日銀が“利上げ??”揺り動かされた金融市場【経済記者コラム】

金融市場の動きを読み解く「マーケット興味津々」のコーナー。17日の週、外国為替市場は日銀の「利上げ議論」という観測で大きく揺れ動きました。日銀が長く続けてきた金融緩和を修正することはありうるのか。市場の疑心暗鬼を少し深掘りしてみました。(経済部記者 古市啓一朗)

1月18日の午後0時すぎ、ドル円相場は突如、大きく円安方向に動きました。

午前中は1ドル=114円50銭前後の取り引きでしたが、11時40分すぎ、日銀が金融政策決定会合の結果を発表したとたん、円安が加速したのです。

12時50分ごろには1ドル115円6銭をつけました。

およそ1時間で50銭ぐらい円安が進行したことになります。

背景にあったのは、日銀の金融政策運営についての公表文で、特段の政策変更がなかったことでした。

なぜ、政策変更がないのに円安に傾くのか。

その理由は前の週から一部の投資家が日銀の政策スタンスを思惑をもって見つめていたからでした。

きっかけとなったのは1月14日朝、ロイター通信が伝えた記事。

「日銀が、2%の物価目標に達する前に利上げすることが可能かどうかを議論している」との内容でした。

日銀は「2%の物価目標達成のため、粘り強く金融緩和を続ける」と繰り返し説明してきているなかで、投資家に与えたインパクトは小さくありませんでした。

市場関係者からは「日銀をめぐる動きが主因で為替が円高に振れたのは相当久しぶり」とか、「物価上昇に日銀でも何らか対応を迫られるのか」「本気で日銀は緩和の修正を議論しているのか?」などの声が聞かれ、疑心暗鬼が広がりました。
円相場はこの日、1日で1ドル=114円台前半から113円48銭まで、50銭程度円高が進みました。

18日に日銀が金融政策を発表し、まったくの無風だったことで思惑でポジションを傾けていた投資家が「なんだ、そういうことなんだ」と円を売ったことで相場が動いたと市場関係者は説明します。
金融政策決定会合後に行われる記者会見で黒田総裁にはこの「利上げ」に対する質問が出ました。

黒田総裁は「そうした議論は全くしていない」「資源価格や商品価格の一時的な上昇を金融政策で止めるのは適切ではない」と、珍しく語気を強めて、きっぱり否定しました。

日銀はあわせて示した展望レポートで、新年度・2022年度の物価の見通しについて1.1%、2023年度も1.1%と示しました。

ある市場関係者は、これだけさまざまなモノの値段があがっているのに目標の2%にほど遠いとはかなり控えめだとの印象をもったといいます。

日銀はいまの物価上昇は、原油など資源や原材料高騰という「一時期な要因」が大きく、持続するか判断がつかないとしているからです。
ただ、石油など資源価格の高騰、円安による輸入コスト上昇などが重なり、私たちは日々、値上げのニュースを目にしています。

この流れが進むと、そう遠くない時期に日銀が目指さない形で物価上昇率が2%に近づく可能性も指摘されています。

そのとき日銀はどう対処するのか。

日本は2007年以降、利上げを行っていません。

国の財政は巨額の国債費で賄われており、金利が上昇すれば財政負担がさらに増すことになりますし、企業も金利上昇という環境に慣れていません。

そういえば週後半はアメリカのインフレ長期化への懸念と利上げが早まるのではないかとの観測もあって株価は大幅に値下がりしました。

海の向こうでは利上げ、こちらでは緩和継続、大きなギャップがさらに投資家たちを悩ませています。

注目予定

来週の注目は、何といっても日本時間27日の未明に発表されるアメリカ・FRBのFOMCの声明と、パウエル議長の記者会見です。インフレを抑制するため、市場では、FRBがゼロ金利を3月にも解除し、利上げに踏み切るのではないかという観測も出ています。どんな姿勢を示すのかに市場は注目しています。
また、EV=電気自動車大手のテスラ、アップルなどアメリカの主要企業の決算にも注目です。