米議会乱入事件から1年 全容解明に影落とす政治的対立と分断

アメリカの連邦議会にトランプ前大統領の支持者らが乱入した事件から6日で1年となります。事件の背景について議会の特別委員会の調査が続いていますが、トランプ氏が今も影響力を保つ野党・共和党は調査に否定的な立場で、アメリカの民主主義を揺るがした事件の全容をどこまで明らかにできるかは不透明な状況です。

去年1月6日、アメリカ大統領選挙の当選者を確定させるための手続きが行われていた連邦議会議事堂に、選挙結果に不満を持つトランプ前大統領の支持者らが乱入し、警察官など5人が死亡しました。

この事件で、これまでに720人以上が逮捕され、FBI=連邦捜査局は今も、事件に関与した疑いがある350人余りの特定に向け捜査を続けています。

また、与党・民主党が主導する議会下院の特別委員会は関係者ら300人以上から聞き取りを行ったほか、3万5000にのぼる文書を集め、事件の計画性やトランプ氏の関わりなどについて調査を行っています。

これまでの調査で当時、大統領首席補佐官だったメドウズ氏の携帯電話の通信記録などから、トランプ氏の家族らが、事態が極めて深刻だと認識し、大統領が支持者に自制を呼びかけるよう繰り返し要請していたことが明らかになっています。

ただ、メドウズ氏らかつての側近は特別委員会での証言を拒否しているうえ、トランプ氏が今も影響力を保つ野党・共和党は、一部の議員を除き「融和につながらない」などとして、調査に否定的な立場を変えていません。

特別委員会は今後、調査結果を公表するとしていますが、調査に十分な協力が得られないなか、当時のトランプ氏の行動などをどこまで明らかにできるかは不透明で、アメリカの民主主義を揺るがした事件の全容の解明にも政治的な対立や深刻な分断が影を落としています。

事件の受け止め方 支持政党で差 社会の分断浮き彫りに

連邦議会への乱入事件をめぐっては世論の受け止めは大きく分かれていて、社会の分断が改めて浮き彫りになっています。

大手調査会社ユーガブとアメリカのCBSテレビが先月行った世論調査では、乱入事件を「反乱」だと回答した人は民主党支持者で85%だったのに対し、共和党支持者では21%でした。

一方、事件を「愛国心によるものだ」と回答した人は共和党支持者で47%だったのに対し、民主党支持者では12%で、支持政党別で受け止めの差が際立っています。

また、今後の大統領選挙について「敗北した側による暴力が起きると思う」と回答した人は全体の62%にのぼっています。

一方、有力紙ワシントン・ポストとメリーランド大学が先月行った世論調査によりますと事件について「トランプ前大統領にどれだけ責任があるか」を尋ねたところ、民主党支持者の92%が「かなりある」あるいは「ある程度ある」と回答したのに対して、共和党支持者では合わせて27%でした。

専門家「懸念すべきは選挙への信頼が失われつつあること」

今回の事件について民主主義やポピュリズムに詳しいサフォーク大学のクリスティーナ・クーリッチ教授は「市民と政府の間、そして市民の異なるグループの間での信頼が劇的に低下した。中でももっとも懸念すべきは自由で公正な選挙への信頼が失われつつあることだ。疑いの種がまかれてしまった。ことしの中間選挙にも大きな影響を及ぼすだろう」と指摘しました。

そのうえで「いまだに信じられないほど多くの人がバイデン大統領は正当に選ばれた大統領ではないと考え、大統領選挙で不正が行われたと考えている」と述べました。

そして「民主主義が機能するためには手続きがしっかりしているだけでなく、ふるまいも大切だ。もしアメリカ人の一部でもルールを守らないでいいと考えるなら、健全な民主主義への根源的な問題となるだろう」と述べました。