ロシア国防省 ウクライナ南部 クリミア半島での演習終了と発表

緊張が続くウクライナ情勢をめぐって、ロシアが軍の一部の撤収を始めると発表したのに対して、欧米側は慎重に見極める姿勢を見せています。
こうした中、ロシア国防省は16日、ウクライナ南部のクリミア半島で演習をしていた南部軍管区の部隊が演習を終え、駐屯地に戻っていると発表しました。

発表にあわせて公開された映像では、戦車などを載せた列車が、8年前に一方的に併合されたウクライナ南部のクリミアと、ロシアを結ぶ橋を渡る様子が確認できます。

ロシア国防省は前日の15日には、ウクライナ東部との国境近くに展開していた部隊が演習を終えて撤収を始めると発表した一方、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシでの合同軍事演習や、黒海などでの演習は続いているとしていました。

ウクライナ情勢をめぐって、ロシア国防省が15日、軍の一部の撤収を始めると発表したのに対して、アメリカのバイデン大統領が「確認ができていない」と述べるなど、欧米側はロシア軍の動向を慎重に見極める姿勢を見せ、緊張緩和の糸口を見いだせるかは不透明な状況です。

一方、ロシアによる軍事行動の可能性が指摘されているウクライナでは、16日、情報セキュリティー当局が声明を出し、国防省や軍の公式サイトのほか、2つの銀行が強力なサイバー攻撃を受けたことを明らかにしました。
ウクライナでは、16日が「国民統合の日」に定められ、ゼレンスキー大統領はビデオメッセージで「ウクライナの東西南北が一体となる、幸せな日になることを祈ります。私たちは、一つになった時にこそ強くなれる」と団結を呼びかけました。

そして、ゼレンスキー大統領が首都キエフの郊外で軍の兵士などとともに国旗を掲げ、国歌を歌う姿がテレビで全国放送されました。

またキエフでは、大勢の市民がスタジアムに集まり、巨大な国旗を持って行進するなどして、ロシアからの圧力に屈しない姿勢を示しました。

ロシア報道官「プーチン大統領 外交交渉行う意思と準備」

ウクライナ情勢をめぐってアメリカのバイデン大統領が外交的な解決を改めて呼びかけたことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は16日、記者団に対して「外交とは共通点を見つけることだ。一見すると正反対の立場を近づけることにつながる」と前向きに評価しました。

そして「プーチン大統領は外交交渉を行う意思と準備があることを強調しており、アメリカの大統領が交渉に応じる姿勢を見せているのはよい傾向だ。共通点は交渉の過程で探っていかなければならない」と述べ、プーチン大統領には外交交渉を優先させる意思があると強調しました。

ロシア議会下院「親ロシア派武装勢力支配地域の独立承認を」

ロシアの議会下院は15日、ウクライナ東部で8年前、一方的に独立を宣言した親ロシア派の武装勢力が事実上支配している地域を独立国家として承認することを検討するよう、プーチン大統領に求める決議案を賛成多数で可決しました。

ウクライナでは2014年、南部のクリミア半島がロシアによって一方的に併合されたあと、ロシアを後ろ盾とする武装勢力が東部の一部地域を占拠し、これを認めない政府軍と激しい衝突を繰り返しました。

その後、フランスとドイツが仲介して停戦合意が成立したものの、散発的な戦闘が続き、これまでに市民を含むおよそ1万4000人が犠牲になっています。

プーチン政権は紛争への関与を否定する一方、2019年からこの地域の住民に対してパスポートを発給していて、これまでにおよそ70万人がロシア国籍を取得したとされています。

ロシア下院のボロジン議長は15日、「ウクライナ政府は停戦合意を順守していない。東部に住むわれわれの同胞は支援を必要としている」と述べていて、親ロシア派の支配地域に高度な自治権を与えることなどを盛り込んだ、停戦合意の順守をウクライナ政府に迫るねらいもあるものとみられます。

今回の決議についてロシア大統領府のペスコフ報道官は「公式な決定は一切、なされていない」と述べていて、プーチン大統領が実際に承認するかどうかは不透明です。

一方、ウクライナ外務省は15日声明を出し、プーチン大統領が決議を承認したとしても、法的拘束力はないとしながら「プーチン大統領が仮に承認すれば、国際的な法の支配と世界の安全保障の枠組みに、より広範で破壊的な結果をもたらす」と、強くけん制しています。

専門家「一部撤収開始の発表 米側の情報戦に対抗か」

ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は、ロシアが軍の一部の撤収を始めると発表したことについて「一部撤退を開始したのは事実だと思う」という見方を示したうえで「軍事侵攻は間近だとするアメリカ側からの情報戦に対抗する意味合いがあるのではないか」と指摘しています。

その理由として、この発表の前日の14日、ロシアのプーチン大統領が欧米側との対話を継続することなどについて、ラブロフ外相などと交わしたやり取りを国営テレビで中継し公開したことをあげ「軍事侵攻するつもりはないということをわざわざ会話の映像を流し、シグナルを送ったのだろう。アメリカのある意味ネガティブキャンペーンを打ち消す目的があったということだろう」と分析しています。

一方で、畔蒜氏は今回の動きを受けて「全面的に緊張緩和につながるとは言えない」としたうえで「引き続き、ロシア側としては緊張感を維持し、場合によっては再び高めるアプローチをとりながら、西側との交渉を継続するだろう」として、ロシアが再び軍事的な圧力を高める可能性もあると指摘しました。

またロシア議会下院が、ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力が事実上、支配している地域を独立国家として承認するようプーチン大統領に求める動きについて「大統領府と密接に連携を取って行われたと思う」と述べて、ウクライナ政府に揺さぶりをかけるねらいがあるとしました。

また今後については、NATO=北大西洋条約機構をさらに拡大させないことを求めるロシアとアメリカの立場の隔たりは埋まっておらず、畔蒜氏は「アメリカ側に対して、プーチン大統領は正式な回答を出していない。これがどういうタイミングで出てくるのか」として、プーチン大統領が示す対応の内容が焦点になるという見方を示しました。

中国 習主席「対話と話し合いで解決を」

中国の習近平国家主席は16日、フランスのマクロン大統領と電話で会談しました。

中国外務省によりますと、会談で両首脳はウクライナ情勢をめぐって意見を交わし、習主席は「関係国が、政治的な解決を図るという大きな方向性を堅持し、対話と話し合いを通じて、問題の全面的な解決を図るべきだ」と述べたということです。

また、習主席は、開催中の北京オリンピックについて「予定通り順調に開催されていることは、国際社会が平和と団結、進歩を求めていることを証明している」と述べ、開催は順調だとアピールしました。