米の感染者 最も深刻な水準に 生活にも影響

アメリカでは一日に報告される新型コロナウイルスの感染者が一時、100万人を超えこれまでで最も深刻な水準となっています。
感染が急速に拡大する中、学校での対面授業を取りやめる地域が出ているほか、公共交通機関で職員の感染が相次いで遅延や運休が慢性化するなど、生活にも影響が出ています。

ジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、アメリカで一日に報告される感染者の数は今月3日、およそ117万人に達しました。

年末年始の分がまとめて報告された影響もあると見られますが、その後も一日の感染者数が60万人を超える日が続いていて、1週間平均は7日時点で77万人余りに達し、これまでで最も多かった去年1月の水準を超えています。

特に、東部のニューヨーク州やニュージャージー州、それに南部のフロリダ州などで感染の拡大が深刻で、これらの州ではウイルス検査で陽性になった人の割合が25%以上となっています。
こうした中で、アメリカ各地ではクリスマス休暇を終え、学校が再開する時期を迎えましたが、学校を介して感染が広がるおそれがあるうえ、学校に通う年代はワクチン接種が始まった時期が遅かったため、接種を完了した割合が5歳から11歳で16.7%、12歳から17歳で53.9%とほかの年代より低く、安全に対面授業が続けられるか、不安の声も出ています。

このため、一部の地域では対面授業の再開を延期したり、リモート授業に切り替えたりするところが出ています。
さらに、ニューヨーク市の公共交通機関では感染した職員が欠勤するなどして、運行に影響が出ていて、バスの遅延や地下鉄の運休が慢性化するなど生活にも影響が出ています。

入院する患者も増加

アメリカでは、感染者の急激な増加に伴い、入院する患者も増えています。

CDC=疾病対策センターによりますと、新たに入院する新型コロナウイルスの患者は、6日時点の1週間平均で1日当たり1万7000人を超え、過去最も多くなっています。

入院している人の合計も今月6日時点で10万人を超えていて、各地で医療機関の能力がひっ迫する事態になっています。

東部メリーランド州では、4日、新型コロナウイルスに感染して入院している人が3000人を超えて過去最多となり、非常事態宣言を出しました。

また、同じ東部のマサチューセッツ州でも一般の病床の93%、ICU=集中治療室の86%が使用されていて、緊急ではない手術を延期するなどの措置がとられているほか、ニューハンプシャー州では医療機関の人手不足が深刻になり、州兵が医療機関に派遣され、医療以外の業務を手伝う事態になっています。

オミクロン株は、これまでの変異ウイルスに比べて重症化しにくい可能性が指摘されていますが、医師で、ブラウン大学公衆衛生大学院のメガン・レニー准教授は「感染者の数に対する入院者の割合は、これまでより低くとどまっているものの、感染者が多すぎるため、入院する人の数は以前と変わらず、医療機関が対応しきれなくなっている。非常に厳しい冬になるだろう」と述べています。

また、アメリカ政府の首席医療顧問を務めるファウチ博士も「オミクロン株が重症化しにくいからといって感染対策を緩めてもいいということにはならない」と警告しています。

アメリカで感染拡大が深刻な東部の州は、新型コロナウイルスワクチンの接種率が比較的高いものの、今後、東部に比べると接種率が低い州が多い南部や中西部で感染が拡大した場合、重症化する人が増え、医療機関の能力がさらにひっ迫する可能性が指摘されています。

バイデン政権 “学校での対面授業 継続すべき”

アメリカのバイデン政権は、新たな変異ウイルスのオミクロン株の感染が急速に拡大する中でも学校での対面授業を継続すべきだとしています。

バイデン大統領は今月4日「子どもは、学校にいるときは安全だということを私たちは知っている。だからこそ、学校は継続して開くべきだと考えている」と述べ、子どもの心身の健康や進学のためにも対面授業の重要性を強調しました。

こうした方針を受けて、ニューヨーク市のアダムズ市長も今月初めに開いた会見で「私たちは学校を開き続け、子どもたちが安全な環境で過ごせるようにする」と述べ、対面での授業を続けるためにも対策を徹底するとしています。

具体的には、学校では、教師や子どもにマスクの着用を義務づけるほか、対象となる5歳以上の子どもに対してはワクチンの接種を促しています。

また、クラスなどで感染が確認されても、ほかの子どもに対しては自宅でウイルスの検査ができるキットを配り、陰性が確認され、症状がない場合は通学できるとしています。

3人の子どもを学校に通わせている母親は「学校での感染対策は難しい面もありますが、仕事をしている親にとって、学校が閉まると大変なので授業の継続はありがたいです」と話していました。

ただ、教職員の間からは安全を最優先にして授業はオンラインにすべきだという声も上がっていて、一部の地域では対面授業の再開を延期したり、リモート授業に切り替えたりするところが出てきています。

また、中西部イリノイ州シカゴでは、学校の感染対策が不十分だとしてオンラインでの授業を求める教職員側と、対面で授業を行いたいとする市長との間で折り合いがつかず、臨時休校となるなど混乱が続いています。

感染拡大の影響 公共交通機関にも

感染拡大の影響は、公共交通機関にも及んでいます。

ニューヨーク州で地下鉄やバスなどを運行している交通公社によりますと、感染の急拡大で人員が確保できないとして、今月4日から地下鉄の3つの路線では全面的に運休しているということです。

また、これ以外の路線でも、人員不足の影響で運行する列車の本数を減らすなどの対応がとられています。

タイムズスクエアの近くの地下鉄の駅では多くの人が列車の到着を待っていて、混雑する中で掲示板に貼り出された運行情報を確認していました。

一方、航空便の運航への影響も広がっています。

アメリカメディアによりますと、今月2日までの年末年始の10日間で、人員不足に加えて悪天候の影響も重なって全米で1万4000便以上が欠航したということです。

さらに、デパートやレストランなどでも感染拡大の影響が続いていて、ニューヨークのマンハッタン中心部にある老舗デパートでは、客や従業員の安全を守るためとして、営業時間を通常より短縮する措置をとっています。