東京都 緊急事態宣言発出要請の新指標 その内容とは?

新型コロナの新規感染者が2日連続で2万人を超えた東京都。都は緊急事態宣言の発出を要請する新たな指標を公表しました。重症者病床の使用率や新規陽性者の7日間平均などを参考に判断するとしています。

新しい指標に対して都の現状はどうなっているのかなど、詳しくお伝えします。

2日連続2万人超感染確認

東京都内の3日の感染確認は2万679人で2日連続で2万人を超えました。さらに都は感染が確認された男女4人が死亡したことを明らかにしました。

一方、都の基準で集計した3日時点の重症の患者は2日より8人増えて38人となり増加傾向が続いています。

“宣言”要請の新指標は?

感染拡大が続く中、東京都は緊急事態宣言の発出を要請するに当たってオミクロン株の特性を踏まえた新たな指標を設けました。

感染が収束傾向ではないことを前提として
▽医療提供体制のひっ迫度合いと
▽社会経済活動への影響について
新たに設ける指標がいずれも満たされている場合に要請を検討するとしています。
【医療提供体制のひっ迫度合いをはかる指標】
このうち医療提供体制のひっ迫度合いをはかる指標は
▽重症患者用の病床使用率と
▽入院患者の中で酸素投与が必要な人の割合のふたつがあり
いずれかが30%から40%となった場合、病床全体の使用率なども参考に判断するとしています。

今回、新たな指標で判断するに当たり重症患者の対象を広げ人工呼吸器などでの管理が必要な人だけでなく、高濃度の酸素の大量投与が必要な人なども新たに加えます。

都によりますと対象を広げた場合、重症患者用の病床使用率は2日時点で15.1%です。入院患者の中で酸素投与が必要な人の割合は2日時点で8.0%です。

【社会経済活動への影響】
また社会経済活動への影響は新規陽性者の7日間平均が2万4000人に達することが新たな指標として設けられました。新規陽性者数の7日間平均は3日時点で1万7058.6人です。

2万4000人という数字について都は、都内で働く人の1割が欠勤しているおそれがある水準だと説明しています。

都医師会副会長「より実態に近い形に」

都の会議で医療提供体制を分析している東京都医師会の猪口正孝副会長は記者団に対し「今度のオミクロン株は今まで経験してきた変異株と様相が違う。オミクロン株の感染によって人工呼吸器を使うという状態ではなく、むしろ基礎疾患が悪くなって重症病床に入ってくる。コロナだけの指標では病院の重症病床のひっ迫はなかなか表すことができないので、より実態に近い形にした」と述べました。

小池知事「『鬼は外』だが、オミクロンは家の中にも」

東京都の小池知事は記者団に対し「オミクロン株は非常に感染力が強い一方で症状はこれまでとは違うということから追加の指標を決めた。『命を守る、暮らしを守る』という2つの柱の中で指標を見ながら総合的な判断を検討していく」と述べました。

そして3日が節分であることに触れ「『鬼は外』と言うが今オミクロンは家の中にも外にもいる。いつ自分や家族がかかってもおかしくないという認識で、だらだらと続けないために皆さんとともにたたかっていきたい」と述べ、感染拡大防止への協力を重ねて呼びかけました。

医療提供体制は最も深刻なレベルに

3日開かれた都のモニタリング会議で、専門家は都内の感染状況の警戒レベルを最も深刻なレベルで維持し「大規模な感染拡大が継続している」と分析しました。

そしてこのままの水準で増加した場合、7日間平均は1週間後の今月10日に2万4756人になるとする推計を示しました。
一方、医療提供体制は「医療体制がひっ迫している」と分析され、警戒レベルは1段、引き上げられて最も深刻なレベルになりました。今回の第6波で最も深刻なレベルになるのは初めてです。

感染状況と医療提供体制がいずれも最も深刻なレベルになるのは去年9月以来です。

救急患者の搬送に4時間かかるケースも

感染の急拡大で入院先を探して救急患者の搬送に時間がかかる状況が相次いでいます。

東京 大田区を中心に在宅医療を行うクリニックには高齢者の往診依頼が相次いでいて、2日夕方には保健所から「自宅療養中の79歳の男性が息苦しさを訴えている」と連絡がありました。

医師が往診したところ男性は心臓に持病があり肩を上下に動かして苦しそうに息をしていたり手が震えたりしていて、血液中の酸素飽和度は89%と低い状態でした。
また男性はワクチンの接種歴がなく医師に対し「かかりつけ医に何度も相談したが自分でスマホで予約するように言われて、やり方がわからず諦めてしまった」と話していました。

医師はすぐ救急車を呼び、駆けつけた救急隊員が入院先を探しましたが、空き病床が見つからず搬送までに4時間近くかかりました。

男性は搬送を待っている間に酸素飽和度が85%まで低下したということです。

医師「高齢者への感染拡大を日々実感」

往診したひなた在宅クリニック山王の田代和馬院長は「高齢者に感染が広がっている実感が日々増している。入院調整にも時間がかかりかなり早いペースで危機的な状況になってきている。病院のスタッフが出勤できないケースも少なくないため、病床使用率の数字以上に実際は入院しにくくなっているのではないか」と危機感を強めています。

そのうえで「高齢者など重症化リスクの高い人に限られた医療資源を分配しなければならないところまで来ている。すでに息切れしそうな状況だがいち早く必要な患者のもとに駆けつけて今できる医療を届けたい」と話しています。

保健所判断で搬送されないケースも

救急患者の搬送にも影響が出ています。

東京消防庁によりますと、感染が確認され自宅で療養している患者が救急搬送されたケースは先月30日までの1週間で合わせて574件に上っていて、9日までの週の36件から3週間でおよそ16倍に急増しました。

こうした中、空き病床が見つからず搬送までに時間がかかるケースも相次いでいて
▽3時間から5時間が72件
▽5時間以上が31件となっています。

また救急搬送の依頼があったものの、保健所の判断などで搬送されなかったケースも317件に上っているということです。

救急搬送の件数は現在、第5波のピーク時の7割程度だということで、東京消防庁は引き続き関係機関と連携して対応にあたることにしています。

宿泊療養施設を新たに3か所増

家庭内での感染も相次ぐ中、東京都内では宿泊療養施設への入所を希望する人が増えていて2日時点で入所している人は過去最多の3960人にのぼっています。

都はすでに20のホテルを宿泊療養施設として運用していますが、3日から新たに3か所増やしそのうちの1つが報道陣に公開されました。
施設で看護師が行う対応のデモンストレーションでは感染した人が入所した際、体温や症状などを電話で聞き取ったり、体調が悪くなった人に酸素マスクを装着したりしていました。

都の宿泊療養施設は4日、さらに3か所追加され、合わせて26施設、7240室の受け入れ体制になります。

施設では開発中の飲み薬の治験も

一方、施設の一部では去年11月から塩野義製薬が開発中の新型コロナの飲み薬の治験も行われています。

同意が得られた入所者に1日1回、5日間、薬を飲んでもらい、飲み始める前とあとでウイルスの量の変化などを調べています。

3日はスタッフが治験の概要を説明したうえで採血などを行い、治験を行えるかどうか事前に確認する様子が公開されました。

塩野義製薬によりますと、これまでに入所者に対して29件の治験が行われたということで今後、都の宿泊療養施設で200例から300例ほどの治験を行いたいとしています。

塩野義製薬の上原健城臨床開発部長は「少しでも多くの人に治験に参加してもらえる態勢を作っている。いち早く薬を届けられるよう引き続き全力を挙げたい」と話しています。