カーリング【詳細】日本 アメリカ戦 準決勝進出へ大きな勝利

北京オリンピックカーリング女子の日本代表は予選リーグの第8戦、アメリカと対戦し10対7で勝ちました。日本は予選リーグ5勝3敗とし、17日のスイスとの試合に勝てば準決勝進出が決まります。

日本はこれまでに7試合を終えて4勝3敗で、16日夜の第8戦でここまで4勝4敗のアメリカと対戦しました。

日本は序盤から正確なショットでチャンスを作り、第2エンドには相手のミスも重なって不利な先攻から3点を奪う「スチール」を決めて主導権を握りました。第7エンドにはアメリカに4点を奪われて同点に追いつかれましたが、日本は焦ることなくその直後の第8エンドに2点を奪い、流れを渡しませんでした。
3点リードで迎えた最終第10エンドには藤澤選手が1投目でダブルテイクアウトを決めて、アメリカのストーンをすべてはじき出し、アメリカは残り2投を残して追いつくためのストーンが足りなくなったため、途中で「コンシード」、負けを認めました。

日本は10対7で勝ち、予選リーグの通算成績は5勝3敗となりました。
予選リーグは残り1試合、日本は17日にここまで7勝1敗でトップのスイスと対戦し、勝てば準決勝進出が決まります。

負ければ5勝4敗でほかのチームと並ぶ可能性があり、その場合は直接対決の結果などで順位が決まります。

準決勝進出できるのは残りあと2枠 日本は残り1試合

予選リーグは残り1日、上位争いも大詰めです。準決勝進出を決めているのは7勝1敗のスイスと6勝2敗のスウェーデンで、残り2つの枠の争いとなっています。
3位につけているのは日本で5勝3敗、続いてカナダとイギリス、それに韓国が4勝4敗で並んでいます。アメリカと中国は4勝5敗、デンマークは2勝6敗、ROC=ロシアオリンピック委員会が1勝7敗で最下位です。

日本は17日にスイスとの試合に勝てば準決勝進出が決まります。
日本が負けると、5勝4敗でほかのチームと並ぶ可能性があり、その場合は直接対決の結果などによって順位が決まります。上位を争うチームのうち、日本はカナダには勝っていますがイギリスと韓国には敗れています。

【試合詳細】

日本時間21:05 試合開始 日本は有利な後攻からスタート

日本は試合前の「ラストストーンドロー」で相手より円の中心に近づけ、第1エンドで有利な後攻を選択することができました。試合前、選手たちは会場入りしたあと笑顔でカメラに向かってポーズをとるなど、明るい雰囲気でした。

第1エンド 日本(後攻)1-0 アメリカ

第1エンドから日本は有利な後攻で複数得点がほしいところでしたが、相手の正確なドローショットやテイクアウトショットでアメリカのストーンがたまっていく展開になりました。
アメリカがナンバーワンからスリーまでを作る状況となり、スキップ藤澤選手の最後の1投。失敗すればスチールされるおそれもある場面でしたが、藤澤選手はきっちりとヒットアンドロールを決めてナンバーワンを取りました。1点止まりだったものの日本を勢いづけるナイスショットです。

第2エンド 日本 4-0 アメリカ(後攻)

ナンバーワンとツーを先攻の日本が持っている状態でスキップ藤澤選手が最後の1投をガードストーンの裏に置く「カム・アラウンド」を決め、ナンバーワンからスリーまでが日本のストーンとなりました。
アメリカは最後の1投で1点を取りに行くしかない形でしたが、このショットがハウスの前のガードストーンに当たるミスで日本が3点をスチール。
「ビッグエンド」となってリードを大きく広げました。

第3エンド 日本 4-2 アメリカ(後攻)

先攻の日本は最後の1投を残し、アメリカがナンバーワン、ツー、フォー、日本がナンバースリーという状況。ミスをすれば大量得点を許すリスクもあるだけに2分以上かけて慎重に作戦を話し合いました。
そして、藤澤選手が手前のガードストーンを利用してアメリカのストーン2つをはじきました。ナンバーワンはとれず、完全に狙いどおりではなかったものの相手の3点獲得のチャンスを奪う1投でした。その後、アメリカはドローショットをきっちりと決め、2点を獲得。
日本は2点リードにかわりましたが第4エンドは有利な後攻です。

第4エンド 日本(後攻)6-2 アメリカ

アメリカのスキップは最後の1投で日本のストーンにピタリとつけようとドローショットを決め、出しにくい位置にナンバーワンを作りました。
無理をせず1点を取りにいってもいい場面でしたが、日本は攻めの姿勢を見せます。スキップ藤澤選手の最後の1投はアメリカのストーンに軽く当ててナンバーワンに。
さらに当てられたアメリカのストーンは、ナンバーツーだった日本のストーンのわずかに外に押し出される絶妙なショット。吉田夕梨花選手と鈴木夕湖選手の力強いスイープも光りました。
日本はこれで2点を獲得し、再びリードを4点に広げました。

第5エンド 日本 6-3 アメリカ(後攻)

アメリカのストーンがハウスの中に3個ある状況で日本のスキップ、藤澤選手は相手の複数得点を防ぐため、最後の1投でこのストーンをはじき出しにいきます。しかしこれは決まらず、アメリカのナンバーツーとスリーが残ってしまいました。
3点を奪われる可能性がありましたが、アメリカは最後のショットで投げたストーンも出してしまい、1点にとどまりました。
相手のミスで助かった日本、3点リードで試合を折り返しました。

ハーフタイムで栄養補給

日本は第5エンド終了後のハーフタイム、水分補給をしたり、ゼリーを飲んだりしながら互いにアイスの状況を確認するなど、後半に向けて作戦を話し合っていました。
ここまでのショット成功率は日本が80%、アメリカは72%です。
要所要所でスキップ藤澤選手の絶妙なショットが決まり、流れをつかんでいます。

第6エンド 日本(後攻) 7-3 アメリカ

先攻のアメリカは最後の1投で日本のナンバーワンをきっちりはじき出し、ハウスの中にアメリカのストーンが4個、日本のストーンがゼロという形になりました。
スキップ藤澤選手は最後の1投、ドローショットで1点を取りに行きます。ガードストーンが3個あり、失敗すれば4点をスチールされるというプレッシャーがかかる場面でしたが、藤澤選手はこのショットを見事に決めました。4点リードで第7エンドは先攻です。

第7エンド 日本 7-7 アメリカ(後攻)

アメリカが底力を見せました。後攻のアメリカが正確なショットで円の中にみずからのストーンをため、日本のストーンをはじき出していく展開。
アメリカがナンバーワンからフォーを持つ状況で、スキップ藤澤選手は最後の1投、相手のストーンを減らそうとしますが、1つしかはじき出せませんでした。
アメリカは最後の1投で日本のストーンもはじき出し、4点を獲得しました。日本、4点差を追いつかれ同点となりました。

第8エンド 日本(後攻) 9-7 アメリカ

日本はセカンドの鈴木選手とサードの吉田知那美選手が3時方向と9時方向の離れた位置にストーンを置き、相手がダブルテイクアウトをできない状況を作りました。
アメリカは最後までこの形を崩すことができず、ナンバーツーは日本の状況で最後は日本のスキップ、藤澤選手が相手のナンバーワンをきっちりはじき出して2点を奪いました。
相手に傾きかけた流れを引き戻す、大きな2点です。

第9エンド 日本 10-7 アメリカ(後攻)

スキップ藤澤選手がまたもすばらしいショットを見せます。
最後の1投で、アメリカのストーンにぴたりとくっつける「フリーズ」で、はじき出せない位置にナンバーワンを作りました。アメリカはドローショットで円の中心にストーンを置いて1点を取りにいくしかない場面でしたが、これを決めきれず、日本はスチールで大きな1点を追加しました。

第10エンド ※アメリカがエンド途中でコンシード

最終エンドで日本は3投を残して1試合で1回しか使えないタイムアウトを取りました。日本は、コーチも交えて話し合った結果、3時方向にある相手のナンバースリーと中心付近にある相手のナンバーワンの両方をはじき出すダブルテイクアウトを狙う作戦に決まりました。
そのあとの吉田知那美選手のショットははじき出せたのはナンバースリーだけでしたがいい位置に跳ね返って日本がナンバーワンを取りました。狙い通りではなかったものの、よい形になりました。
その後、スキップの藤澤選手が1投目、ダブルテイクアウトを決めて、アメリカのハウスの中のストーンをすべてはじき出しました。アメリカは残り2投を残して追いつくために必要なストーンが足りなくなり、途中で負けを認めました。日本は10対7でアメリカに勝利しました。

各選手談話 藤澤「チーム全員で勝ちを信じていた」

スキップの藤澤五月選手は「この勝ちはすごく大きなものになった。勝ち星が気になってメンタル的に一番厳しいのが予選リーグの後半だが、それぞれが強い気持ちを持って試合に臨めたしそれがショットにつながった。途中、追いつかれたこともあったけれど吉田知那美選手がポジティブなことばをかけてくれた。落ち込みそうになったときもチーム全員で勝ちを信じていた」と笑顔でした。

リードの吉田夕梨花選手は「課題だった夜のゲームの前半の入り方を注意して、1点でも多く取って食らいついていくことが大事だと話していた。それがしっかりと実行できた。後半はビッグエンドを作られたのでまだ課題はあるけれど、試合の入りとしてはすごく良かった」とホッとした表情で話していました。

取り戻した笑顔 持ち味復活で勝利呼び込む

笑顔とコミュニケーション。
日本の最大の持ち味がこの重要な一戦で存分に発揮されました。
第7戦まで2連敗中だった日本。
ショットのミスも目立ちましたが、それ以上に感じたのは雰囲気の重さでした。
日本の強みである「笑顔」や声を掛け合う「コミュニケーション」が勝ちを重ねていたときに比べ、減っているように見えたのです。
しかしこの試合は4人が入場してきたときから雰囲気が違いました。

カメラに向かっておどけてポーズを作る姿は重要な一戦を前にした重圧をまるで感じさせませんでした。そのムードは序盤から流れを呼び込みます。
第2エンドには正確なショットの連続でアメリカのミスを誘い、3点をスチールするビッグエンドを作りました。

そして続く第3エンド、試合を左右する重要な局面を迎えます。
不利な先攻で迎えた日本は相手にナンバーワン、ツー、フォーを作られ、ミスをすれば相手に大量得点を許すリスクもありました。
ここで4人は最後の1投を残し、2分以上もの時間を使って話し合います。
「スリーは赤(日本)っぽいか」。
「そだねー」。
「やるなら使ったことがあるウエイト(スピード)がいい」。
「1人で投げないウエイトがいいと思う」。

ストーンを投げるラインはどうするか、スイープでどこまで距離を伸ばせるか。互いの考えと持っている情報を共有し、作戦を練り上げました。
そして、その直後の藤澤選手のショットはガードストーンを使って相手のストーン2つをはじき出します。
2点は取られたもののまさに「全員で」相手の3点獲得を防ぎ、流れを渡さなかったのです。
(鈴木夕湖選手)「みんなで声を出してコミュニケーションがとれていた。どのくらいスイープがきくのかも話し合って、しっかりそこに合わせてさっちゃん(藤澤選手)が投げてくれて」

第7エンドには相手に4点を奪われ、同点に追いつかれましたが「4点取られても私たちにとってはいいシチュエーション」と冷静でした。

次のエンドでしっかり2点を奪って引き離す試合運びには余裕すら感じられました。この試合、笑顔で互いに声をかけ合う姿は最後まで変わりませんでした。

(吉田知那美選手)「心のアドバンテージを使って落ち着いてプレーできたのはこのチームで8年間積み上げてきたものだと思う」

2連敗教訓に“シンプルな攻撃へ切り替え”も奏功

笑顔が戻ったその背景には、チーム戦略を見つめなおし“修正”につなげられたという「手ごたえ」があったようです。

日本は、ここ2試合で序盤に3点を奪われるエンドを作られるなど立ち上がりから失点を重ねてリズムとペースをつかめずに作戦が後手にまわって連敗を喫していました。
スキップの藤澤選手は攻めの姿勢でゲームを組み立て序盤から複数得点を狙うのが特徴ですが、北京大会の試合会場は2008年の夏の北京オリンピックの競泳の会場を改修してカーリング場としていることから氷の状態がやや不安定であることや、会場が乾燥していて氷の状態が変化しやすいため、序盤からリスクのある攻撃的なショットでミスが出やすい傾向にありました。

そのミスがここ2試合続いていたことから藤澤選手は、アメリカ戦の試合の立ち上がりで難しいショットを選択することを避けて、相手のショットや試合運びを見極めながら比較的ミスの少ない、シンプルな攻撃を心掛けました。
この作戦が功を奏して相手のミスを誘った日本は第2エンドに3点を獲得して試合の流れをつかみました。その後、中盤に同点とされたものの、チームとして焦ることなく対応し試合を組み立て相手の反撃を振り切りました。

藤澤選手は「夜の試合のアイスをとらえるのが難しくて、前半に難しいショットを選択してミスが増えてしまうところが反省点だったので、この試合は前半はどちらかと言うとシンプルに。相手に攻めてもらう形を意識した。途中で追いつかれてしまったけれど、これまでの試合より気持ち的に楽というか、強く持てる試合展開を作れたと思う」と話していました。
17日、日本が予選リーグ突破をかけて挑むのはスイス。
ここまでトップの成績を残している強敵に勝つためには戻ってきた「笑顔」と「コミュニケーション」そして「8年間積み上げてきた」チーム力こそが最大のかぎになるはずです。