ファイザー コロナ飲み薬 あす承認見込み 使用条件を慎重審議

アメリカの製薬大手ファイザーが開発した新型コロナウイルスの飲み薬について、厚生労働省は10日、専門家による部会を開いて承認に向けた審議を行います。
部会では承認が了承される見込みですが、この薬は飲み合わせに注意が必要な薬が複数あり、使用の条件を慎重に審議することにしています。

ファイザーの申請を受けて承認に向けた審議が行われるのは、新型コロナウイルスの軽症から中等症の患者を対象にした「パキロビッドパック」(一般名「ニルマトレルビル/リトナビル」)という飲み薬です。

去年12月にファイザーが公表した臨床試験の分析では、重症化リスクのある患者に対して発症から3日以内に投与を始めた場合、入院や死亡のリスクが89%低下したとされています。

また、オミクロン株に対する効果についても、実験室で確認したところ増殖を抑える効果がみられたとしています。

日本政府は、ファイザーから200万人分の供給を受けることで合意していて、10日の厚生労働省の専門家部会では承認が了承される見込みです。

承認されれば、新型コロナの飲み薬としてはアメリカの製薬大手メルクの「ラゲブリオ」(一般名「モルヌピラビル」)に続いて2種類目となります。

ただ、この薬は一部の薬と一緒に使うと必要以上に強い効果が出て、健康に悪影響を及ぼすおそれがあり、飲み合わせに注意が必要で、厚生労働省は使用の条件を慎重に審議することにしています。

併用禁忌の薬が複数

「パキロビッドパック」は、新型コロナウイルスの増殖を抑制する薬と、エイズの治療で使われる薬を同時に服用します。

このうち、エイズの治療で使われる薬は、一緒に服用する薬の効果を高める作用がありますが、種類によっては必要以上に強い効果が出てしまい、健康や生活に悪影響を及ぼすおそれがあるとされています。

日本では高血圧や不整脈、うつ病の薬など32種類との併用を認めていません。

この中には、片頭痛の薬や解熱鎮痛剤など薬局などで一般に購入できるものもあります。
アメリカFDA=食品医薬品局は去年12月、「パキロビッドパック」アメリカでの販売名「パクスロビド」の緊急使用許可を出していますが、ファイザーは28種類の薬と併用しないよう求めています。

承認に向けた審議にあたって厚生労働省は、外国人と日本人では薬に対する反応が異なることも踏まえ、どの薬を併用できないとするか専門家とともに検討することにしています。

薬局 服薬状況をより丁寧に確認を

新型コロナウイルスの新たな飲み薬は、飲み合わせに注意が必要だと指摘されていることから、薬局では、患者がふだん使用している薬の状況を、より丁寧に確認する必要があるとしています。

東京 中央区の薬局では、新型コロナの飲み薬を扱っていて、医療機関から処方箋を受け取って、薬剤師が患者に電話やオンラインで服用方法などを指導したあと自宅に直接、届けています。

新たな飲み薬は、一部の薬と併用すると健康に悪影響を及ぼすおそれがあることから、承認されて扱うことになった場合は、より注意が必要になると考えています。

患者がふだん使用している薬は通常は、薬局を訪れた際のアンケートで把握できますが、新型コロナの患者は対面で会えない中で薬を渡すケースがほとんどです。

また、睡眠をうながす薬や血圧を下げる薬など、比較的よく処方される薬も飲み合わせに注意が必要だとされる可能性があります。

こうしたことから服薬の状況をより丁寧に確認しなくてはならないといいます。

これまで新型コロナの飲み薬を提供した人の中には、自宅療養中に一時、症状が悪化した人もいたということで、新たな薬についても慎重なフォローアップが欠かせないとしています。
越前堀薬局の薬剤師の犬伏洋夫さんは、「お薬手帳を持たない患者に聞いて自分が使っている薬の名前を言える人は1割もいないかと思います。実際に会えないことを考えると、より丁寧に電話で確認しなければならないし、薬の飲み合わせは、実は危ないという注意喚起をきちんとしなければいけない」と話しています。

専門家「影響あるか正確な情報 患者側に伝える必要」

この薬に詳しい国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センターの岡慎一センター長は、「患者がふだん飲んでいる薬と一緒に使うと影響があるかどうかというのは、医療側がきっちり調べて、正確な情報を患者側に伝える必要がある。効果が高い薬とみられるので、まずはコロナの治療を優先して、その期間だけ服用を中断したり、ほかの薬に替えられたりできないか、患者からも医師や薬剤師に忘れずに相談してほしい」と話しています。