オミクロン株“急速な感染拡大想定すべき”年の瀬も各地で備え

これまでに18都府県で感染が確認された新型コロナの変異ウイルス、オミクロン株。人の移動が活発になり1年で感染が最も広がりやすいとされる年末年始を迎え、各地で備えが進められています。

“市中感染” 計7都府県に

28日は新たに
▽東北で初めて岩手県で1人
▽神奈川県で1人
▽千葉県で1人
▽愛知県で2人
▽大阪府で4人
▽京都府で4人
▽沖縄県で2人の
感染が確認されました。
このうち愛知県の2人、京都府の3人、それに沖縄県の1人は市中感染の可能性が高いとされていて、市中感染の可能性があるところは合わせて7都府県となりました。また大阪府は、4人のうち3人が高齢者施設の利用者で、府で初めてオミクロン株によるクラスターが発生したとしています。

東京都 小池知事「緊張状態の中での年末年始」

東京都の小池知事は「オミクロン株の市中感染が確認され緊張状態の中で年末年始を迎える。年末年始の人の動きを介して面的にかつ加速度的に感染の爆発につながることを懸念しなければならない」と述べ、強い危機感を示しました。

そのうえで「市中感染の拡大も視野に入れて先手先手で医療提供体制の強化に取り組んでいる。感染に不安を持つ人への無料検査や感染状況の日々の分析、陽性者や濃厚接触者の入院、入所調整など危機感をもって切れ目のない対策を講じていく」と述べました。

大阪 吉村知事「基本的な対策徹底を」

大阪府内では28日までの調査で23人のオミクロン株への感染が確認され、市中感染とみられるケースも相次いでいます。

吉村知事は記者団に対し「感染力が強いオミクロン株の市中感染があることを前提に基本的な対策をお願いしたい」と述べ、帰省や旅行で人との接触が増える年末年始も手洗いやマスクの着用、少人数での会食といった対策を徹底するよう呼びかけました。そのうえで少しでも症状のある人は速やかに受診し、症状がなくても不安のある人は府内各地に設けている検査場で無料の検査を積極的に受けるよう呼びかけました。

オミクロン株 “地域で一定規模の感染か” 各地では…

このオミクロン株、厚生労働省の専門家会合は地域で一定規模の感染が起きている可能性があり、今後、急速な感染拡大を想定すべき状況だと分析しました。こうした中で迎えた年末年始ですが、各地の病院などでは備えの動きが続いています。

1.<東京 墨田中央病院>年末年始も発熱外来

29日から来月3日までの年末年始の期間中、毎日発熱外来で検査などを行う墨田中央病院ではスタッフの3回目のワクチン接種を行い、シフトに入る医師や看護師の調整を進めました。
新型コロナが広がる前の年末年始は一般の診療を休診し救急患者だけに対応していましたが、2年続けて発熱外来を開くことになり例年のおよそ2倍の医師や看護師を確保したということです。
院内では年末年始の発熱外来の対応時間を知らせる貼り紙を職員が掲示したり、発熱患者とほかの患者で通路をどう分けるか確認したりしていました。

墨田中央病院の小嶋邦昭院長は「オミクロン株が感染力は強いものの症状が比較的軽いということであれば私たちにとっては非常に不利で、かぜだろうと見逃され感染が広がることを危惧している。感染を広げないためにも体調の変化を感じたらすぐに受診してほしい」と話していました。

2.<東京 三宿病院>ワクチン3回目接種急ぎ対応

新型コロナの中等症の患者を受け入れてきた東京 目黒区の「三宿病院」はオミクロン株の感染拡大に備えようと医師や看護師、事務職員などを対象にした3回目のワクチン接種を急いでいます。28日は病院での年内最後の接種の日で60人が医師の問診のあと接種を受けました。
これで病院の医療従事者の9割近くに当たる420人が3回目の接種を受けたことになり、2回目との間隔は1か月程度早めたということです。

28日に接種を受けた20代の理学療法士の女性は「ワクチンを打つことができて年始から安心して対応に当たることができる」と話していました。

近藤壽郎院長は「オミクロン株による第6波も迫りつつあるので接種をできるだけ年内に済ませるというスケジュールで進めてきた。万全の体制で責務を果たしたい」と話しています。

3.<東京 墨田区の薬局>抗原検査キットの在庫集約

一方、自宅で新型コロナウイルスの検査を行うことができる抗原検査キットの需要が高まることを見込んで、都内の薬局では大みそかまで営業する店舗に在庫を集約するなどして準備を進めています。
医療用の抗原検査キットはことし9月から薬局での販売が特例的に認められ、自宅などでみずから検査を行って陽性の結果が出たら医療機関を受診するという使い方が想定されています。

東京 墨田区にある薬局では感染状況が比較的落ち着いている地域の店舗から検査キットを取り寄せました。先月は購入者はいませんでしたが今月に入ってから徐々に買い求める人が増えているということで、大みそかまで営業する首都圏の店舗などに在庫を集約して備えているということです。
薬剤師の武田早織さんは「オミクロン株の影響もあって需要の高まりを感じています。抗原検査キットは無症状の人には適さず体調がすぐれない時、ウイルスの量が増えている時に対応するものなので事前に購入しておくことが基本です。年末年始で医療機関が休診していることもあるのでセルフチェックに利用してもらえればと思いますが、すでに発熱などの症状が出ている場合は検査キットを買いに薬局を訪れるのではなく医療機関の受診をお願いします」と話しています。

新規感染者数“非常に低い水準も都市部中心に増加傾向”

厚生労働省の専門家会合は現在の新型コロナウイルスの感染状況について、新規感染者数は依然として非常に低い水準が続いているものの都市部を中心に感染者数の増加傾向がみられ、一部の地域では医療機関などでのクラスターや感染経路不明の事例の発生による一時的な増加がみられるとしました。

オミクロン株“今後急速な感染拡大を想定すべき”

オミクロン株については国内の複数の地域で感染が確認され、感染経路が分からないケースも出ているとして、国内でも地域で一定規模の感染が起きている可能性があり、今後急速な感染拡大を想定すべき状況だという認識を示しました。

オミクロン株に感染した際の症状については、これまで国内で経過観察となっている感染者は全員が軽症か無症状で、海外の研究でもデルタ株と比べ重症化しにくい可能性が示されているとしましたが、今後、感染者数が急速に増加すると入院が必要な人も急増し、医療提供体制がひっ迫する可能性があることに注意が必要だと指摘しました。

また、今後の対応について、オミクロン株の水際対策を重点的に行うことに加え、国内のすべての感染者に対しオミクロン株かどうかを調べるゲノム解析などの検査を続け、国内での早期探知や迅速な感染ルートの調査などが必要だとしました。

年末年始“感染リスク高い行動控え 少人数で活動を”

年末年始に向けては、ふだん合わない人との交流や帰省などによる人の移動が増え感染が急拡大するおそれがあるとして、感染リスクの高い行動を控えできるだけ少人数での活動に抑えることが必要だとしました。