「まん延防止」で再び生活に制限? “第6波突入”に危機感も

新型コロナウイルスの急速な感染拡大で、沖縄、山口、広島の3県が政府に対して、まん延防止等重点措置の適用を要請しました。
去年9月末に緊急事態宣言や重点措置が解除されてからおよそ100日。
再び、私たちの生活に制限がかかることになりそうです。

日本医師会会長「全国的に第6波に突入した」

6日に発表された新型コロナウイルスの新たな感染者は、全国で合わせて4000人を超えました。1日の新たな感染者が4000人を上回るのは、去年9月18日以来です。

日本医師会の中川会長は記者会見で「全国的に第6波に突入したと考えている。特に今回は、新規感染者の増加スピードが極めて速く、想定を超える爆発的な感染拡大が起きれば、必然的に重症者が増加し、医療機関は対応しきれなくなるおそれがある」と述べ、強い危機感を示しました。

沖縄県 新たに981人感染確認

6日、新たに981人の感染が確認された沖縄県。
これまでで最も多かった去年8月25日の809人を上回り、過去最多となりました。
那覇市の国際通りにある、無料でPCR検査が受けられる民間の検査機関には、受け付け開始の午前9時半より前にすでに行列ができていました。
そして、整理券の配布も、受け付け開始前に終わってしまいました。
那覇市の中心部では不安を訴える声が相次いで聞かれました。
那覇市の60代の女性は「感染が怖いのできょうを最後にしばらく外出はしないでおこうと考えています」と話していました。
また、那覇市の80代の男性は「居酒屋などに大勢の人がいるのでもっと厳しく規制した方がいいと思う。心臓に持病があるので、コロナに感染したら命に関わるかもしれないが病院にいくのも怖いと感じています」と話していました。
感染急拡大の影響はすでに観光業に出ています。
沖縄市にあるホテルでは、去年9月末に緊急事態宣言が解除されたあと予約は回復傾向にありましたが、感染者の急増を受けて予約のキャンセルが相次ぎ、6日朝の時点で今月と来月分でおよそ160件にのぼっています。

このホテルグループの田中正男取締役社長兼COOは「これまでは、じわじわと感染者が増え詰め将棋のようだったが、今回はボードゲームの白黒がいっきにひっくり返ったようでショックです。県や政府にリーダーシップをとっていただき、業界の支援をしてほしい」と話していました。
沖縄県は6日午前、新型コロナウイルスの対策本部会議を開き、今月に入り、新規感染者の数が急激に増えていることから、政府に対してまん延防止等重点措置の適用を要請することを正式に決定しました。

玉城知事は記者会見で「それぞれの事業者がまん延防止措置に、積極的に取り組んでいただきたい。それによって数値が改善できることをわれわれも期待していきたい」と述べました。
そのうえで玉城知事は、重点措置を適用する区域については、感染拡大を抑える観点から、全県的に対応する必要があるとして、すべての自治体にする方針を明らかにしました。

山口県 新たに181人感染確認

山口県では、アメリカ軍岩国基地の関係者の感染が相次いで発表されている岩国市を中心に感染が急激に拡大していて、6日に発表された感染者数はこれまでで最も多い181人となりました。
山口県でも6日、新型コロナウイルス対策本部会議を開いて、政府に対してまん延防止等重点措置を要請することを決め、直ちに要請したということです。
県は、岩国市と隣接する和木町を対象に重点措置を適用する方針で、期間は今月9日から31日までを求めることにしています。
要請が受け入れられれば、山口県でまん延防止等重点措置が適用されるのは初めてとなります。
山口県の村岡知事は「県内の感染者数は4日間で10倍近くに増えていて、感染力の強さを改めて痛感する」などと述べ、感染の第6波が始まっているという認識を示しました。
そのうえで「少しの遅れが大変な感染拡大につながる。速やかに措置を講じて感染をしっかり抑え込んでいきたい」と述べました。
県がまん延防止等重点措置の適用を要請したことについて、岩国駅前で受け止めを聞きました。
岩国市の70代の女性は「要請については、感染が広がっているのでしかたがないと思う。4、5日前にラーメンを食べに行こうと思ったが、店内が混雑していて、マスクをつけていない外国人が多かったので利用を控えた」と話していました。
また、東京から帰省中の10代の男子大学生は「オミクロン株が地方にこんなに早くやってくるとは思わなかった。自分が感染したり、感染を広げたりしないよう、岩国では友達とは直接会わずにオンラインで会話をした」と話していました。

広島県 新たに273人感染確認

広島県では6日、新たに273人の感染確認が発表されました。
1日の発表が250人を超えるのは去年9月1日以来です。
広島市内で街の人たちに受け止めを聞きました。
60代の女性は「感染者が増えると思っていたが、広島でこの人数になるとは思わなかった。早く収まって平穏な生活ができたらいいと思う」と話していました。
20代の会社員の男性は「年末年始の人出を見て感染者が増えると思っていた。外出を抑えるなどはっきりと対策をとってほしい」と話していました。
こうした中、広島市などでは今月10日に予定していた成人式の延期が決まりました。
広島市中区にある貸衣装店では、成人式に合わせて振り袖などのレンタルの予約が30件ほど入っていて、振り袖や小物を一式にまとめるなどして準備を進めてきましたが、延期を受け、準備した衣装や小物をたなや箱に戻すなどの作業に追われていました。
貸衣装店「三栗矢」の栗川文博 代表取締役は「延期を想定していた人も多く、そこまで驚かれた様子はありませんが、準備にも時間をかけてきたし皆さんも楽しみにされていたので、ショックです。お客さんの希望を聞いて対応していきたい」と話していました。
感染の急拡大を受けて、広島県も政府に対し「まん延防止等重点措置」を適用するよう要請しました。
適用された場合県は対象区域として広島市、廿日市市、大竹市、府中町、海田町を指定することにしています。

湯崎知事は記者会見で感染状況について「12月末以降、過去に経験したことがない状況だ。このペースで感染拡大が続くとあっという間に過去最大になる。きょうから行動変容してもこのままのペースが続くと1日の新規報告者が8000人に達する。ペースが緩やかになっても1日2000人と推計している。これはオミクロン株の影響だ」と指摘しました。
そのうえで「想像を絶するペースで過去最大になるのは間違いない。医療がひっ迫しているわけではないがオミクロン株は注視する必要がある」と述べ警戒を呼びかけました。

岸田首相 “「まん延防止」諮問行うべき”

岸田総理大臣は6日午後6時ごろから総理大臣官邸で、後藤厚生労働大臣や山際新型コロナ対策担当大臣ら関係閣僚と会談し、重点措置の適用に向けて詰めの協議を行いました。
その後、岸田総理大臣は記者団に対し「きょう、広島県、山口県、沖縄県の各県の知事より、まん延防止等重点措置を適用するよう要請があり、関係大臣と議論した。政府としては3県の感染拡大への早期対応を図る観点から、要請のあった区域について重点措置を適用するとの諮問を行うべきであるという結論に至った」と述べました。

さらに「オミクロン株の感染拡大の速さにかんがみ、重点措置を2つの点で強化する。第1に、知事の判断で酒類の提供を停止することなどさらなる措置を可能とする。第2に、3県が策定した計画に沿って、医療体制の準備状況に関する自己点検を公表し、医療提供体制の確保に万全を期してもらう」と述べました。

「まん延防止等重点措置」とは…

「まん延防止等重点措置」は、特定の地域から感染が広がるのを防ぐため、去年施行された新型コロナウイルス対策の改正特別措置法で新たに設けられました。
緊急事態宣言が出されていなくても集中的な対策を可能にしたもので総理大臣が措置を講じるべき都道府県と期間を公示します。
緊急事態宣言が都道府県単位で出されるのに対し重点措置では対象となった都道府県の知事が市区町村など特定の地域に対策を講じることになります。

重点措置のもとでは飲食店などに対して休業要請はできないものの、営業時間の短縮や酒類の提供停止を「要請」したり、応じない場合には「命令」したりすることができます。
正当な理由がなく「命令」に応じない事業者や立ち入り検査を拒否した事業者への罰則は、20万円以下の過料となっています。

「まん延防止」初の適用は去年4月 大阪・兵庫・宮城で…

重点措置は、去年4月5日に大阪府、兵庫県、宮城県の3府県に初めて適用されました。

当時、3府県は対象地域の飲食店に対し、午後8時までの営業時間の短縮要請を行い、アクリル板の設置などの対策を見回りをして確認するほか、カラオケ設備の利用自粛を求めました。
営業時間の短縮要請に応じた飲食店へは、事業規模に応じた支援策が講じられました。
また、高齢者施設については少なくとも2週間に1回程度の検査を働きかけ、イベントの開催は収容人数の上限を5000人までとし、テレワークの推進などが行われました。

“出す際の考え方” 去年11月に変更

政府は2021年11月に「基本的対処方針」を変更し、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を出す際の考え方について、医療のひっ迫の度合いをより重視して、新たにまとめられた5段階のレベル分類の考え方に基づいて見直しました。

▽緊急事態宣言の発令は、一般医療を相当程度制限しなければコロナ対応ができない「レベル3」相当の対策が必要な状況になった際に、総合的に判断するとしています。

▽まん延防止等重点措置の適用は、同じく「レベル3」か、感染者の増加傾向が見られ、医療の負荷が起き始めているものの、病床の数を増やすことで医療が必要な人への適切な対応ができている「レベル2」相当の対策が必要な状況になった際に、総合的に判断するとしています。

【詳しく】「まん延防止」要請の沖縄・山口・広島について

沖縄県、山口県、広島県が、今回「まん延防止等重点措置」を要請した内容について詳しく見ていきます。

【沖縄県】
▽対象地域は、沖縄県内のすべての自治体です。
▽期間は、今月9日の日曜日から今月末までとするよう求めています。
政府が重点措置を決定した際の県としての対処方針案も決めました。
▽飲食店には、県の認証店では午後9時までの時短営業、認証のない店では午後8時までの時短営業と酒類の提供自粛を求め、要請に応じた場合、認証店には1日2万5000円、認証のない店には3万円の協力金が支払われます。
▽県民には要請に応じない店舗の利用の自粛をはじめ、混雑した場所や感染リスクが高い場所への外出や移動の自粛、都道府県をまたぐ不要不急の移動は控えるよう求めます。
▽県立学校については、分散登校を実施するほか、部活動は原則休止します。
▽会社や職場では、テレワークや時差通勤を行うなどして出勤者数の削減を求めます。

【山口県】
▽対象地域は、岩国市、和木町とする方針です。
▽期間は今月9日から31日までを求めることにしています。
▽対象地域の飲食店に対して、営業時間を午後8時までに短縮し、酒類の提供を自粛するよう要請する方針で、要請に協力した店舗には協力金を支給するとしています。

【広島県】
▽対象地域は、広島市、廿日市市、大竹市、府中町、海田町を指定することにしています。
▽対象地域の飲食店に営業時間を午後8時までに短縮し酒類の提供はしないよう要請することにしています。ただ、準備などに時間がかかることを見込み、適用された日から3日間の猶予を設けるとしています。また、要請に応じた場合には協力支援金を支給するとしています。
▽イベントについても人数の上限を設けるなどの開催要件の扱いを変更し、要件を満たさないチケットの新規販売は行わないよう求めるとしています。
▽重点措置の適用にかかわらず、県民や事業者に対し、6日から対象地域では外出を半分にすることや、WEB会議やテレワークで出勤者を削減して、午後8時以降の勤務を削減することなどを要請しました。
▽緊急事態宣言や重点措置が適用された地域との往来は最大限自粛し、県内でも対象地域との往来は感染防止対策を徹底するなど注意するよう求めています。

東京都 新たに641人感染確認 “爆発的な拡大”に警戒

東京都内の6日の感染確認は641人で、1週間前の木曜日のおよそ10倍に増えました。
6日に開かれた東京都内の感染状況などを分析・評価する都のモニタリング会議で、専門家は「新規陽性者数の増加比が著しく上昇し、これまでに経験したことのない高い水準になった」と述べました。
そのうえで、感染状況の警戒レベルを一段引き上げ、4段階のうち上から3番目の「感染拡大の兆候があると思われる」にしました。上から3番目になるのは、去年10月21日以来です。

また、専門家は、オミクロン株への置き換わりによる急速な感染拡大に警戒を呼びかけたうえで、「今の増加比が今後も続けば爆発的な感染拡大となる」として、強い警戒感を示しました。

東京都 検査結果の40%以上がオミクロン株の疑い

また会議では、都内の新規陽性者を対象に今月3日までの1週間に行ったスクリーニング検査で、判定不能の人を除いて44.6%にあたる132人がオミクロン株に感染している疑いがあることがわかったということが報告されました。
都の「専門家ボード」の座長で、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「これまでのデルタ株などと比べて非常に早いスピードで置き換わりが進んでいて、このまま推移すれば早い段階で感染の主流になると想定される」述べ、強い警戒感を示しました。

東京都 小池知事「超音速という感じ」

6日は総理大臣官邸で、岸田総理大臣と東京都の小池知事がおよそ30分間会談しました。
この中で小池知事は「東京都は先週、新たな感染者が64人だったがきょうはちょうど10倍になった。非常にスピードが速く、超音速という感じで進んでいる」と述べました。
そして、オミクロン株の特性を早急に分析すること、現在の基本的対処方針などをオミクロン株の特性を踏まえて見直すこと、それにワクチンや飲み薬などを早期に必要な量確保し、感染が拡大している大都市部に重点的に供給することなどを要望しました。
岸田総理大臣は「東京都としっかり意思疎通を図り、体制の充実に備えていきたい」と述べ、政府と東京都で緊密に連携し、医療提供体制の確保に努めていく考えを強調しました。