米ロ首脳会談に双方が原則合意 ロシア 緊急安全保障会議開催へ

緊張が高まっているウクライナ情勢をめぐり、フランス大統領府によりますと、マクロン大統領が提案した米ロ首脳会談について、双方が原則として開催に合意しました。アメリカのホワイトハウスは、ロシアによる侵攻がないことが会談の条件だとする一方で、ロシア側はこのあと緊急の安全保障会議を開催すると明らかにし、ウクライナをめぐるプーチン大統領の発言が焦点となります。

フランス大統領府によりますとマクロン大統領は20日、アメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領とそれぞれ電話で会談して米ロ首脳会談を提案し、双方が原則として合意しました。

アメリカのホワイトハウスは、今週後半に予定されているブリンケン国務長官とラブロフ外相の外相会談で、首脳会談の時期や形式について話し合われるとしていて、外交による解決に向けた努力が続いています。

ただ、アメリカのホワイトハウスは首脳会談も外相会談も、ロシアによる軍事侵攻がないことが開催の条件だとしています。

一方、ロシア大統領府のペスコフ報道官は21日、記者団に、首脳会談の具体的な計画はまだ決まっていないとしたうえで「可能性は排除していない。必要であれば米ロの首脳会談は、いつでも電話や対面で行う」と述べるにとどまりました。

また、ペスコフ報道官はクレムリンでこのあと緊急の安全保障会議が開催されると明らかにし、この中でウクライナをめぐってプーチン大統領がどのような発言をするのかが焦点となります。

米国防長官「ロシア軍 首都キエフ攻撃のおそれ」

アメリカのオースティン国防長官は、20日に放送されたABCテレビとのインタビューの中で、ウクライナの国境周辺に集結するロシア軍について「首都キエフを制圧するためにかなりの戦力が速やかに移動できる」と指摘しました。

そのうえで「大量の戦車や装甲車、大砲などが確認されている。こうした兵器が使用されれば、市民を含む多くの人たちが被害を受け、住まいを失い、避難民となるなど悲劇を作り出す」と述べ、危機感を示しました。

バイデン大統領 NSC開催

ウクライナの隣国ベラルーシで軍事演習を行っていたロシア軍が、終了予定の20日以降も現地にとどまる見通しとなった中、アメリカのバイデン大統領は20日、NSC=国家安全保障会議を開きました。

ホワイトハウスが提供した映像では、バイデン大統領がブリンケン国務長官やオースティン国防長官、それにCIA=中央情報局のバーンズ長官などと話し合っている様子が確認できます。

この中でバイデン大統領はロシア軍の最新の状況について報告を受け、対応を協議したということです。

一方、アメリカの複数のメディアは20日、ロシアが軍の部隊に対し、ウクライナへの侵攻を命令したという情報をアメリカの情報機関が得ていると伝えました。

バイデン大統領は先週、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の可能性について「プーチン大統領は決断したと確信している」と述べましたが、アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは当局者の話として、こうした情報が大統領の発言につながったと伝えています。

ロシア軍事侵攻に反対するデモ相次ぐ

ウクライナをめぐる緊張が高まる中、ウクライナの国内外ではロシアによる軍事侵攻に反対するデモが相次ぎました。

ウクライナ南部の港湾都市オデッサでは20日、住民がウクライナ国旗を掲げたり、「プーチンがいなければ涙は流れない」などと書かれたプラカードを持ったりして行進し、AP通信によりますと参加者は数千人に上りました。

参加した男子学生は「ウクライナのすべての国民は国の主権を支持し、占領者とはいつでもどこでも戦うつもりだと示したい」と話していました。

ウクライナでは2014年2月、ロシア寄りだった当時のヤヌコービッチ大統領の退陣を求めたデモ隊と治安部隊が衝突して100人以上が死亡する事態となり、この週末はそれから8年となったこともありロシアに対するデモが各地で行われたということです。

また、アメリカのワシントンやスペイン、スウェーデンなどでもロシアのウクライナ侵攻に反対するデモが相次ぎ、事態の収束を願う声が高まっています。

専門家「欧米を交渉の場につかせるシグナルか」

ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は、ウクライナ東部で緊張が高まっていることについて、「ロシアは緊張状態をエスカレートさせ、欧米を交渉の場につかせようとシグナルを送っている可能性が高い」と分析しています。

その上で、「ロシアがウクライナに軍事侵攻するというシナリオは考えにくい」と指摘しています。

理由として、「プーチン大統領は、フランスのマクロン大統領に続き、アメリカのバイデン大統領との首脳会談も予定され、交渉を継続する意思を見せている」ためだとしています。

今後の米ロ首脳会談について、「アメリカはロシアが求めるNATOを拡大させないという確約はできないが、意見交換を継続していく枠組みに合意ができるのかどうかが焦点になってくる。ただ合意できたとしても実行に移すことは難しく、緊張状態がすぐに緩和されることは考えにくい」として、しばらくは緊張が続くと分析しています。

一方で、「可能性は高くはないが、プーチン大統領が東部の2つの地域を一方的に国家承認するようなことはありうる。その前に、侵攻という形をとる可能性は否定できない」とも述べ、ここ1、2週間のロシアの動きが焦点になるという見方を示しました。

プーチン大統領 全面的な支援を強調

ウクライナ東部の一部を事実上支配する親ロシア派の武装勢力が今月18日「ウクライナ政府が力ずくでこの地域を奪還する準備を整えている」と主張し、国境を接するロシア南部のロストフ州に住民を避難させると明らかにして以来、連日、多くの人がバスや列車でロシア各地に避難する様子が伝えられています。

ロシア非常事態省は国営メディアに対して、これまでにおよそ6万1000人が避難してきたとしていて、テレビでは、人々がロシアのパスポートを見せて手続きをしたあと、寝泊まりする場所や食事が提供される映像が流されています。

ロシアのプーチン大統領は1人当たり1万ルーブル、日本円にしておよそ1万5000円を支給することを決めるなど、全面的な支援を強調しています。

プーチン政権は2019年から、親ロシア派が事実上支配するウクライナ東部の地域で暮らす住民にロシアのパスポートを発給していて、これまでにおよそ70万人がロシア国籍を取得したとされています。

これに対してG7=主要7か国の外相は19日の緊急会合でまとめた共同声明の中で、停戦合意の精神に反するとしてロシアを非難しています。