【詳しく】薬がない…ジェネリックから先発品まで なぜ?

いつもの薬局で飲み慣れた薬を受け取ろうとしたら、「その薬が今、不足していまして…」

実は今、全国各地でかつてない規模の医薬品の供給不足が続いているんです。

どの薬が?なぜ?いつまで続く?
今わかっていることと注意点をまとめました。

どの薬が足りない?

出荷が止まったり制限されたりして薬局や医療機関への入荷が滞っている薬は少なくとも3000品目以上に上っていると、厚生労働省はみています。これは医療用の医薬品全体のおよそ2割にあたります。

それらの薬が使われている病気のうち、主なものは以下のとおりです。
(※2022年1月20日時点で製薬会社のHPで確認)
▼アレルギー(ぜんそく、じんましん、アトピー、花粉症、鼻炎…)
▼高血圧、狭心症、不整脈
▼てんかん
▼気管支炎
▼肺炎
▼リウマチ
▼胃炎、胃潰瘍
▼骨粗しょう症
▼心不全、狭心症
▼脳卒中
▼ウイルス感染症…

このほかにも
▼解熱鎮痛剤
▼抗菌薬なども含まれています。

薬がない時 どうするの?

「いつも飲んでいる薬」が足りない時、薬局では多くの場合、処方した医師とやり取りしたうえで、別のメーカーが製造する「同じ成分の薬」を代わりに渡しています。

NHKの取材班が東京・西東京市の薬局で12月に取材した際には、「薬の不足で患者のうち『4、5人に1人』の割合で別の薬に切り替えざるをえなくなっている」ということで、ほかの薬局でも同様の割合で話す薬剤師の方がいました。

また、今月13日に取材した都内の別の薬局の薬剤師は「日を追うごとに状況は悪化している印象だ」と話していて、こうした状況は今なお各地の薬局や医療機関で続いています。

なぜ起きた?

きっかけは、1年余り前の2020年12月に発覚した福井県のジェネリック=後発医薬品メーカー「小林化工」の不祥事です。
水虫などの真菌症の治療薬に睡眠導入剤の成分が混入し、全国各地の240人以上に健康被害が出たほか、国が承認していない工程での製造などの不正を長年にわたり組織的に隠蔽し続けていたことなど悪質な実態が明らかになりました。

こうした医薬品への信頼を根底から覆す事態を受け、全国の都道府県が事前の通告なしで立ち入り調査を行うなど査察が強化され、メーカーによる自主点検も行われました。

その結果、ジェネリック大手3社の1つ「日医工」(富山)をはじめ複数のメーカーで製造工程の問題が見つかり、相次いで業務停止命令が出されるなどして幅広い種類の医薬品の出荷が次々に止まりました。

発端となった「小林加工」は業務停止命令の期間の後も再開には至らず、工場などを別のジェネリック大手に譲渡することになったほか、「日医工」は本格的な再開には至っていません。
医薬品問題に詳しい神奈川県立保健福祉大学大学院の坂巻弘之教授は「かつてない規模の供給不足だ」としています。そのうえで、発端から1年あまりたってもなお供給不足が続いていることについて、次のように話しています。

「ある会社の出荷が止まると、同じ成分の薬を作っている別の会社に注文が集中します。注文を受けた会社でも自社の供給量を上回って出荷を制限せざるを得なくなり、さらに別の会社へと玉突き状態のように出荷調整が広がっていきます。こうしたことで大きくなった供給不足の状況は去年の夏ごろをピークに、その後も回復しないまま今に至っているとみています」

薬が変わった…どうすれば?

薬局でもしも、いつもと違う薬を渡されたらどうすればいいのか。西東京市の薬局で取材した薬剤師のアドバイスをもとに、まとめた注意点を2つご紹介します。

【注意点その1】薬剤師の説明をよく聞く

当たり前のことと思うかもしれませんが、病院で処方を受けた薬を薬局でもらう時の説明をしっかりと聞くことがまずは大切です。なぜなら元の薬と薬の成分は同じでも、メーカーが違えば「色」や「形」、「飲む回数」や「タイミング」が変わることがあるからです。
飲み忘れて症状がぶり返したり、逆に「いつもの薬」が手元に残っている場合には重複して飲んでしまって副作用が出たりするおそれもあるということです。

心配な時には、次の日に飲む分を前の日のうちに袋に小分けにしておくのがおすすめだそうです。ただし湿気に弱い薬もあるため、シートなどから出すのは「1日分だけ」にしておいてほしいということです。

【注意点その2】不調を感じたらすぐ相談

同じ成分であれば別のメーカーの薬になっても、基本的には同じ効果が期待できます。しかしメーカーによって添加物などが違っていて、体質的に合わない人もまれにいます。

いつもの薬よりも効果がないように感じたり、体の不調を感じたりしたときは遠慮せず、すぐにかかりつけの薬局に相談してください。

「元の薬」いつ戻る?

この医薬品不足、いったいいつまで続くのでしょうか。

残念なことに来月や再来月にも解消、といった状況ではなさそうで、当面は今の状況が続く見込みです。

薬の生産に目を向けると、まずは出荷が止まって供給が減った分の増産が必要ですが、安全性が厳しく問われる医薬品の場合、生産設備の増強に1年はかかるということです。

一部のメーカーでは工場の稼働時間を延ばす対応を取っていますが、1割から2割程度の上乗せが精いっぱいで、不足分を補うにはほど遠いのが現状です。
こうした中で大規模な増産が可能になるタイミングの1つの目安となっているのが、ジェネリック大手の「沢井製薬」と「東和薬品」の2社が、去年秋に相次いで発表した大規模な増産計画です。

2年後の2024年中にあわせて数十億錠規模の生産能力を増強するというもので、これによって現在の薬不足は段階的に解消に向かうと期待されています。

一方で厚生労働省はメーカー側に増産を要請したり、必要以上の発注を控えることなどを薬局や医療機関に呼びかけていますが、十分な効果が出ているとは言えない状況です。

神奈川県立保健福祉大学大学院の坂巻弘之教授は「アメリカでは政府機関がどの薬がいつ頃まで不足しそうなのかをメーカーから情報を集めて提供していて、混乱を治めるには、こうした仕組みを国が急いで整える必要がある」と指摘しています。

この問題について、以下の「NHK医薬品不足取材班」の投稿フォームから情報をお寄せください。(お手数ですがURLをコピー&ペーストして入ってください)

(投稿フォーム)https://forms.nhk.or.jp/q/NE1002IE