ジョコビッチ ビザ取り消し撤回認められず オーストラリア出国

テニス男子シングルス世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ選手が、新型コロナワクチンの接種を巡り、オーストラリアへの入国を拒否された問題で、現地の裁判所は16日、オーストラリア政府によるビザ取り消しの撤回を求めたジョコビッチ選手の訴えを退けました。
これを受けてジョコビッチ選手は16日夜、オーストラリアを出国しました

ジョコビッチ選手は全豪オープンに出場するため、今月5日、メルボルンの空港に到着したところ、入国を拒否されました。

選手側は先月、新型コロナに感染したことからワクチン接種の免除が認められたと主張したのに対し、オーストラリア政府は、免除は認められないと主張し、裁判所は10日に政府の対応には合理性がないとして入国を認めるよう命じていました。

これに対しオーストラリア政府は14日にビザを再び取り消し、選手側は裁判所に改めて異議の申し立てを行いましたが、裁判所は16日にビザ取り消しの撤回を求めたジョコビッチ選手の訴えを退けました。

裁判で政府側は、選手が滞在すれば国内の反ワクチン感情を助長するおそれがあると主張したのに対し、選手側は、政府の主張には合理性がなく、ジョコビッチ選手はオーストラリア社会の健康や秩序を脅かす存在ではないと反論しました。

裁判のあとジョコビッチ選手は「決定を尊重し、出国に関して関係する当局に協力する」とする声明を発表し、16日夜、メルボルンの空港から出国しました。

ジョコビッチ選手は大会4連覇と、四大大会で史上最多となる通算21回目の優勝を目指していたことしの全豪オープンには出場できないことになりました。

豪 モリソン首相 「決定を歓迎」

オーストラリアのモリソン首相は決定を歓迎する声明を発表しました。

この中でモリソン首相は「ビザの取り消しは、健康と安全そして秩序のため公共の利益にかなうとの理由で行われた。国境を強固に管理し、オーストラリア国民の安全を守るための決定を歓迎する」としてビザを取り消した政府の対応の正当性を改めて強調しました。

そのうえでモリソン首相は「今回の問題に対して裁判所が迅速に対応し、関係者が忍耐強く取り組んでくれたことに感謝する。全豪オープンを楽しむ時がきた」としています。

ジョコビッチ「欠場は極めて残念 決定を尊重し当局に協力」

一方、ジョコビッチ選手は声明を発表し「裁判所の決定により、オーストラリアにとどまることができないこと、そして全豪オープンに出場できないことは極めて残念だ」としたうえで「決定を尊重し、出国に関して関係する当局に協力する」としています。

また「この数週間、自分が注目されてきたことは気持ちのいいものではありません。これ以上のコメントはせず、しばらく休み静養する時間にあてたい」としています。

主催者「裁判所の決定尊重」 ATP「損失」

裁判所がジョコビッチ選手の訴えを退けたことを受けて、全豪オープンの主催者は声明を発表し、「裁判所の決定を尊重する。ことしの全豪オープンが白熱した大会になることを期待するとともにすべての選手の幸運を祈る」として裁判所の判断を支持する考えを明らかにしました。

一方、男子ツアーを運営するATP=男子プロテニス協会は公式ホームページで声明を発表しました。

その中で「このような事態に至った経緯はともかくジョコビッチ選手は私たちにとって最も偉大なチャンピオンの1人であり、彼が全豪オープンに出ないことは損失だ。彼の無事を祈るとともに近いうちにコートに戻ってくるのを楽しみにしている」としています。

そのうえでワクチンの接種については「すべての選手に強く推奨している」としてその重要性を訴えています。