高齢者施設でクラスター 保健所に相談も医療的支援届かず

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、22人の感染者を出すクラスターに直面している東京都内の高齢者施設が取材に応じました。
高齢者はオミクロン株でも症状が急激に悪化するケースが相次いでいる一方で、医療的な支援が届いていないとして、入院先の確保や医師の派遣など高齢者施設への支援を求めています。

厚生労働省のまとめによりますと、先月31日までの1週間に高齢者施設で発生したクラスターや2人以上が感染した事例は全国で249件に上り、過去最多を記録しています。

このうち22人のクラスターの対応にあたっている都内の特別養護老人ホームがNHKの取材に応じました。

この施設では先月24日に職員1人が発熱したあと、3日間で同じフロアを中心に入所している高齢者や職員に次々に症状が広がり、7日までに80代から90代の高齢者12人と職員10人が感染しました。

利用者の中には認知症で常に見守りが必要な人もいて、今まで複数の入所者で一度にとっていた食事も感染防止のため個室でとるため、一人一人介助しなければなりません。

しかし、フロアを担当する職員のほとんどが感染したため人手が足りなくなり、別のフロアの職員や事務職員が手伝うなどして、ぎりぎりの状態で介護を続けたといいます。

施設に医師が常駐していないためPCR検査が行えず、抗原検査のキットも不足している状態だったため保健所にも相談しましたが、医療的な支援を受けることができませんでした。

こうした中で発熱で食事や水分が十分に摂取できず、脱水で症状を悪化させる高齢者が相次ぎました。

それでも入院できたのは3人だけで、90代の男性は搬送先を探す救急車の車内で死亡しました。

最初の感染確認から4日後に初めて都から医師が派遣され、利用者の検査をするとともに点滴などの医療処置がなされましたが、その後、さらに1人が亡くなりました。
往診した岩間洋亮医師は「オミクロン株は比較的軽症の人が多いのは事実だが、高齢者は上気道炎を起こすと脱水でどんどん症状が悪化していく。患者の数も圧倒的に多く、介護現場は第5波の時以上に混乱している」と話しています。

また、この施設の施設長は「高齢者施設はあくまでも暮らしのための場所で医療を提供する体制はなく、高齢者の命を守るには限界があります。症状が悪化した人だけでも入院させてほしいですし、施設への医師の派遣や検査・物資の支援を早急にお願いしたいです」と話していました。