岸田首相 3回目接種体制拡充の考え強調 衆院予算委

国会では31日に衆議院予算委員会で集中審議が行われました。新型コロナワクチンの3回目の接種をめぐり、立憲民主党が進捗(しんちょく)の遅れを指摘したうえで、受けたい人が受けられない状況を改善すべきだとただしたのに対し、岸田総理大臣は、来週から自衛隊による大規模接種会場の接種枠を増やすほか、自治体にも協力を求め体制の拡充に努めていく考えを示しました。

自民党の葉梨康弘氏は国土交通省の統計データの書き換え問題をめぐり「データの復元は必須だが時間がかかると聞いた。復元に時間がかかるのはなぜか」と質問しました。

これに対して、斉藤国土交通大臣は「平成28年度分以降は数十万枚保存されている調査票を精査するほか、平成27年度以前は調査票は廃棄済みだが、電子データとして残っているものをどう推計していくか検討するため、復元に時間がかかる。ことし5月に予定している令和3年度分の建設工事受注動態統計調査の公表までに、一定の結論を出したい」と述べました。

公明党の伊藤渉氏は、国土交通省の統計データの書き換え問題をめぐり「当時の係長が不適切な処理を申告し、合算処理を廃止するまで2年余りの時間がかかっている。時間がかかりすぎだが、その要因をどう考えるか」と質問しました。

これに対して、斉藤国土交通大臣は「検証委員会の報告書では、省内の事なかれ主義のあらわれで、会計検査院などに説明しなかったのは、幹部職員に責任追及を回避したいという意識があったためなどと、大変厳しいご指摘をいただいた。言語道断で、職場の風土改善に取り組む必要がある」と述べました。

これに関連して、岸田総理大臣は「統計データに基づく政策立案の普及・浸透を図ることで、行政の信頼回復を図っていきたい」と述べました。

立憲民主党の江田憲司氏は新型コロナワクチンの3回目接種について「ワクチンの3回目の接種が、なかなか進んでない。自衛隊の大規模接種会場も予約が殺到し、9分でいっぱいになった。打ちたい人が大勢いるのに打てない状況なので、もっと接種会場や接種回数を増やすべきだ。こうしたことは総理主導でしかできず、去年、当時の総理大臣が『1日当たり100万回』と言ったが、そのぐらいの気概でやってほしい。本当に国民が渇望している」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「自衛隊の大型接種会場について、そういった要望があることは事実なので、来週から東京の会場でも接種の容量や能力を引き上げ、大阪でも接種会場を開始する。地方自治体でも大型の接種会場の設置に協力をいただく取り組みを進め、拡充を考えていきたい」と述べました。

日本維新の会の空本誠喜氏は3年前の参議院選挙をめぐり、河井克行元法務大臣が実刑判決を受けた大規模な買収事件で、東京の検察審査会が、広島県議会議員ら35人を「起訴すべきだ」と議決したことについて「まだまだ説明責任を果たしていない。明確な説明をしてほしい」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「個別の事件の判断に関わるので、何か申し上げることは控えたい。しかし、国民の政治不信を招いた批判があることは重く受け止めなければならず、今後もさまざまな声に謙虚に耳を傾けて、国民の期待に応えられるよう取り組んでいかなければならない」と述べました。

国民民主党の岸本周平氏は、2025年度の基礎的財政収支の黒字化も可能だとする政府の最新の試算について「およそ実現不可能な高い経済成長率を前提に、国民の誰もが実現できないと思っている目標を掲げて頑張るのは、かえって財政規律をゆがめることになるのではないか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「デフレ脱却、経済再生に向けて、成長戦略などの政策効果が過去の実績も踏まえたペースで実現していく姿を示した。本当に日本が経済成長することができるか、しっかりと考えて実行しなければいけない」と述べました。

共産党の宮本岳志氏は財務省が決裁文書を改ざんした経緯について自殺した近畿財務局の男性職員がまとめたいわゆる「赤木ファイル」をめぐり「安倍政権以来、公文書の改ざん、統計の改ざん、虚偽答弁が繰り返されてきた。当時、財務省理財局が近畿財務局に宛てたメールの内容は国会議員を愚弄するもので、役所が省をあげて国会をあざむいてきたのではないか」と追及しました。

これに対し、鈴木財務大臣は「決裁文書の改ざんを含め、当時の国会への対応は誠に遺憾で、深くおわびを申し上げなければならない。そのうえで、早く資料を提出しろとしばしば言われるが、個々の事案の内容に応じ、不開示情報の有無の確認作業など、中身の精査に時間を要することもあり、ご理解いただきたい」と述べました。

また岸田総理大臣は、東京都などから要請があった場合、緊急事態宣言を発出するか問われたのに対し「病床の状況も踏まえ、まん延防止等重点措置の効果も見極めたうえで総合的に判断する。少なくとも、現時点で宣言の発出は検討していない。宣言は、自治体の意見も聞くが、政府として責任を持って判断しなければならない」と述べました。

国土交通省 統計データの書き換え問題とは

不適切なデータの扱いが明らかになったのは、国土交通省の「建設工事受注動態統計」です。

全国の建設業者が公共機関や民間から受注した工事の金額などを示す統計で、国の統計の中でも特に重要な「基幹統計」に位置づけられています。

この統計で、去年12月▽都道府県を通じて業者から集めた「調査票」について、国土交通省の担当者がデータを書き換えるよう指示したり▽データの二重計上が行われていたことが明らかになりました。

問題の発覚を受けて、弁護士など第三者による検証委員会がまとめた報告書では▽データの書き換えが始まったのは統計が今の形になった2000年度より前だとしたうえで▽二重計上については2013年度に統計の手法を見直した際に生じたと認定しました。

データの扱いについて、2019年11月には会計検査院から不適切だという指摘がありました。

このため、国土交通省は、翌年の1月以降は都道府県に対して書き換えをやめるよう指示したとしていて、問題が発覚したあとの去年12月の国会では、斉藤国土交通大臣も「正しい手法で統計をとっている」と答弁していました。

ところが第三者委員会の報告書では、それ以降も一部の都道府県では書き換えが続いていた可能性が指摘されました。

また報告書では、厚生労働省の統計をめぐる不適切な処理を受けた政府の一斉点検や、会計検査院による指摘のあとも、国土交通省が問題を公表してこなかったことについて、「『隠蔽工作』とまでいうかどうかはともかく、幹部職員が責任追及を回避したいといった意識があったと考えざるをえない」と厳しく批判しています。

この問題で国土交通省は、これまでに幹部職員ら10人を処分するとともに、専門家も交えた会議を設け再発防止策やデータの復元方法などの検討を始めています。