。

そのうえで「対話と協議によって問題解決を図るために努力すべきだ」と述べ、関係各国に対し、対話による解決を図るよう重ねて主張しました。

台湾経済部次長 制裁の可能性「見極めているところ」

台湾の新聞「自由時報」の電子版は「ウクライナ情勢がさらに悪化した場合、台湾がロシアへの半導体の禁輸などを行う可能性がある」と伝えました。

これについて台湾経済部の曽文生 次長は台湾の別のメディアから、半導体の輸出規制などでロシアへの制裁に加わる可能性を問われ「見極めているところだ」と答えました。

台湾財政部によりますと、去年1年間の台湾からロシアへの半導体の輸出額はアメリカドルで2000万ドルを超えています。

プーチン大統領 国民向けに動画メッセージ

ロシアのプーチン大統領は23日、軍人をたたえるロシアの祝日にあわせて国民向けに動画のメッセージを出しました。

この中でプーチン大統領は、「NATO=北大西洋条約機構などによる軍事活動が危険をもたらしている一方で、すべての国を守る平等な安全保障体制の構築を求めるロシアの声にはこたえていない」と述べ、ロシアによるNATOの不拡大の要求を拒否するアメリカなどへの不満を改めて示しました。

そして、国益や国民の安全が最優先だと強調したうえで「世界に類のない兵器を作り出していく」と述べ、極超音速兵器や人工知能を取り込んだ兵器などの開発を進めていくとしました。

プーチン大統領は、ウクライナ東部の状況など緊張が高まるウクライナ情勢については直接言及はしなかったものの今回のメッセージの中でロシアの軍事力を誇示し、欧米を強くけん制したものとみられます。

専門家 “足並みをそろえた対応が重要に”

ロシアの軍事や安全保障に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠 専任講師は、ロシアがウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配している地域の独立を一方的に承認したことについて「ロシアの意図に関する評価をわれわれは大きく変えなければいけない」と指摘しました。

ウクライナ政府軍と親ロシア派の武装勢力との間の紛争を解決しようと、2014年9月と翌2015年2月に結ばれた停戦合意「ミンスク合意」について、「ロシアにとっては親ロシア派武装勢力を維持したまま再統合し、影響力を行使できる見込みがある有利な内容だった。しかし、今はそれ以上のことをねらっていると考えざるをえない」と述べ、今回の承認はロシアのウクライナへの要求がより強くなったことを示唆しているとしています。

具体的には、ロシアはウクライナに対し、NATOに加盟しないだけでなく、非軍事化も求めていくとみられ、さらに政治・経済的に統合することまで視野に入れるようになっている局面だと分析しています。

そして「実際にどのような行動に出るのか予測しがたいが、ロシア系の住民が危ないから介入しないといけないというロジックになる可能性もまだ十分にある」と述べ、ロシアが目的の達成のため軍事力を行使する懸念があると指摘しました。

一方、外交での解決の可能性については「アメリカが反発することを分かったうえで、あえて外相会談の前のタイミングで承認している。ロシア側が対話する意思があるかは疑問だ。ロシア側に話し合う意思が薄いのであれば、できることは非常に限られてくる」と述べ、選択肢が狭まっているという見方を示しました。

そのうえで「制裁には限界があるが、政治的なメッセージとしては意味があり、ロシアにダメージがないわけではない。軍事的な衝突はロシアのためにはならないと、どこまで西側が一致してみせられるか。日本も、国際秩序や安全保障を守っているという認識でどこまで主体的にやれるのかが注目される」と述べ、足並みをそろえた対応がいっそう重要になると強調しました。

日本在住のウクライナ人 都内のロシア大使館近くでデモ

日本で暮らすウクライナ人が23日、都内のロシア大使館の近くでデモを行い、抗議の声を上げました。

デモを行ったのは日本で暮らすウクライナ人やその支援者などおよそ30人です。

参加した人たちは、都内のロシア大使館の周辺でウクライナの国旗を掲げたり、「プーチンは帰れ」や「戦争反対」などと書かれたプラカードを手にしたりしてウクライナに軍を送らず主権を守るよう求めました。

さらにロシア大使館の前まで5人ずつ交代で行進し「ウクライナに平和を」などとシュプレヒコールをあげていました。

参加者の1人で、ウクライナ東部ドネツク州出身の女性は「ウクライナ東部では何人も連絡がつかない知り合いがいます。ウクライナを舞台にしてロシアや、アメリカ、NATOなどさまざまな勢力の駆け引きが行われているように思いますが、私たちが犠牲になるのはごめんです」と訴えていました。