抗原検査やPCR検査ができない 感染急拡大で検査キットなど不足

新型コロナウイルスへの感染者の急拡大に伴って、陽性の判定などに使う抗原検査やPCR検査の検査キットなどが不足しています。
小児科では希望する患者の検査が十分にできない状態になっているほか、医薬品卸売会社でも在庫がほぼなくなり、入荷のめどが立たない状態になっています。

薬局 新たな入荷の見通し立たず

奈良県大和郡山市内にある薬局では、症状のない県民を対象に無料で抗原検査を行っています。

今月21日の開始後、25日午後までに29人が検査を受けました。

毎日、10件から20件ほど問い合わせなどの電話が入っているということですが、仕入れていた抗原検査キットは26日昼すぎには在庫が尽きました。

薬局では複数の医薬品の卸業者に問い合わせたものの、新たな入荷の見通しは立っていないということです。
「いろは薬局」で管理薬剤師を務める三浦智之さんは「奈良県内でここまで検査数が多くなるとは思っていなかった。これ以上検査ができない状況ですが、今後も入荷しだい検査を続けていきたい」と話していました。

奈良県薬務課によりますと、医療機関で陽性の確認に使う抗原検査やPCR検査のキットも在庫が不足し、メーカーが出荷調整をしている状況で、今後の供給の見通しは不透明だということです。

県は国に対して検査キットの確保と安定的な供給に努めるよう要請することにしています。

小児科 検査できないと伝えると来院しない患者も

大阪 富田林市のふじおか小児科では、先週から新型コロナへの感染が疑われる子どもの診察が急増しています。

この小児科ではこれまで、陽性かどうかの判断は抗原検査キットを使っていました。

検査キットは必要に応じて業者に発注してきましたが、先週から注文しても手に入らなくなり、今は18回分しか残っていません。
複数の卸会社に問い合わせたほか、インターネットでも探しましたが入手できず、今は重症化するリスクのある患者などに限って検査しています。

検査ができないと伝えると、来院しない患者も多いということです。

小児科の医師は、重症化する子どもは非常に少ないので、検査ができないことで不安に感じないでほしいとしながらも、診断や治療を行う医療機関で検査ができる体制を整えてほしいと訴えています。

藤岡雅司医師は「診断のために必要な検査なのに、必要な人全員にきちんとやったら、本当に1日でキットが無くなってしまう。検査をしないと発生届を出すこともできない。街なかで無症状の方への検査がされる一方、医療現場に回ってこない現状を、とても残念に思います」と話していました。

卸売会社「年末までは在庫あり こうした事態は予想外」

大阪に本社がある医薬品卸売会社「ケーエスケー」では、新型コロナの陽性の判定などに使う抗原検査キットやPCR検査用の試薬を医療機関や事業者に卸しています。

このうち抗原検査キットは、オミクロン株の感染拡大に伴って、今月の3連休明けから発注が急増しました。

キットの出荷は、2万3千回分余りだった去年12月に比べ、今月は数週間で11万回分余りと5倍近くになり、先週末には物流倉庫などの在庫がほぼなくなったということです。

現在は事業者に卸すのをいったんやめ、わずかでも入手できれば優先的に医療機関に卸していますが、今後の入荷のめどは立たず、PCR検査用の試薬も同じような状況だということです。

取引先の中には、キットがなく検査ができないので、発熱外来を一時休止している医療機関も出ているということです。

ケーエスケー医療関連部の森博昭 営業第3課長は「年末までは各メーカーの在庫もかなりある状況だったので、こうした事態は予想外でした。メーカーの生産もまだ不透明なところが多く、いつ供給できるようになるかわからない状況です」と話しています。