【詳しく】北京オリンピック開幕へ コロナ禍でどんな大会に?

東京オリンピックに続きコロナ禍での開催となる北京オリンピックが、まもなく開幕します。

北京で新型コロナの変異ウイルス、オミクロン株の感染が確認されるなか、感染を徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策を進める中国は、どんな大会にしようとしているのでしょうか?

そして、この大会は、みずからの権威を高める動きを加速させる習近平国家主席にとって、どんな意味をもつのか?
注目点を解説します。

(中国総局記者・巻田直紀、国際部記者・建畠一勇)。

北京オリンピックはどんな大会?日程は

中国で初となる冬のオリンピックです。

北京と、隣接する河北省の張家口で2月4日から17日間にわたって開かれ、7つの競技で史上最多の109種目が行われます。

大会のスローガンは「ともに未来へ」。大会組織委員会は「世界が新型コロナとたたかう中、手を携えて未来に向かおうという共通の願いを表した」と説明しています。

東京大会はほとんど無観客。北京オリンピックで観客入れるの?

組織委員会は、感染対策のため海外からの観客の受け入れは見送り、中国本土の居住者に限って認めるとしていました。

しかし、大会まで3週間をきった今月17日に、これまでの方針を変更し、一般向けのチケットは売らず、会場での観戦は招待したグループに限定すると発表しました。感染状況を考慮した結果だとしています。

多くの市民が会場で観戦するのは難しく、今のところ現地の盛り上がりは感じられない状況です。

大会の感染対策はどうなっているの?

去年の東京大会よりも厳しい感染対策がとられます。選手を含む大会関係者は原則として事前にワクチン接種を完了することが求められ、追加接種も「強く奨励」されています。

医学的な理由を除いて、ワクチンを接種していない場合は、中国に入国後3週間の隔離措置がとられます。PCR検査は全員が毎日受けます。

大会関係者を外部の人たちと接触できないようにする、いわゆる「バブル方式」の感染対策が実施される点は東京大会と同じです。

東京大会では、一部の関係者が街なかを歩き回るなど対策の不備も指摘されましたが、北京大会の組織委員会は、出場資格の停止などの罰則を含め、ルールを厳格に運用する姿勢を強調しています。

競技会場などの様子は?

厳戒態勢がしかれています。スキー競技が行われる河北省張家口の会場周辺では、一般客向けのスキーリゾートが3月末まで営業停止となりました。
近くの高速道路の出口や高速鉄道の駅では警察による検問が行われ、PCR検査の陰性証明などの提示が求められます。

先月にかけて、本番の会場で相次いで行われたテスト大会では、メディアにも厳しい感染対策が求められました。使用する通路や撮影エリアは厳密に指定され、選手などと対面で接触することはいっさい禁じられました。
感染対策にはハイテク技術を駆使し、競技会場などでは無人で消毒を行うロボットなども導入されます。

中国国内の感染状況は?

北京では、今月15日にオミクロン株の市中感染が初めて確認され、一気に警戒が強まっています。

地元当局は、感染者が出た地区を中心に大規模なPCR検査を行ったほか、今月22日以降に北京に入る人には、事前のPCR検査に加えて、到着後、72時間以内に改めて検査を受けるよう新たに義務づけました。

また、当局は、最初のオミクロン株の感染者について、「カナダから届いた郵便物を通じて感染した可能性が排除できない」と主張し、カナダ政府は「異常な考え方だ」としています。

オミクロン株の市中感染は、今月上旬に、北京に隣接する天津で確認されて以来、上海や河南省、広東省など各地に広がりました。こうした中でも大会組織委員会は、オリンピックを予定どおりの日程で開催する姿勢を崩していません。

なぜ厳重な対策をとるの?

中国は、わずかな感染拡大も許さず徹底した対策で感染を封じ込める「ゼロコロナ」政策をとっているからです。

当局は、感染者が出るとその地区をすぐに封鎖し、大規模なPCR検査を行います。スマホのアプリを通して国民一人ひとりの感染のリスクを判断する「健康コード」の利用も広く浸透させていて、こうした感染対策が「有効」だと自信を深めています。

中国の衛生当局の発表では、今月に入ってからも全国の1日当たりの市中感染は200人以下で推移していて、1日に報告される感染者が100万人を超えた日もあるアメリカや、このところ感染が急速に拡大している日本などと比べて大幅に低い水準にとどまっています。

なぜ「ゼロコロナ」にこだわるの?

「ゼロコロナ」政策が、習近平指導部の大きな功績だと位置づけられているためです。中国情勢に詳しい神田外語大学の興梠一郎教授は、「ゼロコロナ」の位置づけについてこう解説します。
神田外語大学 興梠一郎教授
「中国はずっと『自分たちは厳しい措置を講じて世界にコロナを広げないようにしている。欧米は対策がだらしないので世界にコロナを広めている』という論理のもとでやってきた。要するに民主主義体制よりも中国共産党による挙国一致体制のほうがコロナを封じ込めるのに有利だと主張してきた。この方針を覆してしまうと、自分たちがやってきたことが間違いだったということになってしまうので、厳しい措置を緩めようにも緩められないという実情がある」

ただ、「ゼロコロナ」政策は個人消費の停滞など中国経済の減速の要因の一つになっています。興梠教授は、中国が「ゼロコロナ」にこだわるのは、国内のぜい弱な医療体制も背景にあると指摘します。

神田外語大学 興梠一郎教授
「とくに農村は医療条件が極端に悪く、病院も足りていないので、農村でコロナが広がって収拾がつかなくなってしまうことが習近平指導部としてはいちばん怖い。欧米とは医療体制が全く異なる中で、欧米のようにウィズコロナをしようとしてもできないというのが実態だ」

大会にかける習主席の思惑は?

習主席としては、厳重な対策のもとでオリンピックを成功させ、「ゼロコロナ」政策は正しいと国内外にアピールしたい考えです。

ことし後半には共産党の最高指導部の人事を決める党大会が予定されています。党トップとして異例の3期目入りを目指すとされる習主席にとって、北京オリンピックは政治的な意味合いが非常に強いイベントだと見られています。

神田外語大学 興梠一郎教授
「ことしは習主席にとってすごく大事な年なので、年の初めに国家あげてのイベントである北京オリンピックを成功させることで、この功績をもとに、さらなる求心力の強化につなげたいというねらいがある。中国の強大な共産党の政権だからこそ、挙国一致体制でコロナを乗り切り、北京オリンピックをやりとげたとアピールしたいのだろう」

アメリカなどの「外交的ボイコット」にどう対抗する?

先月、アメリカやイギリス、オーストラリアなどが中国の新疆ウイグル自治区での人権問題などを理由に北京オリンピックに政府関係者を派遣しない「外交的ボイコット」を表明しました。

日本は、「外交的ボイコット」という表現は使っていませんが、政府関係者の派遣を見送ることを決めました。さらに、先週、デンマークも外相が派遣見送りを表明しています。

一方、中国は、ロシアのプーチン大統領が開会式への出席を決めたことを大々的に宣伝しています。さらに、王毅外相は、このところ、巨大経済圏構想「一帯一路」のもとで関係を強めるカザフスタンなどの国々に対し、政府代表を開会式に招待しようと働きかけています。

コロナ禍でも、できるだけ華々しく大会を開催し、メンツを保ちたいという思惑もありそうです。